青年の旗 1988年10月1日 第140号

【主張】  天皇キャンペーンと対決し非核日本の実現へ
           ---軍縮週間に行動の集中を---

<天皇重体を利用した国民意識の総動員>
 九月十九日夜の天皇の吐血以来、政府、独占はマスコミ、行政、企業各機関全体を総動員した天皇キャンペーンを行っている。十九日以来NHKや民放各局はいっせいに特別報道体制を組み、オリンピック、ソウル大会の中継放送を中断しつつ、天皇の容体報道を大々的に繰り広げている。全国市長会事務局は二十二日付で各都道府県市長会事務局長あてに「天皇陛下に係る件について」の文書を発行し、その中で@当面の問題として、「地方団体内に記帳する場所を設置することは、首長の判断で結構」(=首長の判断で設置せよ)、A「万一の場合」として地方団体が、主催しておこなう落成式、パーティー、祭り等の祝いに関する行事は控えてほしい、またB開会中の審議については、審議を中断し、黙祷をおこなってほしい、との行政指導を行った。
 翌日の二十三日の秋分の日には全国四分の三の県で職員が動員され、天皇の健康回復を願う記帳の受け付けがおこなわれ、山ロ放送などは宮内庁と相談の上、CMで本社での記帳呼びかけを行った。
 この結果、三七〇万人が記帳に動員され(十月三日現在)、長崎くんちをはじめ、全国で祭り、パレード、スポーツ行事、花火などが中止され、五木ひろしを含む私的な結婚式などの中止があいついだ。
 今や「天皇健康回復を願わない者は非国民」というファシズムに酷似した状況が作り出されている。大衆は「天皇」を通じて改めて「日本国を意識し、その利益基盤である階級ではなく「国家」を中心としたものの考え方へと動員されつつある。この攻撃の特徴は、直接的な天皇賛美と崇拝を持ち込むのではなく、国民の死生観−死ねば皆仏様、死者にムチうつのは非人道的なこと−を巧妙に利用しつつ、国民意識を動員しているところにある。「日本共産党」が地方議会で天皇の戦争責任を追及したのに対し、埼玉県議会では関係部分の会議録を削除、宮崎県議会では懲罰規定に基づく戒告処分、東京都議会では問責決議が上がっている。これらの攻撃も「死者にムチうつな」的な国民意識あってこそできるのであろう。しかし、死に際して、その人の生前の業績こそ問うべきであり、それは死後、次の世代の者に受け継がれていくべきものなのである。
 そうであるならば天皇ヒロヒトは戦前の戦争責任と切り離して考えることはできない。渡辺政調会長が「東京裁判でも、陛下は戦争犯罪人ではない」と強弁している。確かに、米国が皇室の支配機構の利用価値に着目し、はじめから天皇を訴追しなかった。しかし、このことを理由に、天皇ヒロヒトの命令で植民地支配や侵略戦争が行われ、日本国三百十万人、中国、東難アジアなど二千万人の生命が奪われ、そして天皇の名の下に自由が圧殺された歴史的事実は消すことができない。オランダ外相が天皇の葬儀に出席すると述ベたことに対しインドネシアからの復員兵は「ヒトラーの葬儀に出席するのと同じ」と抗議しているのである。
 またー連の「自粛」の行き過ぎについて、小渕官房長官は九月二十九日の記者会見で、「陛下のご快癒を願う国民の気持ちは尊い」としながらも、「国民の社会、経済活動に支障がでるのはいかがとの気持ちもしている。そうしたことが、常々国民を考えておられる陛下のお心には沿わないのではないかと考える」とのべた。ここには国民がどう思うかではなく、天皇がどう思うかを事を決っする判断基準とする極めて危険な思想攻撃が現われている。権力の都合のよいように天皇の意志を慮り、そこへ国民の共同感情や一体感情を喚起する。そのー方で、このー体感に同化しえない者に対する嫌疑や非国民呼ばわりをする暗い情念が沸き起こるのである。天皇はこの心情統合の象徴として利用されている。

<侵略を合理化する六三防衛白書>
 これら国民意識の総動員は何故必要なのであろうか。63防衛白書は日本の軍事政策の明らかな転換を示している。それは61白書では専守防衛を原則として領海、領空で侵略を防ぐという「水際作戦」を唱っていたのに対し、62白書では領海の外で侵略を未然に防止すると立場を大きく変え、今63白書ではできるだけ遠い所で要撃しなければならないと公然と侵略を合理化している。しかし、世界第三位の軍事費を注ぎ込み、ハード面での軍事大国化を進めようとも、「なだしお事件」が引き起こした反軍感情がある限り、軍事力として発動させることはできない。そこに天皇を利用した国民意識の統合、思想攻撃の狙いがある。文部省は新学習指導要領の中で小学校四、五年生に日ノ丸、君が代の意味を教えることを義務づけようとしているが、この攻撃こそ、国民意識を動員するようでもっとも系統的、組織的な学校教育を利用しようという狙いなのである。

<核トマホーク艦横須賀母港化と非核三原則>
 八月三十一日横須賀に二隻のトマホーク艦ファイフ、バンカーヒルが母湾化された。両艦のトマホークは核弾頭付きであることは米海軍自らが証言している。横須賀市、神奈川県は八月二十九日宇野外務大臣に非核の証明を求めたが、外務大臣は「事前協議がない」ことを理由にはねかえされ、更には「非核三原則は守られている。私を信頼してくれ。」と述べた。もはや非核三原別と事前協議は、国民に核が持ち込まれていないことを納得させるものではない。今年八月の平和宣言の中で本島等長崎市長が「非核三原則が国是となって二十年、その空洞化は最早許されない時にきた。アメリカの艦船の寄湾に対して、日本政府は、主体性を持って核兵器の有無を検証し、非核三原則を厳しく守る立場を鮮明にすべきである」と発言した。改めて核なき日本をどう作り上げていくのか、その方途が問われている。
 来たる十月二十四日からの一週間は第一回国連軍縮特別総会が決定した国連軍縮行動週間である。日本の民主主義を根底から掘り崩しかねない天皇キャンペーンと対決し、非核日本の実現のための行動を集中する週間としよう。

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