青年の旗 1988年4月1日 第133・134号

【主張】 不公平税制の徹底論議を 総選挙で国民の信を

<「税制改革について素案」提出>
 三月二十五日、政府の税制調査会が「税制改革についての素案」をまとめた。抜本改革のたたき台ともいぅべきもので、これを基に二回目の地方公聴会を開いて国民の声を聞き、四月末にも答申をまとめる予定である。
 今度の「素案」は、二十二目に決めた二類型三方式の新型間接税の試案と、二十三日に決めた直接税の改革試案とを総合したものである。しかし、この中でもキャピタルゲイン課税や医師優遇税制などの是正に具体的内容は乏しく、みなし法人、宗教法人、赤字法人などにも積極的なアプローチはなかった。
 
<新型間接税をめぐる論議>
 新型間接税の試案として、付加価値税を二つと取引高税が提出された。付加価値税として、いわゆるEC型(インボイス方式)とアカウント(帳簿計算)方式とがあげられている。
 EC型は取り引きの度にインボイス(仕送り状)を伴う。これによって前段階で支払われた税額が控除されるので、税が累積しない利点があるが、納税事務負担が大きくなるのは必至であり、日本のように中小企業の多い国で、そのような事務負担を求めうるのかとなると大いに疑問である。
 また、取引高税は日本で戦後まもなく実施されたことがあるが、一年足らずで廃止されている。税の転嫁がしにくく、業者の背負いこみになり、さらに取り引き段階が長いものほど、最終的な税額が高くなるので、産業経済に中立的でないという問題点がある。
 こうして見ていくと、二類型三方式が併記されているものの、実質的にはアカウント方式の付加価値税が最有力だと見ていいのではないだろうか。売り上げから仕入れを差し引いたものに税率を掛けるという簡単な方式なので、抵抗感は少ないと言われているが、このアカウント方式は、かって大平内閣が導入を図った一般消費税そのものである。かりに名称を変えたとしても、国会決議によって導入を否定された事実は変わらない。さらに、書類を使わず帳簿で控除額をはじきだすもので、所得の把握もれは避けられず、抜本改革の目標である「不公平の是正」という面では、重大な疑念を残さぎるをえない。

<キャピタルゲインの原則課税について>
 キャピタルゲインの課税強化の問題は、毎年の税制改正で議論になっている古くて新しい問題であるが、今回は、政府税調が「原則課税」の方針を打ち出している。
 第一回公聴会がスタートする直前に、元大蔵事務次官の相沢自民党代議士の株売買益申告漏れが発覚したことや、四月からマル優が廃止され、利子所得については一律二十%課税されることなどから、株式譲渡益の原則非課税は納得できないという国民の意見は強く、それを反映したものであると言えよう。
 キャピタルデイン課税とは、株式などを売却した際買い値との差で生じた譲渡益所得に対して、課税することであり、現在、法人は、法人税の形で納税しているが、個人は原則非課税になっている。
 例外的に、年間売買回数が三〇回以上かつ十二万株以上の継続的売買や、同一銘柄で年間一二万株以上の売却について課税対象とし、その売却益を他の所得と合算したうえで所得税で総合課税するという仕組みであるが、国税庁の集計によると、株式譲渡益六十一年の申告件数は、百八十六件で、取り引き総額は九百三十億円、売却益は六十億円にすぎない。キャピタルゲイン課税の対象となる我が国の全国の個人の株式取り引き総額が年間数十兆円の規模であることを考えると、申告率はあまりに少ないと言える。
 キャピタルゲインの原則課税化は、新型間接税導入の前提条件、といわれてきた。そして、納税者番号制の検討には時間がかかるとしても、「導入には強烈な抵抗が予想される番号制は、継続審議にして、みなし分離課税方式でお茶をにごし、間接税への切符を手にしたい」というのが、大蔵省の思惑であると言われている。
 「みなし分離課税」方式とは、個人投資家別の売却益をいちいち把握せず、売却益の一定割合は売却益であると見なし、このみなし売却益に一律の税率をかけ証券会社が売却時に天引きして納税する仕組みである。かりに利益率を十%とみなし、利子所得課税と同率の二十%の税金を掛ければ、税金は売却額の結局二%となる。
 ただ、みなし方式は、売却額の○、五五%を徴収している有価証券取引税と同じかたちになり、みなし方式のままでは、現行の税率を変更させることにすぎず、「不公平の是正」の目玉として大きく取りあげられるような改革ではない。このような「改革」で、間接税が取り引きされることには、断固反対の意志を表明しなければならない。

<税制改革の基本理念>
 三月十一日、竹下首相は、大型間接税に対する懸念として、@逆進的な税体系になるA中堅所得層の不公平感増大B所得税非課税者に負担C税率の引き上げが安易にD納税事務負担が大きくなるE物価を押し上げインフレに、と六つの点を指摘した。
 この間の政府・自民党の税制改革の論議を聞いていると、政府・自民党の税制改革に対する基本理念はっきりしてくる。つまり、入口(所得)では把握・捕捉するのが困難であるため、どうしても公平な課税を行うことができない。あるいは、捕捉に関する費用が膨大なものとなる。そうじた「不公平の是正」のため、広く薄く課税を行う。つまり、新型間接税の導入である。支出段階で徴税する消費税では、脱税行為はいっさい行われず、それに対する課税を強化することで、「公平な課税」が保障される、と言うのであろう。
 公平な課税を行うため、キャピタルゲイン課税・法人税の増税を求めなければならない。しかしながら、キャピタルゲインの原則課税を求めるのは、「少女趣味」であるらしい。なぜなら、株が暴落して税収が落ちこむからだそうだ。法人税の増税についても、「こんなに税が高くては、ノーベル賞をとるような人材や優秀な企業が海外に逃げ出し、日本が空洞化する」との声が聞かれる。その一方で、何億もの脱税行為が行われ、各種引き当て金や減価償却制度、受取配当金の非課税制度などの、戦後の復興のために設けられた優遇税制をフルに活用しているのである。そういった現実に、もっとメスを入れていかなければならない。
 酪税に苦しめられながら、そして海外に逃げる余裕なんてさらさらない勤労諸国民の暮らしを守るため、租税民主主義の原則である、直接税中心の累進課税の強化、時代遅れとなった大企業中心の種々の優遇税制の見直しこそが、何よりも論議の中心とならなければならない。
 公聴会のような形ではなく、総選挙で国民の信を問うべきであろう。

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