青年の旗 1988年10月1日 第140号

【講演録】 ペレストロイカについて
                 小野 義彦

この文章は今年6月4日、大阪府委員会新歓合宿での小野義彦氏の講演を府委員会書記局でまとめたものです。すでに、大阪府委員会発行の『労青全国協議会結成にむけて!・討議資料N03』(七月二〇日発行)に掲載されたものを、引用させていただきました。ぜひ、「ヘレストロイカ」問題の討議にお使い下さい。紙面の都合で一部省略してありますので全文希望者は編集局又は大阪府委員会書記局までどうぞ。

<ペトストロイカと平和共存>
 初めは、ベレストロイカについて、ソ連の国内経済と国内政治の改革ととらえていた。しかしながら、事態が進展するにしたがって、国際的な観点からとらえなければならなくなってきた。今度の米ソの首脳会談において見られたように、レーガンは、終始ゴルバチョフに押されている。ゴルバチョフは、「全人類のために、我々は議論をし、協力をしよう」と、完全にレーガンを押しまくった。西欧とコメコンとの間では、平和共存というのは、圧倒的な空気となっている。INFの批准の問題についても、アメリカはとても抵抗できなくなっている。戦略核兵器の半減の問題は簡単にはいかない。陸上、海上、海中、空中と、ありとあらゆるところに核兵器があるから、短期間の間に半減することはできない。しかしながら、その姿勢は変わらないであろう。レーガンをして、そこまでさせた、その力はどこから来るのであろうか。
 それは、今までのソ連の指導者には全く見られなかった新しい視点である。プレジネフの時代も平和共存は唱われていた。しかしながら、実際に実行になると、アメリカとソ連の間で、具体的に話がまとまるというような問題に絞って話をぶつけるというのが弱かった。結果として平和共存を受け入れていたにすぎない。アメリカの方から平和共存にのってこざるを得ないような、そういう具体的な提案を、自分から絞って提起できない。それだけではなく、平和共存を逆に破壊するような、たとえばアフガニスタンヘの侵攻。その必要は何もなかった。自分に都合のいい政府を他国に押しつけるのは、内政干渉である。内政干渉を行えば、一時的に都合のいい政府ができるかもしれないが、長持ちせず、逆にそういう行為を行ったことで、その国民全部を敵にまわす。さらに、反ソムードをあおろうとしている、アメリカ帝国主義を利することになり、国際的にもまずいことになる。その前のスターリンに至っては、頭から、「平和共存下で、一層階級闘争は激化する」と考えていた。これでは、話はまとまらない。だから、スターリンの時には、米ソは戦争はしなかったが、しょっちゅういざこざがあった。
 ペレストロイカ路線で固めるため、モスクワ市の党との協議会で、地区の党の役員と代議員を全部とっかえた。
 ソ連のペレストロイカに関する世論調査によると、ペレストロイカの国際面を支持するというのが、七五%、ところが、国内政策を支持するというのが、三五%。国内政策の面ではまだまだ大きな課題がある。スターリン・プレジネフの時代に形成された、腐敗し、こり固まった官僚主義という体制を作り替えるのは、大変な事である。特に、経済を建て直さなければ、国民の生活はよくならない。国民の生活がよくならないと、国内生活におけるベレストロイカを支持しようとする動きは大きくならない。国内には抵抗がある。経済面でのテコ入れはなかなか大変だ。それに加えてベレストロイカで特権を失う党官僚、政府の官僚が沢山いる。そう簡単には成果は上ってこない。粘り強く長い期間をかけて、じっくりと行われなければならない。
 しかし、国際面では、INFの全廃に成功した。目に見えやすい国際面での、大きな大転換。仲良くするでもなく、喧嘩するでもない、そういうことでは、全世界の平和と平和共存に寄与することはできない。やっぱり、社会主義の方が進歩した体制であるというのが、目にみえなければならない。経済面では、資本主義に若干、水をあけられているにしても、社会体制としては、資本主義より進んでないといけない。諸国間の友好関係と平和を一歩でも強めるために、そういう具体的な政策をどんどん打ち出していかなければならない。そして、主導力を握ることが求められている。それが、ゴルバチョフが行おうとしていることである。ソ連が、あるいは全世界の社会主義が現在ぶつかっている問題を打開する人物を歴史が生みだしたといえる。世界は大きく変わるだろう。
 第一に、米ソの政治的な対立は、少なくとも、ソ連の方からは、やっかいな問題は引き起こさないであろう。米ソは、全世界的な問題を解決するために全面的に協力するだろう。この時も経済が大きな位置を占める。スターリンやプレジネフの時は、社会主義の経済を強化しようというのが、いつも全面に出ていた。
 しかしながら、ゴルバチョフは社会主義だけをよくしようというのではない。社会主義も、資本主義も現存する体制であり、国家であるのだから、人類の幸福というものを考えるならば両体制とも発達してほしいと考えるのは、当然である。社会主義が資本主義の発達した技術を利用するためには、それ相応の代価を払うという形で、東西間の経済的交流は、今後飛躍的に深まるものと思われる。コメコン諸国とECは、この九月に経済協議会を開き、両者の利益となる、可能なあらゆることをやろうとしている。世界はここまできている。ゴルバチョフは、それを米ソ問にまでひろげ、さらには全世界に広げようとしている。可能なことは、すべてやろう。全人類的な経済的な経済的利益を図ろうとしている。あたりまえのことだが、画期的なことである。
 このことが、いままでなされなかった背景には、平和共存下で階級闘争が激化するという、スターリンの誤った主観主義的な思想があり、それを誤っていると言えないソ連の状況があった。それが、四十年も続いたのである。

