青年の旗 1989年9月1日 149号

【講演】 「新しい思考」と日本の政治改革(中)
                   7月9日 鈴木市蔵氏講演より


<都議選で社会党圧勝>
 そこで、その最近の都議会議員の選挙を見てみたいと思います。都議会議員の選挙で、まあ私は練馬に住んでいますがね、今度、社会党の、練馬から出た佐々木という、東京の都電の運転手であった佐々木君が九万二千票という票を取って都内で最高点で当選した。今まで何回やっても社会党が練馬で都議会議員を出すことがなかった。せいぜい二万七千ぐらい。ところが今度は、九万二千票、三倍を起えたんです。一挙に三倍の票が社会党の新人候補、名前も知らない、顔も知らない、この佐々木君に投ぜられたということは、どういうことなのか。練馬で九万二千票の票があれば、そこだけで独自の衆議院議員を当選させることができます。豊島でもできまして、だから、練馬、豊島合わせまして、東京第五区では社会党は二人の衆議院議員を出せる可能性を持った票を今度は取ったわけです。
 私も練馬に住んでいまして、佐々木君の選挙にかり出されました。私も交通労働者の仲間のよしみということもあったんでしょう。
 しかし、ここで私がかりだされたのは何かと云ったら練馬勝手連をつくるということです。社会党の締めつけは一切ごめんだ。自分達で自発に今度の選挙では反自民ということで社会党に票を集中しようではないかという練馬勝手連をつくるということのために、かり出されたわけであります。
 ある時、診療所に集ってもらった。女性も数多く集まりました。そして、どこどこで何のお祭りがある。どこどこでは何のコンサートをやる。どこどこではこういう集りを持つ、というふうに自発的にそういう集りを決めて、持って、そしてそこに候補者を連れてくる。というようなことを勝手にやりました。ある人は、NHKのラジオの朝の体操、それを組織して、その人達を一五〇票つかんだ。そして佐々木君が当選した時には、その人達からお祝いの電話が殺到して、「俺が当選したような気になっちゃった」というような人も現れた次第であります。
 私が練馬でやれる地域活動というのは、そんなに数多くありませんから、私ごとになって申し分けありませんけれども、私は囲碁が好きですから、150人位支部の会員がいるのですが、そこでだけは、その、鈴木先生と呼ばれているんです。六段ですから。囲碁の六段というと、そうざらにはいない打ち手の一人です。そしてその碁を打つ仲間なんてのは、もう自民党もいれば、創価学会もいますからそういう中で社会免へ一票入れてくれ、とやっていました。

<「主権在民」ということ>
 そういう形の勝手連的活動をやりまして、そしてこの九万票という票を取ることができました。そして、やってみて気がついたことは、御婦人が、非常に政治について関心を持ってきたということです。「誰がなっても同じですから」と今まで言っていた政治を自らの、自分のものに引き受けた、それが目に見えたことです。私は、これが主権在民という憲法の定着性を示すものの一つであろう。定着というところまでいかないかも知れないけれど、その表れの一つではないかと思いました。
 今の日本の政治を変えることの一番良心的なお題目は何かと云ったら、主権在民を徹底する、「あなたがたが主人公ですよ。私たちが主人公ですよ。」という、これです。
 主権在民、この憲法に規定された、これを定着さす、実践する事は日本を変える鍵はこれです。私は、土井さんが憲法学者として前面に立ってきたのは非常にその点で、意義があることだと思っています。
 今度の天皇が即位の時に、「国民の皆さんと共に憲法を守る」ということを即位の誓いの言葉で云ったことの持つ意味は、非常に重要です。つまり、その主権在民ということが、一番権力の側にとっては、これが定着してくることが恐いからです。私は、このことがですね、政治を変えるという原点にせまる、そういう闘いだと思います。政治の原点、それは要するに、自分が、国民が主人公だという、この原点です。
 この国民か主人公である、主権者である、というこの政治の原点をせまる闘いが今度の都議選で表れた。これは非常に重要な結果だと思います。もちろん、これだけじゃいけません。さっき言った、消費税、リクルート、モラルの問題、こういったことを全部ひっくるめて闘うことが大事だと思います。しかし、不思議なことにですね、今度の都議選で皆さんも経験しただろうと思いますが、この東京をどうするという選挙じゃなかった。これは、東京という自治体の選挙です。なかでも、東京をどうする、首都をどうする、そんな大それた大きなお題目は、私の知っている眠り、今度の都議選では焦点にならなかった。言ってみれば、全国、国政並みの選挙だった。リクルートはどうする、消費税はどうする、こういう、つまり国政並みの選挙だった。これは正直言って分かりやすい。東京をどうするなんてことになったらわかりにくい。どっちに一票入れていいか分からないですよ。しかしリクルートはどうだろう、消費税はどうだということで、国政なみの選挙に自民党を引きづり込んだということが今度の選挙の特徴である。そしてこの分かりやすいということが、主婦を投票にかりたてる大きな力になった。ということが、見逃すことができない一つだということに思いました。
 そして、自民党は敗れた。先程のその例の紹介で説明は省略します。ただ一つ一七名の婦人の議員が当選した中で、一二名、一二人が社会党の新人である。しかもこの一二人の社会党の新人の婦人の都議が、ほとんど一人区から出ている。わずか一週間から一〇日間の余日の時間しかなかった、かけだしの、ほとんどかけだしの、選挙であったにもかかわらず、地すべり的変化が起きた。ということは、今度の選挙は女性の闘いであったということも言えるかと思います。

