アサート 300号(2002年11月23日)
 【投稿】 自壊の道歩む北朝鮮 by 大阪O
 
9月17日の日朝首脳会談を踏まえ、再開された国交正常化交渉は、予想どうり早くも暗礁に乗り上げている。拉致被害者5名が「帰国」しないことが確実になるや、北朝鮮は「約束が違う」と態度を硬化、テポドンの再発射を示唆したり、安保協議の中止を表明するなど、日本政府に揺さぶりをかけてきている。
北朝鮮は過去、核のカードをちらつかせ、「なにをするかわからない」との瀬戸際外交で 日本がだめならアメリカ、アメリカがだめなら韓国と、巧みに切り抜け、エネルギー、食料援助を獲得してきたが、今回は勝手が違うようだ。
アメリカに対し核兵器開発を認めたことが、とんだ藪蛇になってしまった。ブッシュ政権は、米朝枠組み合意の破壊として、きわめて強硬な態度で臨んでいる。KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)理事会は、アメリカの意向を受け12月以降の重油供給停止を決定、さらには軽水炉建設の中止までを検討している。
金正日総書記はブッシュ大統領を少し甘く見ていたようだ。ブッシュは中間選挙の勝利をバックに、国際社会や米国内の反対をねじ伏せ、何があってもサダム・フセインを葬り去ろうと、着々と対イラク戦争の準備を進めている人間だ。
「なにをするかわからない」という危険度と、実行した場合の破壊力においては、金正日もフセインもブッシュの足下にも及ばない。こうした世界的危険人物が相手では、チンピラが親分にからんでいるようなものであり、さしもの金正日も歯が立たないだろう。
一方、小泉首相も日本の強硬な対北朝鮮世論を背景に、国交正常化は急ぐ必要なしと判断、平壌で金正日と握手したのを忘れたかのように、すっかり落ち着き払っている。統一補欠選挙にも大勝利し、当面北朝鮮カードは用済みということか。こうした対応に北朝鮮が焦れば焦るほど、自ら墓穴を掘り進んでいるというのが現状だ。
日朝国交正常化は東アジアの緊張緩和を促進するものであるが、日本政府は本当にそれを望んでいるのだろうか。冷戦終結後、旧ソ連に変わる仮想敵国は北朝鮮と中国になった。 中国の軍事力は北朝鮮よりは強大であるが、改革開放路線が定着し、国際的地位も高まるにつれ、日本が直接軍事的に対峙する可能性は低い。となれば北朝鮮の「脅威」は日本が軍事力を拡大する格好の口実なのであり、北朝鮮は核兵器はおろか「生物・科学兵器保有国」されてしまっている。
さらには多額の援助をしたところで、新義州の「経済特区」も出だしでつまずくなど、経済情勢がますます悪化していく現状では得るものは少ない。逆に拉致問題で強硬な対応をとり続けていた方が、支持率もアップするし政権運営に有利であることが証明された以上、小泉政権は交渉を長期間、事実上放置するのも厭わないだろう。
こうした膠着状態が続く中で、アメリカの対イラク戦争が始まる可能性が高い。イラクは国連決議と大量破壊兵器査察団の受け入れを決定したが、査察中にもアメリカは難癖をつけ「重大な違反行為」を作りあげるだろう。
北朝鮮は、開戦までに日朝交渉のめどをつけ、アメリカから安全の保証を取り付けたかったに違いないが、目論見は全くはずれてしまった。
問題は追いつめられた北朝鮮が、どうでるかである。アジア各国の対応をみても、もっとも頼りとすべき中国は、江沢民前総書記が「朝鮮半島に核保有国が出現することは望まない」と発言。アジア太平洋経済協力会議(APEC)も先の首脳会議で、核開発放棄を求める特別声明を採択した。さらにロシアも太平洋艦隊が、11月に北朝鮮海軍との合同演習を予定しているものの、チェチェン問題で対テロ国際協調は崩すことはできず、「テロ支援国家」への支援は不可能だ。
このような国際的孤立状態は、確かに1941年の大日本帝国を彷彿とさせるものがある。対米開戦の引き金となった石油の対日禁輸も、KEDOの対応と二重写しになる。しかし、結論からいえば第二の「真珠湾攻撃」は起こらないだろう。12月に重油の供給が止まれば、平壌のような都市でも冬を乗り越えるのは厳しくなるし、加えて一層深刻化する食料不足が襲えば、とても戦争どころの話ではない。
 したがって、北朝鮮は核兵器開発の放棄を表明せざるを得なくなるだろう。ただ、それで当面の窮状は脱したとしても、山積する諸問題の根本的解決の道筋は見えず、危機はますます深化することは疑いない。
今後、ポスト金政権を視野に入れた、「戦後処理策」が関係各国で検討されるという事態が、現実味をおびてきたと言える。 

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