ASSERT 218号(1996年1月20日)
【投稿】  「もんじゅ」の即時閉鎖を!
【政局】 雑感−年頭にあたって  
【投稿】 96春闘を迎えて・・・・依然厳しい状況
【映画紹介】 「三たびの海峡」
【投稿】 〈いじめ〉とコミュニケーション論の視点
【投稿】 教育も、「変わらなきゃ」

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(投稿) 「もんじゅ」の即時閉鎖を!

<<動燃理事長「自信が持てない」>>
 この1月13日に、ナトリウム漏れ事故を起こした「もんじゅ」の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の事故調査を担当していた総務部次長が自殺した。敦賀市現地の「もんじゅ」建設所はもちろん動燃本社ぐるみの事故の真相隠ぺい、ビデオ隠しの渦中での出来事であった。たとえ嘘いつわりであっても「同じことを何回も言っていると、それが事実だと思う人もいるんですね」と語っていたという。
 動燃は当初、今回の重大で本質的な欠陥に基づく事故であることを隠し通すために、わざわざごく一般的な「事象」と言い替えたり、推定で2−3トンも漏れていながら、「漏れたナトリウムはごく微量」などと発表していた。ビデオの映像隠しが次々に暴露され、事態はきわめて重大な事故であることが明らかになり、大石・動燃理事長は「これ以上新たな事実が判明しないかどうか自信が持てない」とまで言わざるを得なくなった。「今回の事故で、日本の原子力開発は国民の信頼を失うという深い傷を負った」(伊原・原子力委員会委員長代理)のは当然のことである。

<<安全協定の完全な無視>>
 それ以上に問題とされたのが、事故そのものへの対応である。事故は、12月8日、午後7時47分まず火災警報が作動して明らかとなったが、動燃から県への連絡は事故発生から50分近く経った午後8時35分、敦賀市へは同8時48分と、安全協定第6条「直ちに連絡」するを完全に無視するものであった。
 さらに、原子炉停止を最終判断したのは実は午後9時10分のことで、それまではほとんど出力を下げていなかったのである。運転マニュアルでは「ナトリウム火災の発生を確認した場合、直ちに原子炉の緊急停止操作をする」となっていたにもかかわらず、出力低下操作優先のために3時間もナトリウムの漏洩が続き、その間の燃焼反応で一部では2000度近い高温に達していたことが明らかになっている。しかも事故発生現場の換気扇を約3時間も作動させ続け、火災を拡大し続けたのである。
 福井県側は警報発生後、直ちに原子炉を停止しなかったことを厳しく批判し、福井県議会と敦賀市議会がそれぞれ開いた全員協議会では「もんじゅは閉鎖すべきだ」との意見が相次いだのは当然のことである。
 動燃は、世論の厳しい追及の前に、事故情報の公開を約束しているが、事故発生から一次系の状態変化や二次系の流量の変化など事故記録は未だに全面公開されてはいない。

<<スプレー火災の恐怖>>
 今回の事故が明らかにしたことは、半減期24000年、放射能の毒性が極めて強く、核暴走する可能性が高いプルトニュウムを燃料に、爆発の危険性がきわめて高いナトリウムを冷却材に使用するもんじゅは、運転を続ける限り、非常に重大な惨事を引き起こすことが確実であることを示したことである。
 このもんじゅの内部には、ナトリウムが一次、二次冷却系にそれぞれ約760トン、原子炉内の貯蔵タンクに約160トン、計約1700トン、プルトニウムを1.4トンも抱えている。そして、一次系は約530度、二次系は約505度の高温ナトリウムが管内を秒速6m前後で流れているが、その配管は直径約56cm、肉厚は約9mm(軽水炉の場合、肉厚は約3.5cm)にしかすぎない。一次回路のナトリウムの温度は非常に高く、この高温と高速中性子による強烈な衝撃、さらに安定したナトリウムの放射性核種のうちいくつかが中性子を吸収し、放射性のγ線をを放出するナトリウム24に変換することにより、パイプ、バルブやその他の部品を腐食していくことが宿命となっている。
 そして今回の事故は二次ナトリウム系配管が原子炉格納容器を出たところで起きている。温度を計測する枝管から漏洩したナトリウムが配管室の酸素や水分と激しく反応、炎上し、火災は3時間以上続き、漏洩量はおよそ2トンで、ナトリウムの粒子が落下して飛散する際に爆発的に反応するスプレー火災の恐怖が起きていたと見られている。反応生成物であるガス化した水酸化ナトリウムは地下4階から地上2階まで広範囲に拡散し、各種ダクトやケーブル、機器類、壁、床のコンクリートに付着している。これは強い腐食性を持っており、それによる損傷の回復は発見からして容易ではないものである。

