青年の旗 1986年2月1日 第108号

【インタビュー】 鈴木市蔵さん「国鉄分割・民営化阻止の闘いの前進の為に

 通常国会が再会され、政府は国鉄関連法案八本を3月月に上程する予定であることを明らかにした。三月には分割・民営化を見すえた大幅な首切りを伴う、ダイヤ「改正」が行われようとしている。国鉄分割反対の署名は全国三四〇〇万を集め、いよいよ闘いは正念場を迎えた。
 そこで、今回は、元国労副委員長で、49年定員法での国鉄十万人首切りの際に自らもレッドパージ第1号で首を切られながら、国鉄労働者の先頭で闘かわれた鈴木市蔵氏にインタビューをお願いした。闘いの山場を迎え、全国各地へ足をはこばれている鈴木氏はインタビューに快く応じて下さり、当日も早朝地方からとんぽ返りでかけつけて下さった。鈴木氏の情熱あふれる語り口は、闘いへの展望と確信に満ちあふれていた。鈴木氏に、紙面で、あらためて感謝する次第です。
 尚、文責は全て編集局にあります。

--まず現在の状況について先日「労使共同宣言」が出されましたが--
☆今、国労は無協約状態にある。国鉄当局が雇用安定協約締結を拒否しており、団交もできないでいる。この「国労を相手にするな」という指示は、中曽根・後藤田から直接だされている。「進路アンケート」への対応が非協力的であるなどと理由をつけて国鉄当局が協約を延長しないでいるわけだが、これに対して「無協約状態でいるのは正常でない」ということで協約を結ぶべきであるという世論・動きが徐々にできつつあった。そこで、これを潰すために行われたのが一目十三日の「労使共同宣言」です。「宣言」は最初から文面が決っており、国労山崎委員長の名前まで記入されていて、後は捺印するだけという状態で提示された非常識極まりないものです。更にその内容は「ストの否認、リボン・ワッペン闘争の否定、『合理化』の積極的推進など当局に全面屈服せよ、御用組合になれというものです。動労・鉄労・全施労は調印しましたが国労はしなくてよかった。先日、総評の拡大評議員会が開かれましたが、「労組の自主性を守るという観点からも調印はできない」という主張もあり調印を拒否した国労のの態度は了承されました。

--総評が国労・勤労に仲介を申し入れたようですが--
☆総評の国鉄再建闘争委員会の場で議長の黒川総評議長より、国労と動労が分断されることをさける為仲介の申し入れがあり、国鉄当局がどうしても国労と交渉せず、協約を結ばないとの態度を取るなら、総評がナショナルセンターとして雇用問題の交渉にあたるとの提案がされた。この点についての総評の状況判断は、「国労ももう現実的に対処し、余剰人員対策に取り組むべきだ」というものではないかと思う。

--国労は今まで「余剰人員」対策を否認してきましたが--
☆それは「余剰人員」というものが分割・民営化を前提としているからです。

--国鉄労働現場で総評の判断の根拠となるようなことは起こっているのですか。--
☆現場の労働者は極めて不安な状態にある。毎日のように、「気象庁・自治体・私鉄が何人」などと「余剰人員の受け入れ」が報道され一方希望退職がつのられている。従って管理職には動揺する部分がでてきており当初当局が狙っていた希望退職が二万人を上まわるかもしれない。この管理職の動揺は労働者にも伝わってくる。特に、国鉄労働者の場合は、数年来政府・マスコミをあげての「国鉄労働者悪者論」にさらされており、仕事に対する誇り、労働者としての自覚が急速に後退させられてきている。何十年も働いてきた、国鉄労働者が涙を流してこの攻撃の現状を訴える程である。
 この労働者の意識は家族にも当然伝わる。という意味ではいわゆる「社会的いじめ」という状況です。更に献身的な活動家に対しては他の労働者から隔離し一日中たった一人で機械の相手だけをする部署にとばされた人もいます。
 この間のこの「社会的いじめ」は日本の労働運動が弱いからこそ起ったものにちがいありませんが、今回のように労働者一人ひとりの思想を突き崩すような攻撃は初めてです。このため自殺した労働者すらいる程です。

--分割・民営化の狙いは?--
☆中曽根の戦後政治の総決算路線を一層反動化させるためにその抵抗線たる国鉄労働運動を打ち砕くこと、これがその狙いです。そして同時に、膨大な国鉄の資産を食いつぶすことです。
 そのための10万人合理化を自らの指一本汚すことなくやるための新しい手口、いわば「大謀略」が分割・民営化であり、一人ひとりの労働者を思想的に突き崩すことによって国労を思想的・組識的に解体させようとしているのです。

