青年の旗 1986年7月1日 第113号

【【経済展望】 『衆参同時選挙と円高問題』
           --労青大阪府委員会新歓合宿講演から--

<衆参同時選挙を前にして>
 前回の衆参同日選挙の時に、自民党は大勝した。これは大平の死に対する同情票が集まり、すべて自民党に有利な形で選挙が進行したことによる。しかし、今回は前回とは全然条件が違うということは押えておかねばならない。
 第一に、大平の死に対する同情票といった自民党に有利に作用する条件が、現在見当たらないことである。逆に一週問前に解散はないと言っていたのが舌の根の乾かぬうちに居直り解散・選挙を強行するなど、自民党は国民を歎したという非常に良くない印象を与えている。中曽根自民党は策略を使い、してやったりと涼し気な顔をしていても、浮動票の行方がある程度自民党にとって厳しくなるのは否定できない。こうした現状を踏まえて自民党は国民を欺く政党だということを広く国民の中に侵透させていくことが必要になっている。

<ひき続く円高基調・深まる日米経済矛盾>
 第二に、やはり円高の問題がある。サミットまでは大体一七〇円〜一八〇円できた。そしてサミットに臨む時の中曽根内閣の腹づもりは、何とか円高がこれ以上進まないようにせいぜい一七〇円位で止めてくれるように、アメリカ政府にある程度通貨市場に介入してもらうことであった。
 ところが、サミット全期間を通じてレーガンは、中曽根の期待に全く何も応えなかった。レーガンは協調介入を行うとは一言も言っていないし、円高問題について何の約束もしていない。ということは結局日本の輸出を押える、あるいは日本が輸出を押えない時には円高をもう少し推し進める。そうすることによって対日赤字を削減し、輸出を回復させるという米国内の強力な要求が存在したからである。米国内の政界・財界の空気の中で、レーガンは中曽根に対して何も返答しなかったのであり、東京サミットを通じて、実は日米間の矛盾が一層深まったのである。
 サミット直後の五日二〇日頃には、円がついに一七〇円を割った。その翌日には一六一円になり、五月の終わりには瞬間的に一五八円九〇銭という最高値を示した。あっという間に一七〇円〜八〇円という相場はふっ飛び、一六〇円台になった。先週一時一七〇〜一八〇円に回復し円高傾向にブレーキがかかったとマスコミ等は見ているが、長期的な傾向から見れば、円高基調は変わっていない。
 新聞の論調では、財政だけで二千億ドル、貿易も対日七百〜八百億ドル、対西独三百億ドルという天文学的数字の赤字を計上している条件の中で、ドル安が進行すると、ドル暴落が起こり、世界恐慌になる。だから猛烈なインフレに転落するという冒険を犯してまでドル安、円高は進まないだろうと言われている。一六〇円は行き過ぎで、一七〇円位に止ってほしいという期待がマスコミをはじめ政界財界に充満しているが、それは甘い期待である。先日アメリカのコロンビア大学と日本の経済企画庁等が協力して国際通貨問題のシンポジュームが行われたがそこでアメリカの政府筋と経済関係の専門家は、長期的に見るならば円高傾向は今後も持続すべきものであり、一六〇円ではまだ不充分で、厳しく見れば一二〇〜一三〇円というところまで円高が進む事になって始めて日米のバランスがとれると主張している。

<円高を口実とした犠牲転嫁を許すな>
 現在日本の産業は、一八〇円でも四苦八苦の状態であり中小企業は特に厳しい状況にある。輸出するには値下げするしかないが値下げすると利益がなくなるため、結局輸出はダメになるという危機感が深まっている。
 今一番景気を悪くしているのは円高からくる輸出不振である。対外貿易から被むる打撃を国内でカバーできずに不況が深刻化している。そして帝国主義間矛盾の客観的情勢から見て日米の経済的矛盾は、決して緩和されない。長期的に見れば見るほど円は高くなると言わぎるをえない。
 円高対策として財政を緩め救済的な緊急融資が求められているが、中曽根は行財政改革一本槍で財政を引き締めるのみである。赤字国債の償還時期が来ているが、償還に際しては新しい債券を発行して古い債券と取り換えなければならない。
その時に新しい債券を旧債より少なくし、国債の借りかえを機会に、むしろ赤字国債を縮少していくという基本線をまだ撤回していない。そうなれば一層不況に追いうちをかけることになり、中曽根の政策そのものが行きずまってくる。この矛盾を突いているのが宮沢である。宮沢は、補正予算を組み、三兆円の緊急不況対策を請じなければならないと要求している。
 また、円高が嫌なら輸入を増やせという圧力がかかっているが、その対象となっているのが、米・肉を中心とした農産物である。農産物の輸入の自由化が大々的に行われるようになると日本の農民は大打撃を受けるのは必至である。
 以上見てきたように、客観情勢の変化からくる、自民党が国民を納得させえない困難な問題があることは否定できない。特に農民を始めとする自民党が頼りとしている広範な小ブル層が見通しのない円高不況によって政府に対する信頼を急速に失いつつあり、それは選挙の行方に重大な影響を与えるであろう事はまちがいない。
 同日選挙を行えば、自民党が勝つと読める情勢ではなく、こういう有利な条件を革新陣営が正しく把握して、それにあった問題を把らえてアピールしていかねばならない。情勢は反自民勢力にとって有利なものとなっている。
(なお、この記事は、労青大阪府委員会新歓合宿での「知識と労働」社代表の堺新一氏の講演から抜粋させていただきました。文責はすべて編集局にあります。)

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