ASSERT 266号(2000年1月20日発行)
【投稿】 重大な岐路の年
【投稿】 MOX燃料の製造データー捏造について
【投稿】 「国民の歴史」を読んで
【コラム】 ひとりごと--大阪府知事選挙に思うこと--

トップページに戻る

【投稿】  重大な岐路の年

<<「悪夢の年明け」>>
 2000年の新年の冒頭は、Y2K=コンピューターの2000年誤作動問題も大きな問題を起こすことなく通過し、祝ミレニアムムード一杯のニューヨーク株式市場が、1/4いきなり急落し、世界市場全体に冷水を浴びせる幕開けとなった。下げ幅は、ダウ平均359.58ドル(3.17%)、終値は1万997.93ドル、87年のブラックマンデー以来、史上4位の大きさであった。ナスダック(米店頭株市場)は、229.46の下げ幅(5.55%)で最悪の急落を記録した。5日付けUSAトゥデイ紙は「1日で6000億ドルが消えた」と報じている。株価の暴落が大々的に報じられる一方で、「パニックは見られず、当然来たるべき時が来た」、「計画的売り市場が展開された」という一見冷静な判断も強調されている。
 この日、「現在の株価は高すぎる領域にあり、株価の修正がある」と警告してきたグリーンスパン連銀議長がクリントン大統領によって再任指名された当日、この日に株価の急落が発生したというのも皮肉なものである。
 ロンドン株式市場も過去最大幅で急落、香港市場も8%の下落、韓国で6.3%の下落、シンガポール、マレーシアも大幅下落、アジア全面安、世界中に衝撃が走ることとなった。これを受けた1/5の東京株式市場も前日比781円安の急落、99/12/30の大納会では情報通信関連株を中心に急騰し、ソニーやソフトバンク株がストップ高となり、1/4の大発会でも景気回復期待感から楽観ムード漂う相場展開であったが、一転NY市場との連鎖で下落、ソニーから、NTTドコモ、富士通、京セラ、松下通信等々、期待・リード株が一斉にストップ安を記録、まさに「悪夢の年明け」となった。

<<「いつバブルが破裂するのか」>>
 4日の株価急落は、これまで予測されていた「売り市場が遂に到来した」との見方が優勢であったが、翌週からはNY株式市場は連日のように、情報・ネットワーク関連を中心に「買い市場」に急転、史上最高値を更新、1/14には1万1722ドルを記録、期待と不安が交錯する乱高下が激しい展開である。東京市場でも1/5の急落以後、3日間のストップ安が続いたが、連休明けからいきなりストップ高、ほとんどまともな売買が成立しない、株価だけが大きく変動し、「誰も買えない、誰も売れない、不安感ばかりが広がる神経質な展開」が続行している。
 さらに各国の中央銀行が2000年問題乗り切り策として実施してきた大量の流動性供与について、市場にだぶつく資金を放置すれば自国通貨の下落とインフレを招来し、吸収すれば危険な株価下落を招きかねないと、その後始末に不安を抱え、もたついている。
 1/10、シンガポールに召集された日米欧・新興市場15カ国・地域の中央銀行特別総裁会議は、「年明け以降不安定な動きを続けている米国の株式市場について、各国・地域の中央銀行が警戒を強めていくこと」で急遽認識を一致させることとなった。
 それらの背景には明らかに、NY市場への急落懸念、警戒感が根強く残っており、米国の株式市場において「いったいいつバブルが破裂するのか」が最大の焦点になっている証左だともいえよう。

<<デイ・トレーディング>>
 しかし、経済統計に反映された米国経済は、相変わらず好景気を維持している。問題は、それが「長期的に維持可能か否か」である。グリーンスパン連銀議長は、GDPが年率3%を超える数字は、これまで繰り返し「維持不能な経済成長率(unsustainable rate of growth)と警告してきたが、99年第4四半期のGDPは年率換算で3.5%と予測されている。
 最近の調査によれば、現在アメリカの全世帯の48%が株式か投資信託の形で株式を保有しているという。その数は1983年の19%から大幅に増加しており、史上最高の水準、89年以降、アメリカの株主の数は50%増の7900万人にまで達し、そのうち46%は、90年以降に初めて株を買った人々だという。
 人々はかつての日本のバブル期と同様、右肩上がりの株価にすべてをゆだね、貯蓄率がマイナスに転じ、それを取り崩し、借金をしてまでもマネーゲームに入れ揚げ、消費拡大に酔いしれ、年末のクリスマス商戦では今注目のDVD再生機が飛ぶように売れたという。デイトレーダー達が急拡大、株価の変動に一気一憂、悲劇と喜劇を交錯させている。高校生までもがデイトレードにのめりこみ、大儲けをするものが現れる一方、ついには9人も射殺する破滅的銃撃犯まで生み出している。
 今アメリカで花盛りの「デイ・トレーディングとは、ほとんどの場合、株を数時間、または数分間持ちながら、1日に何百回も株取引をし、急激な株の変動から利益を得ようとするもの。デイ・トレーディング会社は、高速で利用できるコンピューターで株取引をする場所を投資家たちに提供し、取引ごとに手数料を得る」とワシントン・ポスト紙は解説を加えている。