<共産党敗北の背景>
 そして、負けた側は自民党だけではありません。
 共産党も負けました。共産党にとっては非常に痛い敗北だったと思います。この調子でいくと、参議院も危ない。あるいは、きたるべき衆議院で、不破の選挙区自体も危ない。金子の選挙区も危ないと思っています。
 共産党の敗北について共産党自身は、中国問題があった。これが自民党の反撃を招いた。このために負けたというふうに言っています。そして天安門の事件が起きると一はやく号外を出し、宮本から始まって中国の共産党と「日本共産党とはちがうんだ」ということを宣伝している。自分にかかってくる火の粉を払い落すことに一所懸命になっている。私はこの時に、日本共産党は負けるなと思った。なぜか。その時に共産党はやっぱり共産党らしくならなければ、本当のその支持者は動いてくれないからです。日本の中で、他の社会党や公明党よりもひどい、一番ひどく中国の事態について口汚く中国をののしった。中国共産党をののしったのは共産党でした。同じ共産党を名のってるんだから、日本共産党だって、ことと次第によってはああならないという保障はどこにもないよと、言われれば二の句はつげないと。それがいやだったら共産党という党名を変えることはありません。変えたらたちどころに少数に転落することは火を見るより明らかです。今の日本共産党がどうにか、もっているのは、共産党という、この数十年に渡る不屈の「革命的伝統」の旗を持っているから日本共産党は強いんです。この旗を下ろしたらひとたまりもありません。私は、共産党は共産党らしくですね、二の中国の問題では中国の側に立つべきだと思います。そしてそのために、ちょっとやそっと票が減ったっていいと思う。中国社会主義を守るべきだ、守る側に立つべきだ。ただ、あれほどの血を流すことはいいとは言えない。それは十分批判したらいい。しかし、偉大な中国人民の今日、および明日の運命に対してですね、共同の責任を持つ。共同と言って悪ければ、連帯の責任を持つという立場に立つのがインターナショナルです。共産党のよさというのは、国際性を持っているからこそ強いんです。だからこそ「万国の労働者団結せよ。」という言葉が今でも正しいスローガンとして通用するんです。隣りの共産党がよってたかってたたかれている特にですね。自分も一枚加わってたたいてまわるというような共産党は不倫だと思う。思想的不倫性を持っておる。あまりにも党を利用しすぎる。私がもし、今の日本共産党であったらそうはしなかっただろうと思います。これはむしろ心ある者の不信をかったと思う。それで負けたろうと。負けた理由は確かに中国問題であったかも知れませんけれども、負け方の理由づけが全く逆である。  (つづく)

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