ASSERT 236号(1997年7月19日)
【投稿】 シラケを通り越し失望感漂う都議会選挙
【投稿】 都議選と直接民主主義
【投稿】
不安がよぎる民主・リベラルの未来
【書評】 
フィリップ・カー『殺人探究』

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(投稿) シラケを通り越し失望感漂う都議会選挙

 7月6日に行われた都議選は、過去最低の投票率40.8%となり、自民、共産、公明という手厚い組織票に支えられた政党の順当勝ちとなった(別表参照)。各政党の概観はおよそ次のようなものである。
 共産は「オール与党批判」「シルバーパス存続」を熱心に訴え、過去最高の26議席を獲得、都議会第2党になったことで都議会運営も今後ますます難しくなる事態となった。「オール与党批判」がこの間の一連の選挙で証明されるとおり人々に受け入れられたことは疑いない。42選挙区中6選挙区でトップ当選、二人を擁立した大田区、世田谷区ではともに2議席獲得、二人区の文京区、日野市では40%近い得票率を得て圧勝している。しかし、肝心の自民投票を減らしていないこと、「シルバーパス」問題での公明との舌戦にもかかわらず公明票も減らせなかったこと、そして6割に迫る選挙棄権者を考えると、共産党自体の選挙運動の成果といえるものははなはだ望みが薄いものとなる。
 この点では、自民党は以前の衆議院選から着々と都議選、そして来年の参院選への準備を進めており、地元密着型での必勝態勢をより固めつつある。我が地元では自民党が商店街の目抜き通に選挙本部を大きく構え、有権者に目に見える形で訴え、他の政党に比べてもいつになく目立つ存在となっている。
 改革を標榜する新進や民主党が後退したことは特徴的である。新進は議席ゼロへ転落し、民主党は1議席へらし12議席。改革を標榜するこれら政党の国政レベルでのイメージがいっそう悪くなっていることが要因だ。新進は「保保」連合や身内の離党騒ぎなど、「公明」がなければ基盤がなにもないこともあからさまとなった。民主党はまるで何をしているのか判らない政党だ。「市民主義」をいいながら実態は、地元に足がないことは明白だ。
 国政レベルでの閉塞した政治状況、政財官の腐敗した状況など、不信感はよどみをうって世間に蔓延してきている。少なくとも選挙に行こうという良識的な人々が「このままではイカン」と共産党へ票を投ずるといった図式だろう。それにしても投票率40%とというのは低すぎる。選挙そのものが無効といえるぐらいだ。これは自民党の思うつぼであろう。

政界再編の新スタートは何か?

 政界再編の「新スタート」のはずだった都議選は、先の総選挙から8ヶ月を経てなお再編の兆しも、政治的焦点や関心の高まりもなく閉塞状況にある。先の国会では重要法案が目白押しに採択されているが、「選挙民」にとってはまだまだ時代の変化の兆しが目に見えてきていないようである。
 第一に政党の責任が大きい。総選挙後から通常国会を通じて自民党の「保保」か「自社さ」かという抗争が明らかになり、再編側もこれに組した格好で「永田町」の政治ゲームが展開された。こうしたなかで離党騒ぎや政党内のゴタゴタがつづき、何を目指すべきなのか一層不明確になった。「政界再編」「改革」を期待させておいておきながら、どう何をすべきなのかいっこうにわからない、そして今度はどこの政党に鞍替えしたという……。これではみんなに判るのは自民党と共産党ぐらいだろう。
新進党は「保保」連合で自民党内に揺さぶりをかけたが、小沢氏の独断専行が結局新進党内の離党騒ぎとなった。もともと国政選挙でも自民党に対する野党的第2党という位置づけがあって存在意味があったものが、与党となると社民党以上に自己区別がなくなりかねない。都議選はそのいい例だ。深刻な財政再建途上にある都議会にとっても、何をどうすべきなのか、行政的一律的な福祉施策の切り捨てはドンドン進行しているが、肝心の行革や臨海開発問題はどうかたをつけるつもりなのかなど、有権者にきちんと説明する政党は皆無である。まずは政党がきちんと21世紀に続く未来を具体的に展開できるようエリをたださなくてはならない。
 もうひとつはいっこうに進まない行革批判である。自民党政権の掲げる6大改革(安保も含めれば7大改革だろう)がなし崩し的に進行しているが、一方では行革にたいする不満感も日増しに強くなっている。経済のグローバル化と激烈な世界市場競争の中で日本市場だけが遅れた閉鎖的な市場であり続けることはできない。まず橋本政権としても一刻の猶予も許されない改革だけに経済構造改革を断行し、金融・財政構造改革(ビッグ・バン)、そして少子高齢社会へのレールを引かなければならない。
中央レベルは政策立案、そして地方は実施機関として様々な法案改正が行われてきているが、行革の本格的な勝負はこれからである。地方分権をはじめこれらの改革の道筋はまだまだ不透明な部分も多く、政策的な選択もその内容がどうあるべきかという点できちんと論戦を展開すべきだろう。行革一般論だけでなく具体的に進行している中身をそれぞれ点検していかなければいけない。(東京:R.I)

