ASSERT 229号(1996年12月14日)
【投稿】 腐敗の泥沼と橋本政権
【投稿】 「雑感〜96年滑り込みセーフ!」
【投稿】  総選挙討論を読み返して
【投稿】  侵略の事実は消せない
【書評】 『スターリン主義科学哲学の成立』
【投稿】 新しい博物館−琵琶湖博物館を訪ねて

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(投稿) 腐敗の泥沼と橋本政権
  ----徹底した情報公開制の確立を----

<<お手盛り汚職コネクション>>
 このところ連日報道される厚生省をめぐる汚職と腐敗の実態には、怒りを通り越してただただあきれるばかりであるが、その中には現代日本の政治構造全体が抱えている基本的で不可避的な問題点がさらけ出されているとも言える。
 事件の発端は、特別擁護老人ホームの建設をめぐって起きている。この特別擁護老人ホームを作る場合、その建設基準額の1/2が国の補助、1/4が都道府県負担、さらにこれにプラス、各都道府県の単独補助、埼玉県の場合、3/16の特別補助がつく。
こうして約6%の自己負担のみ、それも社会福祉・医療事業団からの低利融資、共同募金会からの寄付金、日本財団からの補助など、手厚い資金調達策が講じられ、自己資金ゼロで、いわば政官財のお手盛り汚職コネクションさえあれば、社会福祉と無関係なこうした悪徳福祉財団が堂々とまかり通ることが可能な体制が形成されていたのである。
しかもできてからも、入所者個々に対しても補助金が出るから、経営面でも至れりつくせりである。ここに巨大な利権構造が出来上がるのは当然といえよう。今回の彩福祉グループの小山容疑者の場合、わずか3年間で6件の申請をし、すべてフリーパスで合計36億円の補助金を獲得している。そのうま味に味をしめて全国規模でさらに大々的に拡大し、事業展開を厚生省きもいりで推し進めていたさなかにその構造的汚職が露呈されたわけである。

<<ゴールド(金権)プラン>>
 事件は業者が官僚を買収、たらし込んだのではなく、官僚自身が初めから意のままに動かせる「福祉財団」、いわば贈賄屋を丹精込めて育て上げてきたことを明らかにしている。「ゴールドプラン」に名を借りて、自らのカイライを通じて丸投げ工事の不正資金を還流させ、天下り先を拡大させ、自民党最大派閥の旧経世会に取り入り、多くの政治家を抱き込み、先の衆院選には直接の部下を立候補させ、岡光次官自身さえ広島県知事選に出るつもりであったという。
 こうしたことを可能にさせ、福祉をこれだけ不正な金儲けの手段に出来たのは、今や厚生省が一つの巨大な経済官庁として君臨していることと密接な関係がある。96年度の一般会計予算総額75兆1049億円を省庁別でみると、1位が大蔵省19兆円、2位が厚生省の14兆3778億円である。予算の費目別でみても、国債費を除くと社会保障関係費が14兆2879億円でトップを占め、厚生省の所管である。さらに特別会計で、厚生保険の56兆円、国民年金の21兆円がこれまた厚生省所管である。
 そして、厚生官僚bPの岡光次官、bQの和田審議官、この二人の汚職は90年から始まった高齢者福祉事業「ゴールドプラン」10ヶ年計画をめぐって大規模化し、95年からレベルアップした新ゴールドプランでは、特別擁護老人ホームを2000年までに29万床作るという目標、ここに9兆円に及ぶ補助金がつぎ込まれることを利用して、さらなる汚職・腐敗・金権事業のゴールドプランに乗り出していたわけである。
 こうして本来国民的課題として避けて通れなくなってきた高齢者医療・福祉事業の根幹にかかわるゴールドプランやさらには介護保険政策が、厚生省や族議員、それに群がる企業が一体となった汚職腐敗体制の権益拡張策そのものの付属物に落とし入れられようとしているのである。

