ASSERT 261号(1999年8月21日)
【投稿】 歴史的転換点となった今国会会期末 
【投稿】 一消費者が大企業東芝を謝罪させる---見えてきたインターネットの力
【本の紹介】 『汚名 いわれなき元党員が、27年の沈黙を破って告発!』
【本の紹介】  住管機構 債権回収の闘いー司法の理念と手法をもってー
【書評】 福田静夫『「いのち」の人間学──社会福祉哲学序説』
【コラム】 ひとりごと

トップページに戻る

投稿】 歴史的転換点となった今国会会期末

<<「政権離脱」の大芝居>>
 今国会会期末、小沢自由党の「政権離脱」をめぐり連日の大騒ぎが展開されたが、周知のような手打ちが行われ、三方一両損で決着。一両を出した小渕は自由、公明を手なずけて笑いが止まらず、一両損して二両せしめた自由、公明も分け前にあずかってよだれを垂らす。こうして自自公政権をめぐる問題点や矛盾はすべて先送りされた。結果として、自自連立は自自公連立の誘い水に過ぎなかったという事態が現出したわけである。
 しかし、落語の大岡裁きなら笑って済ませられるが、この派手な、そして意図的とも言える演出の影で、戦後歴史の転換点ともなる重要な反動的諸法案が次から次へと成立したことは、笑って済ませられることではない。
 会期末の最終日、8/13、小渕・小沢の自自会談が行われ、小渕首相は「今国会で166本の法律等を成立させていただいた。自自連立の大きな成果」であると小沢を褒め上げれば、小沢も調子に乗って「私の30年の経験からも、こんなに重要な法案が、しかも166本も成立したのはまさに初めてのことで、まさに自自連立の成果」と自賛する。
 「こんなに重要な法案」のその筆頭は言うまでもなく、小沢が「その本質は戦争協力法」だと言ってのけたウォー・マニュアル=日米防衛協力のための新指針(ガイドライン)関連諸法である。これは憲法9条の下で曲がりなりにも維持されてきた「国の交戦権は、これを認めない」という不戦の原則を大きく逸脱するものである。小沢はこれに力を得て、今や公然と憲法9条そのものの改憲を前面に打ち出してきた。このガイドライン法に関連して、周辺事態法が自治体の「協力」義務を規定し、地方分権整備法が自治事務について国の代執行の可能性を認め、改正米軍用地特措法が沖縄等の米軍用地強制収容について自治体の権限を剥奪し、首相の直接代行裁決の制度を導入したのも重大である。これまで日米の軍事協力に足かせとなっていたものが、一挙に取り払われたのである。もはや沖縄県や地元自治体の意向など法的には一顧だにする必要がなくなったのである。

<法案成立の先兵>
 さらに、6/28、小渕首相が自自公連立政権構想を正式に表明して以降、「盗聴法案」、「国旗・国歌法案」、「住民基本台帳法改正案」など、これまで法案の成立など念頭にもなく、棚ざらしになっていた諸法案が、急速に法案成立へ向けてあわただしく動き出したのである。いずれも公明が反対、ないしは保留し、法案審議では多くの問題点を指摘し、実際に、鋭い追及を繰り返してきた法案である。
 浜四津・公明党代表代行などは、盗聴法反対の集会にも出席し、「戦前の特高警察や旧ソ連あるいはかつてのドイツの例に見られるように、いったん秘密警察的手段を認めてしまえば、歯止めが効かなくなる」と成立阻止を掲げていたのである。「日の丸・君が代」についても、多くの反対ないしは慎重意見が噴出していたものである。

 しかしこうした公明の中の自自公連立に批判的な勢力に対してすでに可決・成立してしまったという既成事実を突き付け、「公明党大会でガタガタ言う連中を黙らせる」という方針が、自民党・創価学会・公明指導部の間で合意されたのであろう、たちまち適当な見せ掛けの修正と施しが加えられ、公明はすべて賛成へと方針転換するばかりか、一転して法案成立の先兵となった。
 盗聴法については、確かに、法律の規定上は盗聴対象の犯罪を原則として薬物、銃器、集団密航、組織的殺人等に絞り込む形を取ったのであるが、別件盗聴、傍聴判断盗聴、事前盗聴、令状なし・立会人の切断権なしの盗聴がすべて認められている。きっかけとなったオウム真理教などの組織犯罪対象から、宗教団体などが除かれることとなり、これをエサに公明は急遽、賛成に転換。盗聴行為を自ら指揮し、関与したことのある公明・創価学会らしい、汚らしい政治的意図が見え見えの転換である。