党派別当選者 ( )内は前回
自 民 54(38)
共 産 26(13)
公 明 24(25)
民 主 12(13)
社 民 1( 4)
新 進 0( 4)
太 陽 0( 0)
新社会 0( 0)
諸 派 2( 3)
無所属 8(15)
 計128

(投稿) 都議選と直接民主主義

<<危機的状況の投票率>>
 7/6、投票・開票が行われた東京都議選は、政治が有権者から完全に見放されていることをあらためて浮き彫りにしたともいえよう。今回の都議選は、政界の再再編、今後の政局の動向を占うものとして、各党は国政選挙並みの全力投入をし、総力戦を展開したにもかかわらず、有権者の反応は鈍く、40.8%という史上最低の投票率で、60%近い人々が棄権をし、現実に展開されている政治に嫌悪感を示し、投票行動そのもののむなしさから投票場に足を運ぶことすら拒否して、そっぽを向いてしまったのである。
 こうした事態は何も東京に限らず、今年前半の知事選、市区長選挙の実に半数(34件)が過去最低の投票率を記録していることからも明らかであり、ここ数年、いや相当以前からの一貫した趨勢であるともいえる。今回の都議選の最大の争点が、高齢者向けの無料パスである「シルバーパス」を廃止するのかどうかという点に絞られてしまったことに象徴的であるように、地方自治体の議会選挙は、身近に生活に直結する選挙であるにもかかわらずこの事態である。その意味では代議制民主主義としての議会制民主主義が、もはや危機的状況にあり、形骸化していることを如実に示しているともいえよう。
 国政の総与党化が地方にも進み、あるいは地方のほうが総与党化では先行していた結果として、本来あるべき政治的対決軸がぼやかされ、選択の幅が狭くなり、基礎票を確保し、組織力を動員できる自民、公明、共産が低い投票率と棄権層の増大の中でほくそえむという構図が繰り返されているわけである。

<<無力感の拡散役者>>
 自民党の16議席増と共産党の13議席増は、保守の復調という流れと、総与党化への反発の表われともいえよう。しかしこの自民党の「復調」も議席数だけのことであり、実態は得票数、率とも前回より下回っており、いよいよ得票率30%割れ寸前の事態である。それを補ったのが新進、社民両党の完全な惨敗である。新進の保保路線への疑惑と動揺、離党者の続発が自民を助け、社民の混迷と与党埋没路線が、これまでの社会党支持層の多くを共産支持に回らせたことは間違いない。
 新党ブームの火付け役であり、自民単独政権の崩壊をもたらし、連合政権時代への幕開けを切り開いたかに見えた細川氏が、もはや展望を見出し得ないとして新進党を離党したのが都議選半月前の6/18である。細川氏は「総与党化が進んでいるし、与野党を問わず族議員が跋扈し、…私も確たる展望があるわけではない」などといった無責任さをさらけ出し、無力感を漂わせた記者会見であった。細川氏に放り出された新進党は、「これで党はすっきりする。日米防衛協力のガイドライン見直しや行政改革を機に新進党を含めた大連合政権を作る」と保保路線への純化を一層推し進め、小沢党首に至っては自らテレビ番組(6/15)で、自民党の梶山、中曽根、亀井各氏を自らと同じ「改革派」と称えて媚びを売る始末である。一体彼はなぜ自民党を割って新党形成に動いたのかをもはや説明できなくなっているのである。これでは、有権者はしらける一方である。

