青年の旗 1988年12月1日 第141号

【主張】 天皇Xデーを軸とする反動攻撃のなか問われる日本の民主主義

<最大にして最後の天皇利用>
 天皇ヒロヒト重体の状況が長期化するなか、政府はそれを最大限に利用して、民主勢力、世論の封じ込めをはかり、自らの軍拡、収奪政策を押し通そうとやっきになっている。
 去る九月、天皇重体が明らかになるや、全国各地で行政主導のもと、天皇「平倫」を願う記帳所が設置され、多数の市民が動員された。
 とりわけ、皇居前に設置された記帳所の光景は、マスコミで大々的に報道され、そのことがまた動員効果を高めるという、六〇年安保闘争とはまったく逆の意味で、テレビの威力をみせつけたのである。
 一方、社会の「公器」を自認する新聞は、つい先頃の新聞評語ー「かたよらず」をまったく忘れたかのような、天皇賛美といわれても仕方のないようなキャンペーンを、各紙が競いあうかの如く展開した。
 こうしたマスコミの姿勢は、一昨年の朝日新聞襲撃以降の右傾化の帰結と、日本のジャーナリズムの実態をあらわにしたものといえよう。
 また、全国各地で、祭りやイベントを中心とした各種行事を中止させた「自粛シンドローム」は、天皇ー日本帝国主義の被害者である在日華僑の「国慶節」も中止に追い込んだのである。
 こうしたファシズムに近い情況のなかで、天皇制や天皇報道−自粛キャンペーンに対して疑問を持ち、抗議の行動を起す良心的な人々に対しては、「非国民」「売国奴」などというレッテルが貼られ、右翼からの強迫も行われている。
 とくに新右翼や行動派右翼は、この間のマスコミ、団体や著名人の言動をチェックし、とりわけ「不敬」なものに対しては、]デー後、喪が明けると同時にテロ攻撃をかける計画であるという。
 九月下旬から一ケ月もたたないあいだに、このような社会的空気が形成された事実。まさに侵略戦争責任の徹底した追求と総括なしに成立した、戦後民主主義という壁の薄さを、痛切に感じぎるを得ない。
 今後政府は、]デー新天皇アキヒト即位の情況をみすえながら、消費税の成立、拘禁関係法の制定や国家秘密法の国会再上程、さらには、軍事費突出一文教・社会保障予算削減の国家予算の成立を、強引に押し進めていく目論みである。
 そして]デーから、アキヒトの即位式までの間、侵略戦争責任問題の最終的で完全な抹消と、新しい時代の幕明けをつげる官制イベントと、自粛下の利潤低下の回復を狙う独占資本の「大売り出し」キャンペーンが進められる下で、国家主義、民族排外主義が扇動され、「異端者」に対する抑圧が強化されるのである。
 こうして政府・独占は日本が帝国主義間の競争に生き残るための、日本国家と社会の引き締めを図っているのである。そしてアキヒト天皇も、病床のヒロヒトが「米のでき具合はどうか」との一言で、アメリカ国内の米輸出問題での提訴の動きを封じ込めたように、いかなる軍隊よりも強力な−しかも個人的負い目のない−武器として利用されることになろう。

<真価問われる日本の民主勢力>
 こうした日本の動きは、単なるアナクロニズムというものではなく、軍縮の推進と民主主義・人権の拡大に向う世界情勢とは、まったく逆方向のものである。
 すでに天皇重体の当初より、諸外国では日本の危険な動向に対し批判が行われてきた。イギリスの「サン」「スター」の記事の他、韓国、中国やアシア諸国は、こぞって過去の侵略と現在の軍事大国化を同一線上のものと捉え厳しい批判を行っている。これら諸国民は虐殺行為の張本人が栄光のうちに死んでいくことを容認しないだろう。
 そして日本での事態が長期化するにつれ社会は、冷静さをとりもどしつつある‥「もういいかげんにしろ」「いつまで続くのだ」といった声は巷で広がりつつある。
 自粛の行き過ぎに関しても、民衆の不満が、天皇や自らに向くことや、諸外国の批難を恐れた政府が、「いましめ」を指導せぎるを得なくなってきている。
 またマスコミも、一方的な天皇賛美については、一定の報道修整を行い、労働組合や民主団体に対し「何か天皇問題で行動をやってくれればすぐ報道する」というまでになった。
 そして一時期は、長蛇の列をなした記帳所も今は人影もまばらになっている。
 これはXデーという嵐の前の静けさかも知れないが、こうした情況を日本の民主勢力は機敏に把握し、民主主義を守るための運動を組織せねばならない。
 日頃、何かにつけ日和見主義的対応に終始する日共も、こと天皇問題に関しては「党の片隣」をみせている。また、労働組合や民主団体も、自治労、教組、解放同盟を中心に行政に対する交渉を展開し、地方自治体や学校が、]デー以降の一通の「儀式」への市民動員拠占化を阻止しようとしている。また全国各地で、天皇問題を軸にした集会、デモが行われている。
 こうした取り組みとともに、これまで継続してきた反核・平和の闘い、「国家秘密法」や「拘禁関係法」阻止の闘いを、この時期一層強化していかねばならない。
 さらに]デーを迎え、あらためて浮きぼりにされるであろう「昭和」を総括抜きに終らせることなく、侵略の被害者たる、在日韓国−朝鮮人、中国人、そして被爆者や戦災者など、すべての犠牲者に対する国家的補償を要求する運動を強めていくへきである。
 このような平和と民主主義の闘いを持って、]デーを迎え、それに続く反動攻勢に対決していこうではないか。
 この一連の闘いは、日本の民主主義の試金石となっているのである。

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