青年の旗 1985年5月1日 第99号

【主張】 85春闘の結果と労働運動の課題

 四月第二週のヤマ場を越えて、八五春闘は、おおよその大勢を決した。
 ″八五春闘連絡会″の成立と同時に出されてきた「生活実感に基づく要求づくり」にはじまり、「攻めの春闘」「有利な条件」のかけ声にもかかわらず、労働者生活改善に足る賃上げ結果とは、残念ながら言えない。
 七五年以降の物価上昇率に対して労働者の実質可処分所得が追いつけない状況がここ十年つづいている。これは同時に「十連敗」の春闘の結果でもある。更にこの間、労働者意識に表われ、かつ、さかんにキャンペーンされていた「中流意識」も事実減少してきている。
 もはや、意識ではいかんともしがたい″生活実感”が労働者をおおっているのである。まさにこの意味で闘いの可燃物は蓄積している。
 今春闘において注目すべきことは、まず要求段階でいくつかの変化があったことである。
 賃金要求では、内需拡大論に大枠ではしばられながらもいわゆる「物価上昇分+α」という論理から「経済成長に立ち遅れた生活の改善」という論理へと変わりつつあることである。
 春闘白書においては「賃金を従属変数から独立変数に変えていく」とされた。これは、JCの経済整合性論への批判でもある。
 同時に、産別自決が同盟を含めて強調されていることに見られる要求決定の自決性の強調=縮めつけ的要求の緩和がある。これは、これまでの低い要求基準が大衆的に批判されはじめていることを示している。それは、同盟が「今後十年間に実質可処分所得を五割アップする」と賃金白書の中でのべていることにもあらわれている。
 また、個別賃金要求、年令別最低保障賃金目標を設定したことは評価される。十八才初任給基準を含め、二五才、三五才、四五才の四つのポイント要求を設定したことは、平均ペア方式、企業別組合という弱点を克服し、賃金の社合的規準・賃率の形成に近づけるものである。
 労線統一の点では、全民労協三年目にあたってこれを、資本の思惑の下に組み込ませるのか、闘う労線統一として闘いとっていくのかが問われていた。この点で、労働四団体・全民労協で構成する「八五春闘連絡会」がヤマ場を四月二週に設定し、回答不満の場合はストライキで闘うことを確認したことは、事実の動きはともかくとして、要求基準の締めつけ、要求の低位平準化の舞台となった昨年に対して、統一闘争を準備・調整する舞台としたという点で評価すべきことである。

 減税要求はいつのまにか表舞台から退き、時短も現場での闘いはなく、三大連休へと収束される中で姿を消していった。これら「制度政策要求」は、結局のところ議会主義の枠の中に葬りさられた。
 貨上げについては、マスコミの予想通り「五%」。たしかに額で一万円、率で五%は、前進といえる。だがそれは、一定の景気回復局面で空前の利益をあげた独占が締めつけを弱めたということの中身であり、労働者生活の改善に資するものとはいえない。
 ただ、この敗北状況の中で平均ペア方式への疑問が表面化していることは見ておく必要がある。鉄鋼の標準労働者方式の九千円(三・八七%)は平均ペア方式で表示すると、新日鉄ならば一万六千円(六・二%)となる。私鉄の平均年令が三九・九才、「三五才標準労働者」を賃上げのポイントとして、鉄鋼とは五才もの差がある。この点でJCトップのトヨタ自動車と比較するとトヨタの一万二千円は、私鉄の一万三三〇〇円に相当するのである。
 こうしたあいまいな賃上げ表示がいわゆる「相場」を形成しているのである。
 この意味からも、個別賃金要求、年令別最賃の活動を進め、社会的水準規制に向けた運動を進める必要がより強調されねばならない。
 「ストなし」という点では、八五春闘においては官公労が「ストをやる組合とは交渉しない」という政府の高姿勢の下で同盟系の全官公と分断され、更に公労協と公務員共闘までが分断されるという中で一人公務員共闘のみがストを打たぎるを得ない状況に追いこまれた。次に来るのがストをした公務員共闘への総攻撃であるのは誰の目にも明らかである。八五春闘は、こうした意味で敗北したと言わぎるを得ない。
 しかし、一方で私鉄は、最後までストライキ体制を崩さず闘うことで、これまでの低水準を克服し、JCを上回る一万二五〇〇円(五.六四%)という回答をひき出している。このことは、厳しい情勢の中でストを背景に闘った姿勢としては評価されるべきである。
 要求実現に向けて最大眼の闘いを展開する。要求に充たない時はストライキを行使するという不退転の闘いを展開する。当たり前のことではあるが、この労働者の立場を貫徹しない限り闘いの前進はないのである。
 以上見てきたことから今後労働者の闘い(春闘にかぎらず)として要求される点はおおむね以下にまとめられるだろう。
@ 労働諸条件の社会的規制、とりわけその基本である賃金の社会的規制を闘いとること。産別最賃、年令別最賃などを軸とした最賃制の確立とそれを基礎とした社会的賃金水準確立の闘いが必要である。
A ME化の進行による労働様式のドラスティックな変更。長時間労働に拍車をかけ、同時に不安定雇用を拡大せんとする労働諸法制の一連の改悪。これらは、雇用保障・拡大闘争、実質賃金拡大の開いと結合した時短闘争を要求している。
B 未組織の組織化を含めた職場生産点における対資本との力関係の転換の闘いが要求されている。労働組合基礎調査(労働省)による組織率二九・一%に見られる組織率の低下の中で、労働者生活全般にわたる組合自身の活動領域の拡大を進めることを含めて労働者の団結・組織化を進めること。
C 行革の一層の進展の中で社会保障、制度政策闘争の通年的闘争を軸とした恒常的官民共闘の発展が求められる。
D 大型間接税導入が目論まれる中で″一般消費税”導入を阻止したかつての教訓の上に立ち、中小事業主をもまきこんだ広汎な共闘を組織すること。
E 全民労協を軸とした現在の労線統一の流れの中でその弱点を克服し、階級闘争を土台とし、地域共闘、産別の統一闘争に裏づけられた全国全産業的な労働戦線の統一へと進むことである。
 このことは、企業閉鎖的な我国労働組合の弱点を克服し、産別的な機能の獲得とあわせて追求され、階級的労働組合としての産別への脱皮と結合され闘われねばならない。

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