    前回(93)・得票率    今回・得票率    増減
--------------------------------------------------------
自民 1,443,783 31.10  1,160,762 30.82   △282,971
社民  603,121 12.99    70,637  1.88    △532,484
新進               70,787  1.88
公明  739,030 15.92   705,816 18.74   △ 33,214
民主               388,928 10.33
共産  626,870 13.51   803,378 21.33  +176,528

<<民主党のポスター>>
 民主党は今回初めての都議選であったが、前回旧日本新党が単独で獲得した56万票にも及ばない得票であったが、菅・鳩山両代表はいずれも「負けた印象はない」とか「まずまずの健闘であった」と逃げの姿勢が前面に出ていることが印象的である。
 民主党のインターネット上のホームページ、以前にも紹介したことのある「民主党に一言!」フォーラムでは、多くの率直で忌憚のない意見が掲載されている。
○「都議選は健闘したとかまずまずといったものではなく、『負けた』と考えてほしい。その上で党の運営を真剣に考えてほしい。党内での真剣な議論とその論議の公開を求めたい。地方議員の選挙を大切にするとともに、首長選挙では安易な相乗りをしないでほしい。特に現職に相乗りすることは現状を肯定することだと考えてほしい。」
○「残念ながら私が応援した方は落選し、民主党全体も振るわなかったようですが、無理もないと思います。…民主党にも責任がないわけではありません。今回共産党が躍進したのは、政治そのものがわかりにくくなっている現状に、都民が諦めを感じているからです。『二人代表制』と『建設的野党』だけは誰がなんと言おうと貫いていただきたい。今や、旧来型の政党と同じであってはならないのです」
○「今回の選挙で菅代表は『新党に対してもう風が吹かない』とおっしゃていたようですが、国民には整備新幹線等の問題賛成や従来の体質を引きずっている労働組合の主張に引きずられている姿が民主党が『本当の新党になりきれない』ということから共産党支持に回ったと考えられないでしょうか。都民の多くは共産党に対する疑問を感じつつも強力なリーダーシップで自民党や労働組合と安易な妥協せずに筋の通った政策で勝負することが民主党にはできないと感じておられるのではないでしょうか。
私は民主党員としてあえて強力なリーダーシップを執行部に求めます。」
○「都議選の民主党のポスターには大笑いさせてもらいました。なんで、諫早湾なんでしょう。公共事業の問題を言うのなら、臨海部開発とか、日の出のゴミ処分場とか、いってくれればいいのに、なぜか触れない。それもそのはず、民主党の現職都議議員のある方は、都議会で『臨海開発もっとやれ』と言っていたくらいですから。…誤解してもらっては困りますが、私は諫早湾の問題も長良川の問題も大変重要な問題と考えていますよ。」

<<『共産党以外は、すべて保守』>>
 元衆院議長でもちろん自民党の幹部、閣僚を何度も経験してきた田村元氏が6/25付けの共産党の機関紙・赤旗の一面に大きく登場したことは、その話題性からも一般紙でも取り上げられたところである。その中で田村氏はみずからの責任を横に置く限りは、実に的確な指摘をしている。
○「保保連合と言うのは全盛を極めた当時の自民党よりもでかい保守党を作ろうと言うことです。特に憲法改正とか防衛問題を中心テーマに保保連合ができるとしたら、これは非常に憂うべきことです。一党独裁的な政治はとるべきでない。」
○「ほかの政党へ眼を向ければおよそ政党の体をなしていない。新進党は最たるものでしょう。何を言っているんだか政界に通じる私でもさっぱり分からない。しかもボロボロ欠けていく。まず自分の政党をまとめなきゃいけないのが、この政党の現状です。」
○「民主党は、すっきりした主義主張が見られません。政策よりも『菅さま、鳩山さま』と、その人気にあやかりたい選挙対策のためだけの政党のような感じがしてならないです。」
○「米軍用地特措法は、何とはなしに節のない竹のような形で9割の賛成で通ってしまった。日本の主権に関わる重い法案です。それをろくすっぽ論議しないで通してしまった。議論なき国会というのは国民をないがしろにすることです。この政治の有り様がこわい。」
○「日本共産党という存在は、野党らしい真の野党という点で、日本の混迷する議会の中にある一服の清涼剤のように思えるのです。」
○「与党か野党かわけがわからない政党や党内の喧嘩で右往左往している政党ばかりで、共産党以外の政党はすべて、これ保守。」

