ASSERT 221号(1996年4月20日)
【投稿】 保保連合構想の台頭と住専問題  
【投稿】 地方分権推進委員会が中間報告
【投稿】 自治の中身を問いなおし、直ちに公務員国籍条項撤廃を!
【投稿】 今こそ、沖縄に連帯して
書評】 日本思想の可能性とは何か・・・その非合理主義的民族性

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(投稿) 保保連合構想の台頭と住専問題

<<談合政治の再登場>>
 すったもんだの末に、ついに6850億円の税金を住専問題の処理に導入する法案が衆院を通過した。与党と新進党は予算書の総則に「住専予算は制度を整備した上で措置する」と書き加えることで合意したという。新進党の西岡・国対委員長が合意文書に署名をしていながら、広辞苑によれば「措置とは削除」などと詭弁を弄し、結局、議決では反対するというまるで政党としての体をなさない支離滅裂な対応によって、政治のふがいなさ、政治への不信をいっそう拡大したことは間違いない。
 この談合政治の結末は、旧田中・竹下派の与野党間にわたる裏取引、大蔵、農水の腐敗官僚を引きずり込んだ利権政治の再登場を物語っているといえよう。事態の推移が明らかにしたことは、橋本首相自身が「国民の理解が得られていないことは痛いほど感じている」と発言し、村山前首相までが「これほど大きな問題になるとは思っていなかった」とその認識の甘さを露呈し、国民の9割以上にも及ぶ反発の強さにたじろぎ、与党内からさえ凍結論が吹きだし、自ら説明のつかない政策、京都市長選、岐阜参院補選の結果に右往左往し、そして新進党の腰の引けた無為無策な座り込みの中で、与野党共に崖っぷちに立たされていたことである。

<<破産した「金融システム不安」論>>
 そもそもこの住専問題は、その発生からして密室の談合による金融行政がもたらしたものである。農水省と大蔵省の隠されていた覚え書き、母体行、住専ともに経営の実態を情報開示せず、政府・大蔵省、その後の新進党幹部も含めた政治家達と癒着して反社会的な行動をとり続け、事態の真相を隠ぺいし、問題を先送りする間に、母体行は不良債権の全てを住専に押し付けるだけ押し付けてそのツケを税金で払わせようという、この処理策自体が密室協議の産物であった。久保蔵相の言うように、「(住専は)実質(母体行の)子会社と同じようなもの。(母体行は)単なる債権者、貸し手責任ということにとどまるものではない」のであって、「3.5兆円の債権放棄を行ったということで母体行の責任が果たされることにはならない」(4/1予算委員会)のである。
 ところがこのよりいっそうの母体行責任が問われると、自民党にも増して新進党が母体行をかばい、金融システムの不安を招くなどといった議論をいまだに展開している。
今や誰もが金融不安と住専問題を切り離して考えており、経済界でさえ、「金融システムの混乱が経済の足を引っ張っていないか」との問いに「大企業は全く影響を受けない」(トヨタ自動車・奥田社長、4/1日経)と答えている。母体行の追加負担についても、「母体行は、有価証券の含み益などを考えると、まだ負担は可能であり、それによって国民の負担は回避できる」(吉野俊彦・元日銀理事、「エコノミスト」3/12号)とみなされているのである。

<<各行横並びの「赤字決算」>>
 ところが、3/27付け各紙朝刊は「大手17行が赤字決算 住専債権を償却」という記事を一斉に大見出しで載せている。まるで銀行が大赤字を出し、住専処理に四苦八苦し、危機に瀕しているかのような印象を与えている。とんでもないまやかしである。実際には、政府・日銀の低金利政策のおかげで、大手21行だけで業務純益が史上最高の5兆円前後に達し、その内部留保額は22兆円を超え、有価証券の含み益は母体行全体で40兆円前後に達していると算定されている。金融不安どころか、余裕たっぷりの経営実態である。
 にもかかわらずなぜ赤字決算なのか。それはこれまで政府・大蔵省と組んでここ数年分延ばし延ばしにしてきた住専処理を、何の努力もなしにただただ低金利政策のおかげで転がり込んできたボロ儲け分で、住専の債権償却に当てて、経理上の数字操作で赤字にしたに過ぎないのである。しかも各行横並びの赤字決算は、明らかに意図的であり、大蔵官僚との事前協議、談合を示唆しており、赤字決算で法人税をゼロにするばかりか、今回いったん有税償却した住専向け債権も、政府の処理策に従って債権放棄したり、貸し倒れが確定した分については経費として損金参入できる無税扱いに切り替え、納税額をさらに減少させることが見込まれているのである。

<<ターゲットの移行>>
 新進党が住専問題では母体行責任をできるだけそらしたばかりか、橋本首相の秘書を通じた住専の大口借り手である桃源社からの政治献金問題までいつのまにかうやむやにされ、住専問題追及のターゲットを社民党・さきがけと連携する加藤幹事長の金銭疑惑に移行させたことは、その政治的意図が無視できないものといえよう。
 さらに無視できないのは、橋本首相のミドリ十字、エイズ疑惑との関連である。エイズ殺人企業として告訴されているミドリ十字などから、橋本首相は厚生族のドンとして、密接な関係を維持し、巨額献金を受け取ってきたことは隠れもない事実である。78年、42歳で厚生大臣に就任以来、ミドリ十字がスポンサーの日本薬業政治連盟から巨額の献金を受け、問題のエイズ疑惑当時、医療基本問題調査会の会長の職にあり、一連の疑惑、薬品業界と政治家、厚生省の癒着に深くかかわっていた、その中心人物であった可能性も否定しきれない事態である。
 それが自・社・さ連合政権の登場で菅厚生大臣が誕生し、このエイズ疑惑について厚生省の重大な証拠隠しを明らかにし、その責任を追及し、情報を公開しようとしている。最もびくびくとし、恐れているのは首相自身かも知れない。ここでも新進党の追及は無きに等しい。

<<保保連合への布石?>>
 折しも、3/19に橋本首相と小沢新進党党首とのトップ会談が行われ、「日切れ法案と暫定予算について話し合った」というが、小沢氏が「朝鮮半島の危機はわが国に直結する。中台問題などは日米関係の再構築で対処すべきだ」と述べたことに応じて、橋本氏は「まったく同感。そうした国益にかかわる問題は随時話し合いたい」と意気投合。「万一の場合は、与野党を超えて安全のためにやらねばならない」との考えで一致したという。沖縄の基地問題、集団的自衛権をめぐる論議をテコに自民党と新進党で「救国内閣」を作る案まで浮上しているという。保保連合、第二次保守合同への布石かと問題にされ、ポスト橋本は中山太郎、その後は梶山にバトンタッチ、アンカーは小沢で保保連合を完成させるといったまことしやかな構想が、自民および新進の旧田中・竹下派を軸にかけめぐり、自民、新進双方の物議をかもしている。いずれも現在の自・社・さ政権からの脱却と保守連合に利益を見い出す部分の危険な動きといえよう。
 腐敗政治、密室談合政治の復活と軍拡タカ派の台頭が保保連合を通じて浮上する可能性がありうるだけに、そうした歴史的な逆行はもはや許されないばかりか、基盤もないことを断固として明示する政治勢力の結集が求められているといえよう。
(生駒 敬)