<<首相「どうして問題あるの?」>>
 彩福祉グループからさらに明らかになったことは、日本病院寝具協会と日本医療食協会がそれぞれ政治連盟を政治献金団体として作り、橋本首相はもちろん、小泉厚相など、判明しているだけで17人の厚生族議員に大量の政治献金をばらまいていたことである。 日本病院寝具協会は、厚生省通達によって病院寝具リースを独占してきたのであるが、小泉厚相自身が、厚相就任直前まで会長であったという事実、その歴代事務局長も厚生省OBであり、小泉氏はここから350万円の献金を受け、橋本首相も750万円受け取っている。そして、この協会の理事長が問題の彩福祉グループのJWM社(工事丸投げで、補助金から26億円ものピンハネ)の取締役である。さらに、「日本医療食協会」についていえば、これまた理事長が厚生省OBであるが、その年収が総理大臣よりも多い5000万円も懐にいれ、特定の会社しか参入できないようにして、これと独占的に医療食を供給していた日清医療食品の社長が日本寝具協会の理事長でもある。制度発足から今年4月まで、1千数百億円にも上る公金が健康保険財政から支出されていたのである。
 事件を受けて、小泉厚相は、職務上の利害関係人や団体との関係について、会食やゴルフ、旅行、中元や歳暮の授受などを禁止する綱紀粛正策を発表したが、自らのあやしげな政治献金については、「適正に処理されている政治献金があたかも不正であるかのようにいわれるのは、はなはだ迷惑だ」と居直る始末である。
 これは、橋本首相も同様であり、「正式に政治資金として受け入れて届け出ている」「どうして問題あるの」「僕はどうしてそういうふうに聞かれるのか分からない」と言ってのけた(11/21記者会見)。届けてあればすべて良し、というこの破廉恥極まる態度は、「身を焼き尽くしても行革をやり抜く」と決意を表明した同一人物から出ており、彼の言う「行革」もすでに底が割れているとも言えよう。

<<梶山「茶谷の言うことには、私が全責任」>>
 問題は橋本首相自身が典型的な「反行革」の族議員なのである。元厚相、さらには元蔵相として、医療・福祉・製薬関係の団体から多額の献金を受けている厚生族のドンである。だからこそ、茶谷・前厚生省課長補佐が岡光次官の強い勧めで、10月の総選挙に埼玉6区と比例区関東ブロックに自民党公認で立候補した際には、自民党の「重点候補」に指定され、橋本首相自身が応援に駆けつけ、加藤幹事長も街頭に立ち、梶山官房長官などは「茶谷の言うことには、私が全責任を持つ」と訴えたのであった。彩福祉グループから2000万円の選挙資金が提供され、医療・福祉・衛生関係諸団体から巨額の政治献金が組織され、小渕派と厚生省一体のぐるみ選挙によって、今年8月厚生省を退職して準備機関が短かったにもかかわらず、8000票差にまで迫ったのである。こうして今回の衆院選で自民党内に最大派閥を形成したのは、もっとも族議員の多い、旧経世会の集団で、衆参合わせて88人に膨れ上がっている。首相自身は、「自民党として公認し、私自身応援に行ったことをお詫びするとともに、自分の不明を恥じている」と述べているが、茶谷氏が当選していれば、今回の事件も闇に葬られていたであろうことは間違いない。
 今や自民党単独内閣の復活に気を強くして、加藤幹事長などは「熱心に自民党を応援してくれたところの声が予算編成に反映されるのも当然」(11/27、記者会見)と言い出す始末である。党利党略で予算配分をしようとする露骨な姿勢、族議員と官僚どもの汚職腐敗構造をよりいっそう拡大させようとするこうした姿勢は、自らも掲げていた行革そのものに反する姿勢であり、それが単にお茶を濁す程度のものであることを自己暴露しているともいえよう。