--その口火を切ったのは政府の再建監理委でしたが--
☆再建監理委は、この「大謀略」の手先です。彼らはこの「大謀略」を行うためにずいぶん手のこんだ攻撃をしかけてきた。第一は「公社悪者」論だった。「公社だから赤字になった、親方日の丸で労働者が働かない」だから「公社制を廃止し、民営化すべき」という「結論」にしたのです。しかし公社制とは国鉄の経営上から生まれたものではない。経営上からいけば国営であるべきものが49年国有から公社へとされたのです。それは日本独占資本の労働連動への弾圧としてやられたものです。48年、マッカーサー書簡に基づく政令二〇ニ号国家公務員法は「公共の福祉」の名目で公務員から労働三権のうち団交権争議権を剥奪した。そして日本国有鉄道法、日本専売公社法が国会で可決され公企体等労働関係法は団交権は認めるが争議権を剥奪するとなった。そして、49年公社制は官公労を分断するためにとられた処置なんです。
 第二の攻撃は分割です。六分割と言われていますがバス路線等も含めれば二四分割です。こうすれば一番大きいところでも労働者数が三万ぐらいになる。そうすれば労働者一人ひとりの管理がよりやり易くなる。
分割して統治するということが狙われたわけです。
 第三の攻撃は「赤字でどうしょうもない、だから分割・民営だ!」という大宣伝です。たしかに国鉄の累積赤字は85年末で二三兆六千億円という莫大なものですが、これを口実にして、本四架橋、青函トンネルなど鉄道建設がまだ着工もしていないところの費用、ぎっと十二兆円を国鉄に負わせ、総額三七兆円の赤字だとしているのです。国鉄は今、累積赤字の返済のために毎年元金返済一兆円、利子返済一兆三千億、計二兆三千億を返済しています。つまり赤字の大半はほとんど借金の元利返済のために生じているのです。現在の年間収入の半分以上を赤字返済にあてているわけであり、「借金の元利返済のためにまた借金をする」という構図になっているのです。ところで、線路をひかせ、施設をつくり、国鉄を食いものにして赤字をつくってきたのは政府です。それは確かに経営上の問題もありますが、満鉄引き上げ者の退職金、地方交通線の維持などで生じた赤字もあります。実際には新幹線建設など設備投資・建設費でこうむった赤字が一番多いのであり、これを国鉄だけでまかなえというのは不可能です。これは当然国が責任をもって処理すべきであり、そうすれば国鉄は分割・民営しなくても立派にやっていけるのです。欧州では鉄道はいずれも国営であり皆赤字で、それを国家予算から補填しています。鉄道は国民の生活・福祉・文化に欠かせないものであり、それは国民の税金で支えるべきといえ世論が形成されているのです。
 第四の攻撃は、「赤字・赤字」と言いながら分割・民営によって濡れ手で粟をつかむように国鉄の莫大な資産を食いものにしようとしている。国鉄の土地は例えば汐留のヤード(操車場)だけでも一坪五百万円で二万坪、計一兆円になるほどであり、その総資産は莫大なものです。再建監理委はその総額をおそらく把握しているはずですが明らかにしていない。分割・民営の後に時価を明らかにし、全て食いつぶそうとしているのです。

--49年、定員法での10万人首切りの時と比べると--
☆私は現在の分割・民営化攻撃を「第二の国難」といっています。「第一の国難」が、49年、定員法によって下山・三鷹・松川事件で世情騒然たる中で行われた、国鉄労働者十万人の首切り、続く全逓三万六千人の首切り、そして翌年、全産業でのレッドパージと百万人もの労働者の首切り、朝鮮戦争勃発とそれへの協力、サンフランシスコ体制へと続いた時代です。49年と今回は、攻撃の性質、労働者弾圧の性質からいってもまさに「歴史的双生児」です。定員法も、分割・民営化も単なる企業整理というものではないのです。
 第一に、国際的には、49年も、今回も米の反ソ世界戦略が強化されようとしている時だということです。49年は世界的に激動の年でした。この年中国では革命が成功しており怒涛のような勢いで社会主義革命の波が前進していました。これを食い止めるために反ソ冷戦が激化させられた。欧州では世界労連が分裂され国際自由労連がつくられました。そして米の日本占領政策は、日本を反ソ世界戦略の前進基地にする、そのために独占を育成し、日本を目下の同盟国にする政策へと大きく変わったのです。サンフランシスコ講和条約が結ばれたのはこの二年後でした。
 第二に、国内的には資本の側がなにかやろうとしている時だということです。49年のは、対ソ冷戦激化を受けてのものでした。今回は、中曽根の戦後政治の総決算、いわば今日の資本主義の体制側の深刻な危機への対応策を一層反動化させようとしています。
 そして、このために、「第一の国難」の時も、この「第二」の時も国鉄労働運動という抵抗線を打ち砕こうとしているのです。

