ASSERT 197号(1994年4月15日)
【投稿】 次の総選挙で何が争点になるのか
【投稿】 政界再編第二幕----問われる基本的政治姿勢
【投稿】 「史上最低」の94春闘をふり返る
【投稿】 春闘の『再構築』に向けて
【投稿】 戦後責任の背景−『閔妃暗殺』から『悲しみの島サハリン』まで
【詩】  気になる男の信条
【本の紹介】 『マルクス主義の崩壊』A・ヤコブレフ著
         『コミュニズムとの訣別』A・ツィプコ著

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(投稿) 次の総選挙で何が争点になるのか 

○政界再編いっきに加速
 政局は細川辞任によって一気に流動化している。細川政権は、政治改革を前進させる政権としての歴史的使命を終えた途端に、その求心力を失った。さらに自ら墓穴を掘るように国民福祉税構想の提唱とその白紙撤回や日米首脳会談の決裂、内閣改造をめぐる不手際といった細川首相個人の指導性と庶民感覚の欠如をさらけ出し、内閣の崩壊は時間の問題であった。細川首相には辞任後も、自民党政権を崩壊させた佐川マネーに手を染めたことに対する反省と疑惑の全容解明への真摯な姿勢が見られない。また細川は小沢、市川のいわゆる一・一コンビに接近して自己の理想を反故にしつつあり、彼の個人商店である日本新党は分裂に向かっている。自民党も後継首相の指名をめぐって真先に名乗りを挙げた渡辺が新党を結成する意思を固めたり、北川・鹿野の若手グループも新党を結成するなど党の求心力の低下を止められない。社会党と民社党も一・一コンビの渡辺擁立劇に参加するグループと新党さきがけに同調して渡辺擁立に抵抗するグループに分裂する危険性がある。
 問題を複雑にしているのは、ただ単に小沢を中心とする「普通の国」=軍事大国路線と武村を中心とする「小さくともキラリと光る国」=平和外交による国際協調路線との対立と次の総選挙を小選挙区で闘うのか、中選挙区で闘うのかという対立とが入り乱れていることである。小選挙区の区割もしないうちに中選挙区で選挙をするということになれば、選挙結果によっては政治改革が後退する可能性がある。本音では中選挙区で選挙をしたいという自民党と社会党の連携プレーが解散・総選挙を早める可能性がある。

○最大の争点としての外交・防衛政策
 現行中選挙区か小選挙区かということはともかく、次の総選挙の最大の争点の一つは外交・防衛政策である。軍事大国路線をめざす小沢の新生党、渡辺新党、公明党、日本新党連合対平和国家路線をめざす武村の新党さきがけ、自民党の一部、社会党と民社党の一部の連合が日本全国で入り乱れて闘うことになる。それが小選挙区制での選挙であれば、自治体において一度勝った首長の下に権力が一気に集中することや自治体選挙における小選挙区の過去の経験から見て、最初に小選挙区で勝利した者に選挙区の有権者の相談や献金が集中することは必至で、敗者が巻き返すことはかなり困難になる。従って、おそらく年内には予想される解散・総選挙にむけて各陣営の激烈な闘いが始まっている。軍事大国路線側の政策は平和を愛する国民の感情に配慮して「国連の常任理事国になるべきだ」というソフトな主張として外務省との合作の下に打ち出されるだろう。
 しかし、国連の常任理事国に日本が積極的に手を挙げることは、日本の軍事力の強化と軍事的な国際貢献という名の海外派兵=日本の国益に基づく軍事介入への道を開くことになるだろう。従って、平和を愛する国民の大多数の願う恒久平和の世界秩序とは相いれないものになりかねない。むしろ、軍事力を最小限にしながらアジアの平和と安全を保障するアジア版CSCE(全欧安保協力会議)の創設や国連の平和維持活動の強化への平和的手段による貢献、全般的軍縮の実行力を持つ国連への抜本的改革に対する加盟各国の協力体制の構築にこそ力を注ぐべきである。

○官僚国家に対する革命               
 総選挙でのもう一つの大きな争点は、現行の官僚支配を打倒する政策をどの党が、あるいはどの陣営が明確に打ち出せるのかということである。世界の流れと相容れない官僚支配の弊害が日に日に明らかになりつつある今日、明確に政治の優位を打ち出すことこそ「国民主権」の実現のために必要である。しかし官僚の支配は徳川幕府のように堅固であり、小選挙区の利益を実現したい国会議員に対する官僚による露骨な利益誘導が繰り広げられるだろう。選挙で国民の信任を得た政治が官僚を使うという行政改革に与野党とも力を合わせて着手するべきである。そこに手をつけることができなければ、何時までたっても国民が政府をつくるという民主主義の本来の姿を実現できず、世界のなかでの日本の発言権は低いままに止まるだろう。   (1994年4月15日 大阪M)     

