アサート 242号(1998年1月24日)
映画紹介】 「女盗賊プーラン」
 1980年代初頭、インド北部を中心とした地域を群盗を引き連れ、荒らしまわり、ヒンドゥー教における復讐と破壊の女神・ドゥルガの生まれ変わりと人々から畏れられ、また当時の首相インディラ・ガンジーをして「最凶悪犯」と言わしめた義賊の女首領プーラン・デヴィ。この女性、プーランの獄中取材記[INDIA’S BANDIT QUEEN]をもとに、1994年に製作され、インドをはじめ世界各国で上映、「話題を独占した注目作」である。(大阪は、シネ・ヌーヴォにて上映中、1/23まで)
 インド北部の小さな村で低層カーストの娘として生まれたプーランは、11歳で中年男のもとに嫁がされる。重労働と、そして何より性行為を強制するその男に耐え切れず、婚家を飛び出すプーラン。しかし低層カーストの出戻り女を待っていたものは、村八分、レイプ、盗みの濡れ衣といったありとあらゆる虐待であった。
 繰り返し繰り返し加えられる暴力。おかしいことはおかしいと言い、不正に怒り、気丈さを持ち続けるプーランが目障りだった村の有力者は、彼女を盗賊団に誘拐させる。彼らとともに暮らすうちに、同じカーストの首領ヴィクラムと愛し合うようになったプーランは、彼に盗賊としての手ほどきを受け、ついに盗賊の女王と謳われるようになる。
 しかし盗賊の間にまで根を張った差別の現実、上層カーストの盗賊の卑劣な裏切りにより最愛の人ヴィクラムは虐殺され、彼女自身もその盗賊の勢力下にあるビーマイ村に拉致され、集団レイプされる。底知れぬ悲しみと煮え滾る怒りに突き動かされるように、自らの盗賊を率いて、貧しき人々に味方する義賊として立ち上がるプーラン。1983年、政府と警察との司法取引に応じて投降するが、彼女の姿を見ようと多くの人々が各地から駆けつけてくる。ライフル銃をうやうやしく差し出すプーラン・デヴィに人々から喝采とともに声が上がる。”プーラン・デヴィ万歳!”心が熱くなる場面だ。
 目の前でわが娘がレイプされていても、救うことはおろか、抗議の言葉すらはさめず、”タークル階層”に頭を下げることしかできない父親。唯一母親だけが持ち前の気丈さで守ろうとしてくれるが、ヒンドゥ社会では「犬以下」の扱いを受ける女の身では、限りがあった。
 今からたった14〜15年前の出来事とは思えないほど、悲惨で残忍なシーンが目に焼き付いた。低カーストの女に生まれついたばかりに、次々と襲ってくる不幸。しかしプーランは自らの力で「人間」を取り戻していく。私は、そのプーランのすごさに心を強く動かされ、闘いに明け暮れる彼女の半生をつづった自伝『女盗賊プーラン』(草思社、1997年)を一気に読んだ。この作品は、日本で65万部を超えるベストセラーとなったので、ご存知の方も多いだろうと思う。
 出所後、インド社会党から出馬を要請され、国会議員となったプーランは、今、「ビーマイ事件」を始め57件の容疑によって、最高裁から身柄拘束状が出され、弁護士を通じて現在も抗戦中であると聞く。晴れて「自由」の身になれることを、心から祈りたい。
(大阪 田中 雅恵) 

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