青年の旗 1988年8月1日 第138号

【経済展望】 サミット後の国際金融不安の高まり

*トロント・サミット
 レーガン大統領の「さよならサミット」と言われたトロント・サミットが、貿易の自由化を促進するウルグアイ・ラウンド(新多角的貿易交渉)の推進、農産物市場の開放、発展途上国の抱える累積債務問題の処理に加えて、為替相場の安定を目指し参加各国が協調体制を一段と強化する努力を推進するという四項目を骨子とした経済宣言を発表して閉幕した。
 経済宣言は、「為替レートが過度に変化することこれ以上ドルが下落すること、あるいは調整過程を不安定にしてしまうほどドルが上昇することはいずれも世界経済の成長の可能性を損なうことによって逆効果になる恐れがあるとのG7の結論を支持する」と、為替相場の安定を強調したが、サミット終了後、急ピッチなドル高が進行し(円レートは十日間余りの間に一二五円台から一三四円台まで下落)、日米欧の金融・資本市場の波乱要因になっている。このため、西独や英国など欧州各国はインフレ警戒姿勢を鮮明にする利上げに踏み切り、日本も短期金利の上昇容認などの円安防止策に乗り出している。

*ドル高の意味するもの
 こうした現在のドル高局面の原因と考えられる根拠として、マスコミで論じられているのは、以下の三点である。第一は米貿易赤字が縮少基調であること。昨年一年間は月平均約一五〇億ドルもの赤字を記録したが、最近三カ月(三、四、五月は、月間約百億ドルペースにまで縮少している。
 第二は、米国政府にとって政治的および経済的にドル高を許認する動きがあることである。@今秋の大統領選挙を控えており、株価の暴落とインフレ再燃をともに避けることが至上命令になっている。Aその中で金融面の引き縮めはしにくく、政策が手詰まり状態にある。B多少のドル高は輸入物価の低下を通じインフレ予防に役立ち、株価にもプラスになるためである。
 第三は、国際資本移動の変化が出はじめ、海外の投資家が、ドル建て証券に傾き始めており、特に欧州からの流入のピッチが速いことである。又八五年から八七年の間はドル売りで稼いだトレーダは、今やドル売りでは稼げず、ドル買いでしかもうけられないという市場心理で働いている。
 しかし、それらの根拠は、影響なしとはいわないまでも、全体的な流れは、一九八五年九月のプラザ合意(G5)以降のドル安局面の中の出来事であり、市場原理による一過性のものとして見るべきである。ドル安の根本的原因となった貿易、財政赤字の双子の赤字が改善されないかぎり、ドル安局面が転換する可能性はないと言っていいだろう。米国の三力月間の貿易赤字が縮少したとはいっても年間一〇〇〇億ドルを超える赤字であり、貿易外収支も赤字に転落し、ストックとしての対外純債務の累増は続いており、(八七年末には、約四〇〇〇億ドルにも達し)米経済は、何ら解決の糸口を見い出していない。国際金融不安は一層高まぎるを得ないのである。

*国際金融不安の高まり
 一九八五年九月のプラザ合意以降、帝国主義諸国が資本主義の不均衡発展による矛盾を解決するためにとった政策は「国際政策協調路線」であった。それ以前であれば、内政干渉として各国が拒否した措置も「政策協調」の名のもとに行なわれ、政策の進み具合を監視する体制までもつくり上げられた。
 しかし、現実には公約通りには政策協調が進まず、調整は専ら為替レートの調整に偏ったものとなった。そうした不十分な政策協調への市場からのしっペ返しが、昨年十月の株価暴落=ブラックマンデーであった。このため、株価暴落で各国は緊張感を再び強めたが、その後採られた措置は、米国の債務累増を中心とする世界的な収支不均衡への対策強化ではなく、むしろ、株価対策であり暴落で懸念された目先のデフレ現象への対応策であった。
 このように、基本的な資本主義を現在おおっている危機を取り除く措置は何もされておらず、解決もされていない。このため、今回のドル高局面は、一時的な米大統領選までの局面であり、基本的にはドル安過程の中の出来事として考える必要がある。米大統領選後、蓄積された矛盾が一撥に暴発し、昨年のブラックマンデーを上回る金融危機に発展することを考えるべきであろう。

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