ASSERT 201号(1994年8月15日)
【投稿】 村山政権と労働組合の対応
【投稿】 「村山政権に望むこと
【投稿】 労働側の「価格破壊」を迫る日経連
【投稿】 自然保護運動と政党
【本の紹介】 『獄中19年一韓国政治犯のたたかい−
            『完全なる再会』

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投稿 村山政権と労働組合の対応
   ・・支持労組の分裂と社会党大会・・

突然の自社さ連立政権に当惑
 6月29日の村山政権の成立は、従来からの支持団体の中にいろいろな波紋を投げている。9月3日に開催される社会党第61回臨時大会議案である「当面する政局に臨むわが党の基本姿勢」の中でも「予想外の選択」として執行部が決断したと言われているように、自社さ連立は予想外の結果であった。55年体制では互いに敵同士であった自社が、手を結ぶということが、いろいろなところで矛盾を超こしている。特に社会党支持労組の中で、深刻な事態を迎えている。
 6月29日社会党と連帯する労組会議は、橋村会長談話を出している。「社会党を支持し、社会党とともに活動をしてきた立場から、「村山新総理」を全面的に支えていく決意を新たにしています」と。
 一方、連合は翌30日の中央執行委員会で「新連立政権に対する連合の対応について」を決定している。連合は26日の幹部会において、「細川政権の枠組みで連立再構築と安定政権を求め、自民党政権の復活は有り得ない」との立場であったため、「今回の結果は、我々の期待と大きな違いがあり遺憾である」と、不満の意を表明。さらに「社民両党が与野党に分かれたことから、羽田政権と同様、政策を通じての是々非々主義にもとづき対応する」とした。自民党政権の復権を恐れるとともに、社民両党の対立傾向がさらに拡大したことを憂慮し、連合800万労働者の団結にマイナスの影響が出ないよう最大限の努力を行うと。

自治労は積極的支持
 細川連立政権の枠組みを基本とする新しい第3次連立政権の実現を期待することを基本的立場としていた自治労であった。6月中旬の混乱した政治状況の中でも依然、自治労の幹部は、さきがけとともに「社民リベラル」の結集による、細川政権の枠組みを追求していた。しかし、報道されているように、デモクラツツからの自治労議員の離脱、最終局面での自社さ政権への判断を自治労中央が行ったようだ。
 7月4日の県委員長会議で決定された「細川政権の成立と自治労の基本的スタンス」によれば、さきがけとの共同の政権構想など、自治労は従来の連立枠組みを優先していたが、自民党を含む連立政権が成立した原因は「民主主義のコスト(粘り強い話し合いと上手な妥協)を払おうとしない政治姿勢であり、自民党と社会党を分解させて新保守勢力中心の政権作りが一貫して追求されたことは否定しがたい事実」と、旧連立側の「強行路線」を批判している。
 さらに「村山政権の成立によって、最悪のケース(保守大連立、自民党単独)は避けられ、さきがけとの連携は維持されたものの、我々が期待した姿とはことなった政権構成となった」。しかし、「社会党の政権構想」は、自治労は基本的に支持できるものであり、合意された政権構想を基本に民主政治の実現と着実な改革を進めるよう、政策実現を軸に対応するとし、与党第一党の自民党には、旧来の体質に対して厳しい態度で臨むとしている。また、社会党が、「新しい政治勢力の形成」に直ちに着手することを求めると共に、統一地方選挙や、参議院選挙への旧来の枠組みでの選挙準備については、8月末の定期大会で提案するとしている。
 村山総理が自治労組織内議員である事情もあるが、村山政権支持を自治労は固めた。

自民党中心の政権だ・・全電通
 7月4日の全電通地本委員長会議では、村山政権に厳しい判断を示した。
 「細川政権の枠組みを基本とし、自社連立は選択しない。」などを、第3次連立政権の基本としてきた全電通は、村山政権に対して「・・・自民党中心の政権であり、極めて遺憾」「さきがけとは政策合意が行われたが、自民党とは政策合意も政権構想も明らかにされていない」として、「連合の対応」を基本に、「村山政権とは是々非々で対処する」「社民両党が与野党に分かれた実態を深刻に受けとめ、社会党との支持・協力関係は維持し、公・民との協力・協調と新党各党との友好関係を維持しつつ、「社民リベラル」の結集による新政治勢力の形成に全力をあげる」としている。

社会党が参加する政権は評価・・日教組
 7月1日の日教組第79回定期大会で、横山委員長は「村山政権を支持する」姿勢を示した。「護憲」か「自主憲法制定」かなど、自社の党是の違いはどうなるのかなど、政策協議もなく政権を組んだことで、国民に戸惑いがあるが、これに謙虚に耳を傾け、政権構想に基づき、3党が政策の詰めを急ぐべきだとしている。また、日教組としては新政権の教育政策を注目するとし、新政権とは政策を中心に協力関係を保っていく、とのべた。
(その後、所信表明などでの、日の丸・君が代問題などでは、批判的姿勢にある)

支持労組の間で、分裂傾向
 このように村山政権に対して、社会党支持労組の態度の相違は明白になっている。
明確な政権支持は、自治労、日教組、私鉄総連、金属機械、全水道であり、政権を冷静に受けとめるとする慎重な態度、または遺憾との見解に立つのは、全電通、都市交、全逓、電機連合、鉄鋼労連などである。
 おそらく連合をはじめ労働界との十分なコンセンサスを取られずに、社会党が自社さ政権を選択したことが原因と思われる。社会党の側にも自社連立が戦略として論議・確定された上での選択ではなく、6月の中央委員会でも「自社政権はありえない」と決定していたわけで、そうした余裕もなかったというのが、現実だった。
 ともあれ、共通しているのは「自民党政権の復活への危惧」であり「社会党の政権政党としての主体性」である。遺憾を表明した産別組合も「政権構想」の具体化を注視し、政策の実現を求め、社会党の変革を求めている。
 また、第3次連立内閣としての村山政権の意味を過渡的なものとし、社会党も含めた政界の再編がさらに進むなかでの「新しい社会党」への脱皮を求めていることは、共通しているのである。

