青年の旗 1990年4月1日 第159号

【政治】 政・財・官の癒着構造を許さず、勤労諸階層の生活向上を実現する公平・公正な軽済構造へ---日米構造協議----

 日米構造問題協議会の中間報告が四月六日、日米で同時に発表され、同日日本ではこの報告の内容が閣議にて了承された。今回の協議での合意事項での日本側報告の主たる内容は、一、公共投資の拡大、二、市街化区域内の農地の課税強化三、独禁法の改正と罰則規定の強化、四、外為法改正による対日投資促進、五、内外価格差是正策の実施と定期的モニタリング制度の導入、六、大規模小売店舗法、(大店法)の改正、などである。特にこの間米国側からの強い要求によって争点になっていたとされる大店法については、一年後の大幅改正、更に改正から二年後の「見直し」が明記されたほか、公共投資では期間十年間の総合的を公共投資計画の策定とその支出総額の最終報告での明示、独禁法については来年度改正による課徴金の引き上げなどが報告に盛られた。

<日米構造協譲とは>
 日米構造問題協議会は昨年夏以来進められてきたものである。諸外国との貿易不均衡が拡大し、貿易赤字の縮小を目指してもなかなか前進しをいことを口実に米国政府は八十八年「新通商法」を定め貿易不均衡の「改善」に乗り出した。特に貿易赤字の六割を占める対日貿易赤字を縮小させるべく米国政府はこの「新通商法」の中のスーパー三〇一条を強力に運用し始めた。スーパー三〇一条とは、米国通商代表部からみて、ある国の貿易・商習慣が不公正であると判断できれば相手国と交渉を行い、相手国が交渉に応じ、指定した期間内にその「不公正」であるものが是正されず米国にとって目に見える成果が得られなければ、米国通商代表部が相手国に対して自動的に制裁を課するというものである。昨年五月、米国通商代表部は日本を不公正貿易国と名指しすることは避けたが、日本のスーパーコンピューター、人工衛星、木材製品をスーパー三〇一条の調査対象品目として指定した。同時に米国ブッシュ大統領はこれとは別枠にして、「日本経済には構造的を障害があるからそれらを取り除くため」として流通機構、土地利用、金融系列の問題をどの経済構造問題での日米間協議を提案した。これが現在進められている日米構造協議の発端である。協議は今後も継続され、七月に米国ヒューストンで開かれる先進資本主義国首脳会議(サミット)で「最終報告」が発表される予定になっている。

<世界経済の大きな構造変化の中での日米経済協議>
 一九六〇年代後半からの繊維に始まり、カラーテレビ、鉄鋼、自動車、牛肉、オレンジなどと個別製品を巡って両国間で「調整」が繰り返されてきた日米貿易摩擦が、ついに両国それぞれの経済構造について見解を述べ合い、「改造」を要求せざるを得ないまでに激化してきた背景には今日地球規模で進む大きを変化がある。一九七〇年代、二度のオイルショックが引き起こした世界同時不況、インフレ、生産性の低下、失業増大などといった資本主義世界経済を襲った危機への資本の側からの対応策………高度の技術やエネルギー、原料の節約に基づく経済…産業構造の改革の進展………が今日の世界に及ぼしている影響を見ないわけにはいかない。マイクロエレクトロニクス革命に象徴される科学技術革命の進展による生産諸力の飛躍的増大、そして多国籍独占体の拡大を背景とした経済のボーダーレス化、情報化、モノやサービスや資本が国家間を自由に行き来するという状態の急進展。生産手段の私的所有の下でこの飛躍的に拡大された生産力が無政府的に、しかも地球上の隅ずみで行使される結果は地球環境の破壊に象徴されるこの地球、人類そのものの生存の危機に行き着きかねない状況を生み出し、また、生産諸力の拡大による競争の激化が資本主義世界に於て日、米、欧の三極を中心として繰り広げられる中で、地球規模でみればそれ以外の地域との間での格差の急激を拡大、飢餓と貧困に象徴される発展途上諸国の後進性克服の問題は一層鋭さを増すこととなった。こうした構造的な変化に対する対応は既に地球上いたる所で進められている。ソ連の新思考外交に牽引されながら進展する核軍縮と対になって進む開発援助計画。環境破壊防止のために検討される生産の無政府的拡大に対するより理性的な規制、一方での環境破壊防止そのものすらを新たを利潤拡大の場にせんとする資本の動き。閉鎖された社会主義経済圏をグローバルを相互依存の深まる世界経済に解放しつつ生産諸力の拡大を進めるという経済改革と一体になって政治・経済・社会のあらゆる領域で進む社会主義の再建。日、米、欧三極間での経済競争の中で一九九二年市場統合を目指す欧州の資本主義諸国、世界最大の債務国とをり慢性化した国家財政赤字・経常収支赤字を抱えをがらも巻き返しを狙う米国、一方、一九七十年代からの構造変化を最も効率よく成し遂げをがらも国内に先進資本主義国中最大規模の国家財政赤字を抱え、またこれからの世界経済に互していくために国内における多くの経済構造の変化を遂げねばならをい日本。これらの進みつつある世界経済の構造的変化が現在進行している日米構造協議の背景にある。
 そして深刻を経済・貿易摩擦を抱えをがらも、米国市場なくしてはなりゆかない日本と、債務を日本からの資金でファイナンスしてもらうことをしには立ちいかない米国という関係を維持しながらこの協議は進められている。