(投稿)  政界再編第二幕----問われる基本的政治姿勢

<<「政権投げ出し」>>
 細川政権の瓦解は、数カ月前までの高支持率からすれば、実にあっけないものであった。辞意表明の主たる理由は、首相個人の疑惑であるが、これは日本新党旗揚げの時から取り沙汰されていたものである。たしかに、肝心の首相が自分自身の疑惑解明に追われ、予算審議が全くはかどらず、首相官邸でも執務室に一人で閉じ込もってしまうような状態では、政権投げ出しも仕方のない状態であったといえよう。
 しかし、細川政権崩壊の決定的な原因は、「国民福祉税構想」をめぐる一連の不明朗な政治手法、いわば政権の変質にあったのではないだろうか。「清新さ」、「国民に開かれた政治」を語りながら、連立各党との協議を無視ししたごく一部との密室政治、深夜の唐突な記者会見、税率の根拠も示し得ないしどろもどろ、撤回をしても反省の弁すら語れない、すでにこの時点で先は見えていたのである。
 38年に及ぶ自民党一党支配を打ち破った連立内閣の歴史的な意義と実績は高く評価されなければならないが、連立政権であるがゆえの積極的な意義をぶちこわし、自民党時代へ逆戻りするような政治姿勢によって、もはや自らの存在理由を無意味なものとし、自分で自分の首を切ったのだとも言えよう。与党の日本新党内からも、今回離党者が出たことはその象徴である。

<<新党さきがけの問いかけ>>
 日本新党とは「結婚」まで約束していたのに、事実上、切り捨てられた形の新党さきがけは、4/15の声明で「今日の事態は残念ながら必ずしもわが党の期待通りの展開を示してはいない」として、「新内閣の役職にはつかない」ことを明らかにしている。武村代表は、「この八カ月を振り返ると、いろんな反省がある。体質や手法にかかわる話だが、国民福祉税のときのようなコトの決め方に違和感を感じない人たちがいる。権力の二重構造という言葉があるが、もう卒業すべきではないか」と語り、同党は、「新政権は憲法を尊重し、政治的軍事的大国主義を排する固い決意を持った政権でなければならない。新政権は政策決定の民主性、公開性を高めなければならない。特に国民生活に重大な影響を及ぼす政策決定に関しては、民意を十分配慮し、国民合意の形成に務める。改革に取り組む新政権は、言うまでもなく改革を唱えるにふさわしい資格が要求される。政権の廉潔性には厳しい注意を払うべきである」という基本姿勢を打ち出している(4/11)。
 本来こうした姿勢は、日本新党が主張し、細川政権の看板であったはずのものであり、同時にその具体的な展開においては多くの矛盾を抱えながらも、連立政権が国民の圧倒的な支持を獲得できた最大の武器であったといえよう。とすれば連立政権の維持を賭けた政界再編第二幕は、こうした基本姿勢にいかなる態度をとるのかが問われている。

<<渡辺氏の強権的大衆蔑視路線>>
 この機に乗じて浮上してきた自民党・渡辺氏の動きは、明らかにこうした基本姿勢に対決するものである。渡辺氏は、「多少の妥協があっても政策的に一番近い政党と連携して、最大公約数をめざすのが現実の政治だ。志を同じく出来る人がいれば、一緒に行動したい」として、新生・公明連合と手を組むことを露骨に表明しており、そのためには自民党離党・新党結成も辞さないと公言している。しかし本人の意図に反して、自民党内はもちろん、自派内においてすら多数を獲得できない状況である。
 問題はその政治姿勢である。渡辺氏は、「私は連立七党一会派のなかに自民党の政策でくさびを打ち込むために出馬するんだ」「私が首相になれば、必ず景気が良くなる自信がある。救国内閣といっても右左、正反対でも困る」と述べて、明らかに社会党の連立政権からの追い出しと、連立政権の基本姿勢の転換をもくろんでいる。渡辺氏は近著「保守革命」の中で、冷戦後の政治経済に対応する「強いリーダーシップ」を掲げ、国際貢献の分野で軍事力を含む積極的な対応と、必要ならば憲法改正も辞さない、「民意迎合」ではなく、「公益重視」が基本理念だ、いま「政治をプロの手に取り戻そう」と主張している。かつて「クリーンなだけでは政治はできぬ」として腐敗防止と政治改革の努力をあざ笑い、「毛バリ」発言で大衆を蔑視し、人種的偏見と差別に満ち満ちた発言で国際的にも批判を浴びながら、これらについて反省の気配すら見せず、よりいっそう助長させるような政治姿勢を堅持しているのである。今回、自民党から離党した「新党みらい」でさえ、渡辺氏とは一線を画し、同グループの北川氏は、渡辺氏について「基本的なスタンスが違うし、政治手法にも疑問がある」と語り、首相指名選挙で渡辺氏を推す考えのないことを明らかにしている。

<<さまざまな変化と組み合わせ>>
 一方、こうした事態の進展は、自民党がますます求心力を失い、政界のさらに大きな再編成が必至であることを示したといえよう。自民党の河野総裁は細川政権に対する代表質問などを通じて、新生党・小沢氏主導の政治路線に「新国家主義」などの厳しい批判を浴びせてきたのであるが、それは渡辺氏に代表される本来の保守本流の路線であったのである。河野総裁の誕生自身が、連立政権の誕生がもたらした、自民党の矛盾に満ちた対応であった。その矛盾がここにきて噴き出してきたのである。
 今回の騒動の中で、公明党幹部が「この機会に社会党にあいくちを突きつけることにした。もう連立から離れてくれてけっこうだ、ということだ」という態度を明らかにし、一方それに対して社会党は、「向こうが渡辺と組むというのならば、こっちは自民党のタチの良い人と組んでもいいんだ」として、自民党幹部との接触を図り、「政治腐敗防止」、「護憲」、「政策決定過程の公開性」など合意内容も詰めた、という。(4/14朝日)
 今回の事態の進展はそこまでに至らなかったとはいえ、政界再編第二幕の始まりは、さまざまな変化と組み合わせの多様さがあっても不思議ではない事態を予感させているのではないだろうか。(T.I)