<<「夢の中」の実態>>
 キンドルバーガーMIT名誉教授は、こうした状況は異常であると指摘し、「米国株は割高だ。どうしてこんなに株が高いのかわからない。人々が夢の中に生きているとしか思えない。…持続可能な状況ではない」と警告を発している(12/23「日経」)。
 マネーゲームの中心地・ウォール街にどっぷりと漬かったニューヨークの状況はその典型である。ウォール街の証券業界は市全体の雇用の4.7%を占めるに過ぎないが、92―97年、ニューヨークが生み出した実質所得(給与・事業者所得)増分の56%を稼ぎ出し、98年の実質所得の50.1%が証券・金融・保険などからであった。所得の源泉が一極化しているのである。99年中にそれが一層進展したことは間違いない。
 その一方、ニューヨークの製造業雇用は、50年代の95万人をピークに減り続け、現在28万人前後、98年だけでも5100人の雇用機会を喪失し、特にアパレル産業がドル高政策やアジア・中米との競争に敗れた影響から、1年間で4600人の雇用を減らしている。玩具、金属加工、雑貨など伝統的な都市型製造業も衰退している。
 逆にバブル期の日本と同様、不動産市場が活況を呈し、1年に60%以上高騰し、町工場を取り壊し、庶民の生活の場が都心からどんどん追い出されている。
 証券業の平均給与は市全産業平均(97年48800$)の3.7倍を超えている一方、小売業労働者の平均給与は製造業の52%、市全産業平均の42%の水準に過ぎない。しかも雇用増とは逆に、小売業の実質平均給与は、92―97年の間で年率0.8%のマイナスであった。ニューヨークのニューメディア産業で働く労働者は、97年秋、およそ5万6千人に増えたが、その42.8%は雇用契約の不安定な臨時雇用や派遣労働者である。市のソフトウェア/IT産業は92―97年に雇用を倍増したが、実質給与は若干のマイナスであった。かくして大企業の経営トップの給料は、74年には標準的な労働者の34倍だったが、最近では200倍を超えている。こうした状況を指摘して、ワシントン・ポスト紙は、「貧富の格差、さらに拡大」という記事の中で、米国人の1%を占める最富裕層の収入は、77年から150%増加、同様に米国人の5分の1を占める裕福層のそれも43%増加している一方、最貧困層は収入が9%減少、5分の3を占める中流階層はわずか8%しか増加していない、ことを明らかにしている。
 不安と期待が入り混じる株式ブームの背景には、明らかにこうしたバブル経済を支えている実態、その横暴で無慈悲な本質、民主的統制の効かない無政府的な様相を露骨に示していると言えよう。

<<「私は世界一の借金王」>>
 一方、日本の小渕首相は、12/12日の松山市のシンポジウムで自嘲気味にこう言ったという。「税金を取らないで公債を発行していたら、世界一の借金王になってしまった。(借金を)600兆円も持っているのは日本の首相しかいない」と。なんという政治感覚のなさ、情勢認識の甘さ、無責任さであろうか。自ら追い込んでしまったどうにもならない国家財政の状況に何らの責任も痛痒も感じることなく、ふざけたおどけた言葉で事態をごまかし、責任ある政策を示すこともできずに、「私は世界一の借金王」などと笑って済ませ、ヘラヘラしている姿、それを許している自自公政権とはいったい何なのであろうか。
 これに対して、加藤紘一前幹事長が1/8日に開かれた地元・山形での後援会で「自自公連立政権の善しあしがテーマになる総選挙をやったら、自民党は大きな打撃を食う」としたうえで、「自自公を解消し、自民党が(他党の協力を得ながら)自分の責任で政治を進めていくことが、日本の政治が筋道を取り戻す道になると思う。だが、おそらく、それはいまの執行部にはできまい」と発言するや、東海村臨界事故をほったらかしにして派閥抗争にのめりこんだ姿勢そのままに、加藤叩きには全力で取り組む小渕の姿が再び浮上してきた。首相の意を受けた野中幹事長代理は激怒して、「私との信頼関係を加藤氏自らが壊していくのか。私の信頼感を白紙に戻さざるを得ない」と絶縁を宣言、「政権政党のなかに、こういう指導者がいることを悲しく思う」と
恫喝、これに続いて森幹事長、村上参議院会長、そして官邸の青木幹雄官房長官までもが「加藤発言は非常に遺憾だ」と、定例会見でわざわざ党内問題に触れる有様である。
 1/16、神戸で開かれた民主党大会は、「新たな政権実現へ多様な連携」を掲げ、自自公政権を打倒し、民主党単独でも政権を「奪る」ことをスローガンに掲げた。今年はその真価がいよいよ問われることとなる。
 今年は、内外ともに、大きな分かれ目の年となることは間違いないと言えよう。
(生駒 敬)