<外圧利用で国内利益還元構造を固めてこれた政府・自民党>
 今回の「中間報告」に対し、米国政府は「大幅な進展が達成できた」(ブッシュ大統領)と評し、今秋の中間選挙を控えて議会、有権者に対して米国政府の働きかけの成果をアピールするとともに、「最終報告」で米国政府が望む成果が上がらなかった場合に、「中間報告」で得た「よい感触」とのギャップの大きさを「口実」として、新たな要求、あるいは制裁の発動を行える余地を残したものといえる。一方、日本政府は「国民生活の質の向上と消費者の利益の増進を図り、わが国経済を世界経済とより調和のとれた姿としていく上で、わが国経済構造の改善は、大きく貢献するものであり、国益にかなうものである。‥…中間報告に盛られた日本側の処置は、困難を国内的な過程を経て到達したものであり、また今後の実施に当たっては、痛みを伴うことも予想されるが、私は、これはわが国の国益を増進させるために必要であり、かつ、国際社会の責任ある一員としてわが国が負うべき責務であると信じており、…」との首相談話を発表した。「国民生活の質の向上と消費者の利益の増進を図る」といいつつ協議に於て如何をる要求が米国側から提出されているのか、それが実施された場合消費者が受ける利益、不利益はどのように予想されるのか、をどといった情報をいっさい主権者に示さず関連する業界対策だけをひそかに進めるという姿勢は、「外圧」を利用して国内利益還元構造を固め直し(「外圧」によって自民党離れを起こしそうなこれまでの支持集団には補助金をそそぎ込んでつなぎ止め)、政界・財界・官界の癒着構造を一層深化させ、資本の利潤拡大の道を温存するというこれまでの政府・自民党のやり方を繰り返そうとするもののように見える。しかし政府・自民党がこれまでと同じ様を対応ではもはや乗り切れをいと考えていることも事実であろう。

<公平・公正な勤労者に望宣しい経済構造への転換を>
 日米構造協議に於て日本側が問われているのは日本政府自身が認めているようにこの国の経済、そして政治のあり方が消費者の方を向いてこなかったこと、すをわち、生産者、資本による利潤拡大を第一義としてきた経済構造を転換することである。本年年頭以降、日、米、欧の三極構造の中で日本の円だけが他国の通貨に対して下落を続けている。日本からは資本が流出し続け、昨年一年間では貿易黒字の二・五倍の資金が海外に逃げ出している。強いと見られていた日本の経済構造に対して、それらの構造は今日世界で進みつつある経済構造の変化に対応し得るのかどうか不信が寄せられている。急激な技術革新が日本経済の強さの一因であることは確かだが、同時に、株高や地価高騰などによる経済の投機的体質、それらを可能とする株式の持ち合いや無原則な土地政策、また貧しい社会資本と長時間労働に象徴される勤労者への犠牲転嫁が日本経済の強さの背景にあることも事実である。これらの構造に象徴される日本経済の底の浅さが、社会主義国の変革に有効に対応できないでいる外交政策、リクルート疑獄などこの間の国内政治の状況に如実に示された民主主義の根の弱さなどとあいまって外国為替市場における円安の大きな要因となって現れているといえる。
 相互依存を深め、人類全体・地球規模の課題に直面する世界経済に於て、ある一国だけが突出した経済競争力を持ち続けることは困難になろうとしている、効率第一主義、利潤拡大第一主義に対して、公平と公正という規制が強められねばならない状況が世界に於てつくりだされつつある。大きを経済力と強い競争力を有している日本の資本主義もこれらの国際的な規制を受けざるを得ない。また国内においても不平等、不公平の急激な拡大に歯止めをつけるべき必要性の合意は形成されつつある。日本政府が「国民生活の質の向上と消費者の利益の増進のための構造改革」と言わねばならない客観的条件は国際的にも国内的にも整えられている。問題はこれを建前だけに終わらせ実質的には資本の側の権益・利潤拡大の道を温存・拡大し、勤労者、民衆に新たな負担が押しつけられるような形で日米構造協議の結果を終わらせてしまうのか否かであろう。客観的な条件を勤労者、民衆の側にとって有利なものとなる方向へ切り開いていく闘いが必要であろう。
 経済のボーダーレス化が進み、世界各国の相互依存関係が益々深まりつつあるにも係わらずこの日本のみ孤立して、独自に「革命」ができるとでも考えているのであろうか日本共産党は「屈辱的を日米構造協議は打ち切れ」と主張しているが、これは現実に進展しつつある国内外の諸情勢とは全く無関係の、また現実を変革していくための政策・展望とは無縁の主張と言わざるを得ない。一方、他の野党も、この日本が直面している課題にどのように対応し、勤労者、民衆の生活の真の向上と、公正さ公平さの拡大を効率の上昇の中で合わせて実現して行くための政策を示すには至っていをい。どのようにこれらを実現していくのかの論議が、与野党逆転の参議院を活用して民衆の前に公にされ、民衆の要求と、その要求実現のための闘いが国会の論議と結び付くようにすべきであろう。

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