今後の展開と問題
 こうした社会党支持労組の政権への温度差がもたらす最大の問題は、第1に当面する統一自治体選挙、参議院選挙での選挙協力問題であろう。
 すでに、旧連立の枠組みでの選挙協力による候補者選びなど選挙準備は、特に地方において進行しており、有る意味で社会党を除く旧連立の枠組みは新党構想も含めて維持されている。全電通のように明確に公民・新党との連携を打ち出している動きなどのように、社会党の選挙体制は、自社連立の事態の中で一層困難が予想される。
 さらに、連合という枠組みがどう作用するのか。山岸会長の最近の発言は、政権とは一線を画す方に、重心が置かれ、連合の政治的影響力の確保を最大のポイントにしている。私見だが、社民が与野党に分かれ、旧連立が分裂した現時点で、一定の期間、連合よりも各単産の決定が重要になり、連合の政治的影響力は低下せざるをえない。
 このことは、政治的影響力よりも、連合の制度政策闘争の真価が問われると言う意味で、連合の試練と逆にとらえ替えす必要がある。
 第2には、社会党が議席獲得の最大の基盤としている労働組合の中で、政権を巡って意見の相違が存在する以上、自社連立に反対の労組出身議員を中心に社会党の内部で、意見と行動に相違が生まれてくる可能性がある。社民勢力の結集という旗を掲げて、村山政権に反対した議員有志が民社党の有志議員と共に議員グループを8月21日に約80名で結成と報じられている。このグループの代表は連合の山岸会長に協力を依頼しているという。また、旧連立の枠組みを重視する方向にある連合は、与野党の議員を集め、「連合政治フォーラム」を結成した。こうした政党と労組、政党と議員のねじれ現象は、どのように発展・推移するのか、その焦点は当面、9月の社会党臨時大会となっている。

基本政策の変更は承認されるか
 9月の臨時大会への事前配布議案は、大きく4つの枠組みで構成されている。第1に村山政権と社会党の任務、第2に村山政権成立の評価、第3に「新たな時代の政策展開」とする基本政策の変更問題、第4に当面する活動について、となっている。
 ここでは特に第3番目の基本政策問題について考える。村山首相が所信表明などを通じて明らかにした、社会党の基本政策の変更点は@非武装中立問題A自衛隊と日米安保B国際貢献C日の丸・君が代Dエネルギー問題である。
 非武装中立について、村山総理は国会での所信表明においては、「非武装中立政策はその歴史的使命を終えた」としたが、「非武装路線は党是を越える人類の理想」と規定し、今後も高く掲げ、中立・非同盟については、冷戦終結の情勢の変化の中で、その歴史的使命は終わったと規定している。この点については私自身も異論はない。
 自衛隊・安保では、軍縮基調を堅持して、「自衛のための必要最低限の実力組織」である自衛隊を認め、合憲であるとし、「防衛力の再縞・整備と縮小」に努める。日米安保は、冷戦の終結により性格が変化し、むしろ平和のための積極面を評価している。
 この点は、大いに議論が分かれるところであろう。連立政権としてさらに「自衛隊の縮小プログラム」まで合意できるよう、予算の前年比%問題より以上に軍縮へのプログラム、政策提起が求められ、それなしに、社会党内に留まらず、国民的にも支持を受けられまい。
 日の丸・君が代では、それぞれ国旗・国歌との認識にたつが、強制については同意しない、という立場である。早速、日教組から批判が超こっている。いくら「国民に定着している」といっても、あまりに唐突であろう。掲揚・斉唱問題への物理的対応に終始する運動には私も現時点で疑問はあるが、時間をかけて、議論する姿勢が必要であろう。
 エネルギー問題では「稼働中の原発は、代替エネルギーが確立されるまでの過渡的エネルギーとして認め、‥・自然エネルギー中心体系への転換をはかる」としている。
 これらの内容は、私個人は一部を除き基本的に支持してもいいと思う。しかし、党是の変更となれば、あまりに唐突、混乱をまねく危険性が高い。物分かりの悪い、教条的左派があっさり転換に応じたようだが、むしろ「民主主義のコスト」については後払いができないことを認識していないと、現実に党大会の混乱状況も予想され、久保書記長の辞任と言う事態を想定する人もいるぐらいだ。
 社会党広島が、基本政策の変更に修正案を予定しているとも報道されているが、とにかく我々は、この臨時大会の動向を見守るしかないようである。

長期政権化と連合・各単産の態度
 短命であろうとの当初の予測に反して、この政権が「長期政権」となる可能性も生まれつつある。小選挙区区割り案が可決されても、2年程度選挙が行われなければ、長期政権となる。(自民党の連立重視の譲歩がどこまで続くか、また村山首相の所信表明に示される「政権政党としての社会党の基本政策の転換」などが、社会党内で十分に支持され、確立すればという仮定付きではあるが。)さらに、来年の統一地方選挙、参議院選挙まで以上述べた社会党陣営内の分散傾向がどうなるか。また、「自民党政権の復活」を危惧する声に、どのような方向が示されるか。問われているのは、各産別それぞれの状況、見解よりも社会党自身の問題であると言える。社会党自身の「変革」か、新たな政界再縮を通じての「第4次連立政権」を展望したぎりぎりの選択が早晩求められるだろう。(大阪:佐野秀夫 940821)