<ベレストロイカと社会主義の強化との関係>
 軍縮を行うと、アメリカの年間の軍事費は、少なくみて五千億ドル、多くみつもれば、七・八千億ドル、ヨーロッパは、二千億ドル、日本も一千億ドル近い金を使っている。全部合わすと、一兆数千億ドルになる。これを仮に半分に減らすとする。これを何に使うかと考えると、自国の社会保障、賃金などの引き上げ、生活水準の引き上げをすべての国は第一義的に行うだろう。しかし、同時に生産力は、目覚ましく発展するので、その増えた生産力を実現させるためには、貿易と経済協力を発展させなければならない。その際に、一番大きなものは、今までその可能性が二、三割も実現されなかった、東西貿易である。
 今後、米ソ間、及び東西間の経済交流は、爆発的に増えるものと思われる。
 ソ連は、油田を出資する。アメリカは、それを掘って、開発して、工場を作るという、ソ連とアメリカが資本を出し合って、合弁会社を作るというのが、どんどん増えてきている。現に、五百〜七百の案件が、米ソ間を中心に話し合われている。
 日本だけに話を限っても、まだ表には出てきていないが、現在約二百件もの話がでている。北洋漁業も、日本は厳しい状況にあるが、取った魚を共同で加工するという、合弁会社を作れば、その問題は一挙にかたづく。ハイテク産業についても、それを支える稀少金属は日本にはないが、ソ連には、シベリア等を中心に腐るほどある。だから、稀少金属の開発会社を日ソで作る。これは、ハイテク産業を支援するものとなる。その利益をソ連にも分ける。日ソ間は、あらゆる面で発展する可能性を秘めている。
 次は、ソ連・社会主義国と発展途上国及びNIESとの経済協力である。これもまた、大きく発展する可能性を持っている。韓国は、経済面で中ソとの接近に踏み切っている。台湾も、その動きを見せている。そうなれば、日本とソ連と中国、そしてアメリカの一部も巻き込んで、ヨーロッパのECに匹敵するような一大経済圏が、アジア、太平洋地域に成立することになる。
 資本主義は、時が経るに従って、衰退しながら没落していくという道は取らない。資本主義というものは、その生産力をどんどん発展させていく。その発展した生産力が、資本主義という生産関係の枠の中に収まらなくなった時に、資本主義的なものを社会主義的なものに変えなければならないという、動きが起こってくる。資本主義の方から社会主義に接近しなければ、自分が発達させた生産力の実現問題が解決しない。そして、社会主義国や発展途上国へどんどん市場を拡大していく。そのためには、両方が協力して、生産力を発展させていかなければならない。そういうプロセスのテンポが早まっていくだろう。そして、そういう形で、資本主義はその内部の矛盾が高まっていく。つまり、資本主義の下で発達した生産力と資本主義的な労使関係を、社会主義的な方向へある程度変革しなければやっていけなくなる。これから先、資本主義国が変革を起こしていくには、一九一七年のロシア革命のようにはいかない。どんどん発達した生産力を維持させていくためには、社会主義国や発展途上国ともっと全面的に協力しあわなければならなくなってくる。その中で社会主義的な物の考え方やイデオロギーがどんどん入ってくる。そこで、国内改革をやらなければならなくなってくる。その方向は、いきなりすぐ社会主義ではないにしても、社会主義の方向での変化が起こってくる。
 そういう意味で、ゴルバチョフの提起した平和共存、米ソ間の全面的な協力、資本主義と社会主義の全人類的利益を目指す協力、という路線は、究極的には、社会主義の強化につながると結論づけることができる。