<久方ぶりの徹夜・牛歩国会>
 しかもこれらの法案については、衆参両院の所管委員会において、与野党の多くの委員から疑問や批判的意見が数多く出され、むしろ審議が進むに連れて、問題点が拡大、露呈し、それぞれの審議はこれからが本番を迎えるところであった。住民基本台帳法案についても、プライバシーの漏洩はもちろん、利便性どころか膨大な税金の浪費にしかならないことなど法案の欠陥も次から次へと露呈し始めていた。
 しかし、自自公三党は8/13の会期期限切れを目前にして、これまでの委員会審議の経過も合意もいっさい無視して、審議を打ち切り、委員会での採決すら省略して、いきなり本会議での強行採決へと突っ走ったのであった。
 民主党がここに至ってようやく与党側の強行採決という事態に、徹底抗戦を幹部会議で確認。これまでバラバラであった羽田、鳩山系列を含めての結束が、今国会で初めて確立され、それが民主、社民、共産、二院クラブ、無所属議員の結束へと拡大、内閣不信任案の提案、採決にあたり共同で対決していく事態となり、そこで久方ぶりの徹夜国会、牛歩国会が出現することとなった。時すでに遅しではあったが、最後の抵抗も無駄ではない。いかに成果と教訓を引き継ぐかが問われている。
 この過程の中で、田中真紀子衆議院議員は、本会議を退席して組織的犯罪対策法案に賛成できないことを明らかにしている。栗本慎一郎衆院議員は「通信傍受法案は盗聴システムやコンピューターを組み込ませようとするアメリカの通信利権だ。小渕内閣は何の主体性もない。反対する民主党も子どもだましのセレモニーだ」と語って、衆院本会議の採決で自民党の方針に造反して退席し、党を除名されている。

<「玉虫色決着」の脆さ>
 かくして国家管理を強化し、戦後平和憲法の下で築き上げてきた法体制を大幅に改編する策動が頂点を迎えようとしているともいえよう。自由党の小沢党首が「国民総背番号制と盗聴法は治安目的である」と発言し、憲法9条の改正を露骨に表明する事態である。
 唐突に今度は“靖国問題”が持ち出されてきたりする一方で、有事立法が着々と準備されており、憲法改悪もいよいよ日程にのぼせかねない勢いである。
 9/9告示、21日投票の自民党総裁選を前に、小渕首相は“私の後は財政が破たんしていて大変だろう”などと無責任きわまりないことを加藤前幹事長に語っているが、再選には自信満々である。公明・創価学会は「宗教団体と民主主義は相容れない」と発言してきた加藤前幹事長に対して根強い不信感を持っており、今や強力な小渕支援者である。総裁選後の内閣改造では、自自公翼賛政権の発足が予定されており、公明党への論功行賞として、浜四津厚生大臣、冬柴幹事長か草川国体委員長には他の重要閣僚といった案がすでに取り沙汰されている。
 しかしこの自自公翼賛政権はいわば砂上の楼閣である。平和、改憲、福祉、自治、税制、宗教等々どれをとってもそれぞれにバラバラである。どれかが崩れると一挙に崩壊しかねない代物でもある。
 「玉虫色決着」がはかられた定数削減問題はその象徴といえよう。衆院42議席の内、28人が比例区選出の公明にとって、この法案は死活問題であるが、実際に6/23に国会提出された公職選挙法改正案の内容は、全国11ブロックの定数が50削減され、公明の最大の票田である近畿ブロックは現行33が25へ削減される。公明狙い打ちが露骨である。もちろん、自由党にとっても次期総選挙は存亡の危機に直面している。7/7の自由党大会で次期総選挙の公認候補58人を発表したが、その多くが自民党現職のいる選挙区を狙い撃ちしており、さらに3桁の擁立を目指して「選挙協力」に応じないなら、自公の選挙協力も潰す姿勢を表明している。小渕首相は危なっかしい綱渡りをしているのである。
 一方の民主党は、9月2日告示、下旬投票の線で、代表選と党役員人事が行われる予定である。国会最終盤で盛り上がった野党の結束をいかに維持・拡大し、自自公翼賛政権に楔を打ち込むか、そのことが問われているといえよう。
(生駒 敬)