<<「コストとの兼ね合いもある」>>
 このナトリウム漏れについて、動燃のリーフレットでは「高感度の検出器を多数設置し、少量のナトリウムが漏れてもすぐ分かる」としていたが、今回のナトリウム検知器の性能について、実際は1時間で100グラムの割合で漏れた場合で24時間以内、今回のように100キロを超える漏れの場合でも検出までに15分もかかることが明らかになった。実際に事故の検出は、ナトリウムが漏れた後の爆発的な火災の発生による火災警報機の作動によって知らされたのである。動燃はこれについて「ナトリウムは一挙に大量に噴き出すことは考えられず、この感度で十分対応できる。コストとの兼ね合いもある」と説明している。安全など全く無視したコスト論まで持ち出しているが、そもそも検出器の役割など果たしていないに等しいものを、「漏れてもすぐ分かる」などと大嘘をついていたのである。
 世界の各国が制御不可能なナトリウム漏れ事故の続発を眼の前にして、核増殖炉から撤退して、日本だけがこれを無理矢理強行しようとしているのであるが、その際、動燃は「管理の行き届いた日本では、ナトリウム漏れはまず起こらない」と繰り返してきた。しかしこれも今回の事故で根底から叩きつぶされたといえよう。

<<「適切な設計でなかった」>>
 さらに漏出箇所とされる温度計部分について、動燃も科学技術庁も温度計のさや管が破損することを想定していなかったと説明しているが、動燃の大洗工学センターは、1月10日、温度計の構造的欠陥を認め、流体誘起振動のために、もんじゅを100%出力で運転した場合、早ければ11日間で、遅くても4か月足らずで損傷する可能性が高いことを明らかにし、「解析結果から、設計上適切な設計でなかったといえる」と指摘している。今ごろ何をかいわんやである。起こるべくして起こったことを自ら認めているのである。
 実は動燃は、すでに91年に漏洩のあった部分を含む配管を大規模に設計修正し、付け替えを行っているのである。そして今回の漏洩はこの時に溶接された温度計用枝管から起きている。いわば自ら今回の事故を準備したのである。
 ナトリウムの利点は、沸騰点がきわめて高い(摂氏990度)ことから、高速増殖炉の十分に高い熱伝導性と冷却材としての役目を買われたのであるが、だがその反面、水以外にも多くの物質と即座にしかも激しく反応する性質があり、しかもその溶融点(97.5度)以下だと、金属として個体になってしまう。このことは、ナトリウムの温度を常に点検し、原子炉が運転停止中であっても常に熱した流体状態に保たなくてはならないことを意味しており、流体誘起振動を始め、潜在的に重大な損傷をあらゆる段階で引き起こす可能性を持っていることを明らかにしている。振動では規模も力も膨大な、阪神大震災以来の不気味な地震活動の活発化は、このような危険きわまりない原発の即時閉鎖を緊急の課題としているといえよう。

<<断念・閉鎖以外、道なし>>
 もんじゅは、ナトリウム、蒸気系での相次ぐ事故により発電は当初計画より2年遅れの中で、昨年8月に初発電を強行したのであるが、今回の事故である。もんじゅにつぎ込んだ国費はすでに7000億円以上、当初の原子力委員会の見積もりの7倍以上にも達しており、もはや技術的にも信頼性においても取り返しのつかない事態となったことは誰の眼にも明らかである。即刻断念し、閉鎖するほかに道は残されてはいないといえよう。
(生駒 敬)