<<ブレーキ役の意味するところ>>
 問題は、「共産党以外の党は、すべて保守」であるとすれば、保守の圧倒的強さであり、共産党は「一服の清涼剤」にしかすぎない事態の深刻さであろう。このことは一面の核心を突くものではあるが、決して事態の全面的で多様な本質を突くものではないことに注意を喚起すべきではないだろうか。まさにそのことが史上最低の投票率ともなって表れているのである。
 7/13付けの赤旗日曜版でノンフィクション作家の吉永みち子氏は「今回は、野党なき政治状況の日本の特殊事情から共産党が伸びるとは思っていましたが、都議会第二党までいくとは予想以上でした。間違っても共産党が与党になることだけはないという安心感ともいえます。とにかくブレーキになってくれるところとして共産党に入れた」と、実に本質的なところを指摘している。これを「いよいよ本格的な自共対決の時代」の到来などと喜び、これまでの独善主義的なセクト主義的排除路線を合理化していたのでは、与党など夢まぼろし、政治不信と最低の投票率の中でしか存在価値を見出し得ない、共産党もまた擦り減ったブレーキ役にしか過ぎない事態を迎えることは必定といえよう。
 問題の核心は、政治不信が広がり、さまざまなレベルの選挙で投票率が低下しているにもかかわらず、必ずしも有権者が政治や行政にまったく無関心になっているわけではないというところにある。米軍基地の整理縮小や地位協定見直しの賛否を問う沖縄の県民投票、原発建設の是非についての新潟県巻町の住民投票、岐阜県御嵩町の産業廃棄物処分場をめぐる住民投票、等々、さらにはダムや河口堰、干拓、高速道路やスーパー林道、ゴミ処理からリサイクル、オゾン処理から環境政策、介護から高齢者福祉政策、障害者福祉からノーマライゼーション等々をめぐって、市民の政治参加の欲求は、広範囲に具体的でむしろ質的にも高くなっていることに注目すべきであろう。その投票率は、巻町で88.3%、御嵩町で87.5%、と格段の高さである。

<<一問が持つ影響力の大きさ>>
 「政治がわれわれ住民の期待にこたえてくれない」のであれば、自分たちに関わる大事なことは自分たちで決めようという直接民主主義が確実に広がっており、それが住民投票要求となって表れているといえよう。
 この動きにさらに注目される住民投票が提起されている。米軍普天間基地返還の台替えとして、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沖にヘリポート基地建設が狙われ、名護市長が事前調査受け入れを表明したことにより、現在政府によって、基地建設に向けた調査活動が行われ、年内にも結論を出そうとしている。こうした中で、「ヘリポート基地建設の是非を問う名護市民投票推進協議会」が6月6日、1300人の参加で設立され、7/8、この推進協に名護市当局が請求代表者証明書を交付、告示したことによって、法定1ヶ月以内の署名活動がスタートすることとなったのである。署名活動の期限は、7/9から8/8までの1ヶ月間である。有権者の50分の1以上の署名を集めることと市議会の議案通過が住民投票の成否の鍵を握る。
 名護市の有権者数は約38000人、その50分の1は約760人以上となる。この有効署名を市選管が審査、効力を決定すると、市長に条例制定請求が行われ、議会に条例案が提起される。市議会の構成は、投票推進派の11人に対して、否定派が17人と条例案の議会通過は厳しい状況である。推進協では、有権者の3分の1に当たる1万3千人以上の署名数を目標にしている。推進協では、実際に住民投票を行う時期を今年の12月に目標設定しているが、この12月は政府が海上基地建設の実施計画を策定する時期でもある。時をおかずに地元としての意思を明確に表したいと言うものである。
 沖縄県側は海上ヘリポート問題で「いろいろなケースが考えられ、具体的に発生してこないと考えられない」とし、大田知事も「何をもって地元の合意と見たらいいのか」について判断基準を示し得ず、「正直言ってお手上げの状態を感じる」と真情を吐露している。
 基地縮小から地位協定の改定などを求めた一昨年の沖縄県民投票から、今回は「あなたは米軍の海上基地建設に対して賛成ですか、反対ですか」という具体的な一問だけであり、ここにすべてが集約されている。7/10の琉球新報社説が言うように「この一問が持つ影響は計り知れないほど広く大きい。」といえよう。
(生駒 敬)