<質疑応答より>
Q:ベレストロイカに帝国主義論、という批判をどうとらえるか(ママ)
 ベレストロイカに関しては、いろいろな報道がなされており、興味を持って眺めているが、その一方で、とまどいがある。アフガニスタンの問題についても、当時、ぼくらは積極的な支持ということはしなかったが、学習会の中では、止む得ないというふうに学んできた。そういう意味では、先程の詰は正直言ってとまどいがある。それは、これから勉強を深めていかなければならないと思う。
 理論的な問題としては、ソ連から出された公開質問状に対して、日本共産党が反論したその内容についてどう考えるのかという問題がある。
 その質問とは、十月社会主義大革命七〇周年記念式典でのゴルバチョフの演説の中で述べられているものである。
 第一に、全人類的な価値が、階級的な法則性の破壊的作用の範囲を制眼できる、と期待できるのか。
 第二に、資本主義は軍国主義から自由になることが果たしてできるのか、軍国主義ぬきでで経済的に機能し、発展できるのか。
 第三に、資本主義体制は新植民地主義ぬきに果たしてやっていけるのか。
 最後に、資本主義は非核、非武装の条件に適応できるか。
 これらの質問に対し、日本共産党は、「これらの考えは、超帝国主義論であり、今のアメリカ帝国主義の反動性・犯罪性を過小評価するものであり、このような考え方には同意できない」という、批判を行っているがそれをどうとらえるのか。
 また、それとからめて、「全般的危機論は、帝国主義の生命力の過小評価」であり、その見直しを日本共産党が進めているという、問題をどうとらえるのか。

A:ゴルバチョフが打ち出しているのは、階級的な見地だけではなくて、全人類的な利益の立場に立つということである。だから、アメリカとも積極的に接触し、他の資本主義国とも交渉するという姿勢である。これに対して、日本共産党がひねくれた対応を示しているのであり、その本質は、スターリン主義である。全人類的な価値よりも、資本主義の階級的な価値の方が力が強く、資本主義との階級闘争の方がより重要である。したがって、全人類的見地に立つことは資本主義との階級闘争を弱めるという、見地に立っているのである。まさに、それをひっくり返したのが、ゴルバチョフである。
 プロレタリアの独裁という言葉も、ゴルバチョフは全然使っていない。それよりも、資本主義とどんどん手をつないでいこうというものである。(以下質問略)

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