アサート 204号(1994年11月15日)
【投稿】 米朝合意の後にくるもの by 大阪 O
<画期的な合意ではあるが>
 アメリカと北朝鮮の「核疑惑問題」解決に向けた合意は、朝鮮半島における当面の危機を回避し、今後の平和的安定関係構築に向けた基礎を創ることに、取りあえずは成功したといえるだろう。
 アメリカは、NPT体制の維持と軽水炉転換という制度的、技術的な二重の封印を張ることによって、北朝鮮の将来の核兵器保有の道を閉ざした。一方北朝鮮は冷戦時代末期、社会主義体制の崩壊で国際的孤立を深め危機感をつのらせるなか、ほぼ確実に核兵器開発を指向した過去を封印し、経済基盤の安定につながる手形を引き出すことに成功したのである。
 しかしその時間的猶予は5年であり、特別査察が実施されるまでに、残された課題が全て解決されるかはまだまだ不透明と言わざるを得なし、その鍵は交渉当事国以外が握っているのである。
 それは当時国の利害の一致と裏腹に、韓国と日本が軽水炉転換に伴う多額の資金援助を負担する方向になったことだ。中国やロシアも何らかの形でこうした支援体制にコミットするであろうが、経済的負担の大部分は日韓両国が受け持つことに変わりはないだろう。

<あり得ないシナリオ>
 ここで示され、了解されているのは、北朝鮮が核兵器を保有することにより、日本と韓国が重大な危機に陥らないためには「受益者負担」は当然という考えである。しかし、キムヂョンイルの「何をするか判らない」という個人的資質を持って、北朝鮮が日韓に対する軍事的冒険に打って出ることを論議の前提とするのは、あまりに拙速である。
 なぜなら過去の軍事的冒険である朝鮮戦争当時と現在では、状況がまったく違っているからだ。ロシア、中国の支援はおろか、食料、燃料、弾薬さえ満足になく、そのうえ国家bQの実力者であるオジンウ人民武力相が「末期癌」で明日をも知れない体とあっては、とても戦争はできまい。
 だからこそ、北朝鮮はキムイルソン死去までの「和戦両様」の交渉戦術から、明らかにアメリカとの妥結を目的とした方向へと転換したのである。アメリカもそうした舞台裏を熟知しての交渉を行ないながら、どこか第三者的な振る舞いが目につくのは、紛争当事者にはなることがないという条件と、経済的負担を回避したいという事情に動かされているからだ。

<北朝鮮の危機と中露の責任>
 そもそも、北朝鮮が戦争という手段をとれないまま経済的に破綻していくことにより、韓国の次に大きな影響を受けるのは、海で隔てられた日本よりも陸続きの中国やロシアである。よく北朝鮮崩壊のシュミレーションとして、大量の難民が日本に押し寄せるという図式が描かれるが、中国、ロシアへは全然桁違いの人数が向かうだろう。
 そうなれば、自国の経済的事情もけっして余裕があるとはいえない両国は、局地的なパニックが発生する危険性がある。こちらの方が軍事的な衝突よりもよほど可能性が高いわけで、そうなると中国・ロシアが日本以上の経済的負担を被ってもらうのが筋ということになる。また、そもそも北朝鮮に核技術や多大な軍事援助を行ってきた両国、とりわけ旧ソ連の後継者たるロシアの責任は厳しく問われなければならない。

<日本の立場と責任>
 しかし、現実問題として中露の経済協力が期待できないなかで、結局日本は相当の負担をする事になるだろうが、今回は金は出すが口は出さない、という対応では済まされない。
 日本に求められる対応は、過去の植民地支配を精算して、米、中、露と対等の立場に立ったうえで、各国や北朝鮮に対しても主張すべき点は主張すること、そして北東アジアの総合的安全保障体制のプランを積極的に提起していくことである。ただ社会党、自民党の底流にある北偏重、植民地支配肯定を精算することなしの「合作」などは直ぐに破綻するだろう。 (大阪O) 

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