-- 49年当時の闘いはどのようであったのですか--
☆当時は、下山・三鷹・松川という大謀略事件が起され、その時労組はどのようにしたらよいのか立往生の状態になった。今回の分割民営というのも当時の事件に匹敵する大謀略かもしれません。実際にはレッドパージで十万人の首を切り国労をつぶせばよいのだから。ただ前回同様というわけにもいかず、分割・民営を出したらうまくいきはじめたので本気になってきたのかもしれない。
 当時我々が敗北したのは共産党が敗北主義に陥っていたからだ。国労が最後にはストに立ちあがって闘おうとした時に共産党はこれに消極的というよりは、はっきりと反対したのです。当時、共産党には、「米帝の政策と真正面から対決すれば、南朝鮮のようになってしまう」との考えがあったようです。彼らは、スト決議をした職場をつぶして歩き、その一方では、「その年の九月には吉田内閣を倒して革命をやる」などという日和見主義だったのです。共産党は、占領下における日本の変革のための正しい戦略を持っていなかったのです。翌年、コミンフォルム批判ということで野坂理論への批判が起こりましたがその本当の原因も、この点にあるのではないかと思います。
 
--今後の闘いについていかがでしょうか--
☆まず第一に正しい戦略を持つことです。分割・民営化攻撃の基本的な性格はなにか、これこそ階級攻撃であり階級闘争です。これを正しくとらえて闘いを進めなければならない。「労使共同宣言」に見られるように徹底した国労の孤立化が狙われている。この国労を支える戦略的な正しいバックアップが必要です。それは労組でなく政党となるわけですが、社会党は「民営化やむなし」という方向のようです。二八日社会党が発表する「新日本鉄道株式会社法案」もその名の通り民営阻止よりは、「分割阻止、地方線存続、雇用確保」の方のみに力点を置いたもののようです。一方、共産党は分割・民営反対と言っていますがどこまで本気で闘うかというと非常に不安です。というのは、先頃の第十七回党大会に提出された決議案には国鉄問題の”コ”の字もなかったんです。大会ではさすがに意見が出たようで「分割・民営など国鉄でも」という文言が付け加えられたようですが、この問題の背景・性質・どう闘うべきかなどは一言も入っていないのです。
 第二に、政治的に結集できるか否かです。一つには三三〇〇万を越えた署名があります。これは特定の政府の政策に反対して集められたという点ではかってないものです。これが国民投票的意味をもつように政治勢力を形成することが重要です。六月の参院選で、三三〇〇万の一割が政治的にものを言い、この人達の中で今まで自民党に投票していた人達が革新の側にまわれば政治は変わります。もう一つは、60年安保闘争の時の安保国民会議のような「国鉄を考える国民会議」というょうなものを、結成しようとする動きがあり、二月から東京、大阪、名古屋などで作られようとしています。この「国民会議」に地方の交通線が廃止されたらどうしようもならないという人達をも皆結集し、全国につくり国労の闘いをバック・アップできるかどうか極めて重要です。国鉄労働者の闘いを励まし、これを取り囲むような広範な闘いと政治勢力が準備されねばならないのです。この点で社・共の共闘は重要です。60年安保の際には社会党と共産党が支えたからこそ広大な政治勢力の結集ができたのですが、今の両党の現状では極めてむずかしい。しかし、組合の中はがたついてはいないし、なにより直接には社・共が共闘を始めなくても国労を囲む国民的な広範な闘いで実質的に社・共が共闘するような状況をつくりだすことでしょう。
 第三に、今後の国会闘争そして六月の選挙戦を重視し中曽根の三選を阻止することです。三月いっぱいが闘いの山になる。ここで八本の法案が提出されるが通常国会ではこの法案を可決させない。六月参院選なので会期延長はない、法案が廃案になり、選挙で自民が敗ければ中曽根の三選はあり得ない。そうすれば国鉄のこの問題は形が変わってくるでしょう。国会闘争重視と言うと、いろいろ言う人もいますが、現実に労働者に接し、職場での闘いをどう発展させていくのか、という時に「闘え!闘え!」と言うだけでは労働者はついてきません。自分達の闘いが必ず政治的に発展して事態を変え得るという確信を持った時には必らず立ちあがってくるのです。資本と労働との互いの力関係の中で見れば、闘いの環は自民党政治に痛撃を与えることができるかどうかにあります。そういう意味で、来たる国会闘争、選挙に向けて政治勢力を結集していくという闘いが非常に重大になっているのです。
 既に三月のダイヤ「改正」によって品川客車区と東京機関区を一つに統廃合し、人員を3分の2に減らすなど、分割・民営化への既定路線が次々に進められようとしています。国労も二八日の中央委員会次第では雇用対策に乗りだすことが必要になるでしょう。闘いはかってなく熾烈で厳しいでしょうが、悲観せず闘っていけば展望は開けるでしょう。我々の時は分裂してしまいましたが、統一して、持てる力をフルに発揮して闘うことです。
 私には、現在の情勢が大きな観点から見れば、階級闘争がだんだん最終局面に突き進んでいく息づまるような緊張の反映ではないかと思えるのです。

 (ありがとうございました。)

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