<<ふがいない野党の対応>>
 こうした事態に対する野党の対応が全くなっていないことは情けない限りである。格好の追及材料を前にしながら、新進党は小沢党首が直前になって代表質問をとりやめ(「(選挙戦に掲げた公約が)どういう形で決まったのかと言う議論や、このことは自分は賛成できないとかの議論が党内にあると報道される状況では、自信をもって代表演説しようがない」となんとも気の抜けた釈明)、質問に立った西岡幹事長は「質問に先立ち、わが党に所属していた友部参院議員が「オレンジ共済」問題で強制捜査を受け、多くの方々にご迷惑をかけ・・・」と陳謝から始めざるを得ず、細川氏に至っては裏金提供問題で雲隠れである。
 鳩山・民主党代表は質問の冒頭から「まずは、第二次橋本内閣の発足につきましてお祝い申し上げます」と、「緊張関係」も忘れたようなのんびりムード。社民党も、土井党首が代表質問に立つことを決めていたにもかかわらず、直前に村山元首相に、その村山氏も「首相をやめた私がやることもない」と辞退、たらい回しされた伊藤幹事長は「第二次橋本内閣の与党として協力することといたしました」と、これまた対決姿勢ゼロ、自民党に軽くみられるのも当然といった事態である。
 自民党としては、わざわざ連立政権を提案したにもかかわらず、社民党、民主党が「野党になりたい」などと言って閣外に去ってくれたおかげで、連立政権時代の緊張関係も考慮することなく、ポーズだけは協力関係を誇示しながら、実際は自民党単独内閣の権益独占を謳歌しようとしており、野党は今のところなすすべもなく傍観しているといったていたらくである。

<<証拠は「作らず、残さず、手渡さず」>>
 首相直属の機関「行政改革会議」が設置され、経団連を始め各界から13人が名を連ねている。首相は、委員には官僚OBを入れなかったと胸を張っているが、行革会議の事務局には、12の省から一人ずつの代表が加わり、事務局をやはり官僚が握っているのである。1年後に報告をもらうというが、報告をもらうまでの1年間は野放し状態であり、その間に行政改革どころか、自民党と官僚、財界の癒着構造がより巧妙により複雑怪奇になる危険性が高まっているとも言えよう。官官接待一つをとっても、全国の自治体が中央官庁官僚を初めとした官官接待に使っている金が1000億円を超えるというすさまじさであるが、文書偽造やカラ出張、カラ接待等の操作で献金、買収資金をプールしている。これはいっそう巧妙さを増し、あらゆる分野で官僚や政治家、財界・企業が一体となった、証拠は「作らず、残さず、手渡さず」がさらに進行しようとしている。
 こうした事態に対して、共産党は別として、唯一鋭く政府の姿勢を追及したのは民主党の家西氏(大阪HIV訴訟前原告団代表)であろうか。氏は「薬害エイズで何人の貴い命が奪われているかご存知ですか」と追及して、小泉厚相が答えられず、厚生省保険医療局長が答弁、「私は厚相にお答えいただきたいと言ったのです」と切り返している。家西氏の言うように「国民に背を向け、企業に顔を向けていた人達が、役所のトップにいる。そういう人がトップにいる官僚機構の構造を壊さなければ行革などありえない」、正にその通りである。
 巨大な行政権限と予算配分権が同居し、行政決定の過程が公開されず、国民の監視体制を拒否している限り、汚職が起こらない方がむしろ不思議なのであり、しかも一党の政治独占体制の下で公共事業の配分や許認可をめぐる政治家と官僚、企業の癒着構造が日常化するのはある意味で当然とも言えよう。ソ連を初めとする社会主義崩壊の重要な教訓の一つでもある。
 当面、事件の背後に横たわる真相の徹底的な解明はもとより、官僚が接待や就任祝いを受けること、中元や歳暮の授受などを全面的に禁止する法律、さらには企業献金の即時禁止が必要であろう。しかしより根本的には、行政の徹底的な透明化、行政決定の過程、プロセスを全てオープンにし、国民が行政を監視できる民主的システム、徹底的な情報公開制度の早急な確立こそが行政改革の最大の柱でなければならないのではないだろうか。
(生駒 敬)