アサート 301号(2002年12月21日)

 【投稿】 民主党の混迷について考える  by 佐野秀夫
 
 民主党が揺れている。9月党首選後の中野幹事長人事での混乱、さらに10月統一補欠選挙敗北後の党内議論、党首責任問題、鳩山代表による自由党との統一会派推進発言と党内反発、そして鳩山辞任から菅新代表選出。そして今、熊谷らによる保守新党・民主党分裂の動きの急展開。内向きで党内混乱の話ばかりだ。
 この政党に今何が起こっているのか。この党の基盤に重大な変化がおきているのか、そして本当に民主的な政権政党に脱皮できるのかどうか、議論は尽きないが、私見を整理してみたい。
 
<小泉政権の登場と民主党の揺れ>
 昨年4月小泉政権が登場した時から「揺れ」が始まったように思う。「自民党を潰す」とパフォーマンスをぶち上げて登場した小泉政権に対して、民主党は曖昧な態度を取った時期があった。小泉VS抵抗勢力というマスコミ図式に抵抗するどころか、改革が進むなら小泉と連携して、という傾向だ。特に小泉の「改革には痛みを伴うが、改革あるのみ」というような「骨太の改革」という打ち出し方に対して。
 しかし、参議院選挙を経て小泉政権が一定長期政権化するなかで、政権との対立軸が一層あいまいになってきた。特殊法人改革・道路公団民営化・郵政の民営化などの「改革」の提起に、民主党から国民への明確なメッセージは薄れた。
 前回の衆議院選挙での、諫早干拓問題などに象徴的な「無駄な公共事業批判」のような民主党の明確なメッセージは薄れてしまった。自民党も表面上は旧来路線に固守することは止めるという表向きの転換を行ったことも手伝った。特に民主党の大きな基盤だった改革を望む大都市周辺の有権者票も、参議院選挙ではかなり小泉自民党に揺り戻した。
 
<政権交代可能な民主リベラル政党>
 一方、小泉政権の表向きの安定化・長期化と共に、自民党に替わる政権、政権交代という民主党に期待していた有権者の流れも、陰りが見え始めた。小渕や森内閣との対比ならば政権交代議論も少しは訴えるものがあったが、腰の引けた対小泉姿勢では、野党第一党とはいえ、迫力が薄れてきたように思える。
 政権交代が現実味を失い、改革の旗を政権側が例え言葉の上だけだとは言え唱え始めた時から、民主党の方向が曖昧に映るようになった。「自民党に替わる」政権の中身の明確化が求められてきたのだ。
 
<鳩山辞任の意味するもの>
 政権交代論の象徴が辞任した鳩山由紀夫だったように思える。旧民主党の結成から鳩山は代表を務めてきた。そして新進党の分裂を経て、新民主党に変わったが鳩山代表は変わらなかった。政権交代との関係で言えば、民主リベラルという看板で旧保守の中の「リベラル」な部分も含めたところが、自民党から離反しつつあった旧保守層の一部に安心感を与え、「政権交代可能」という看板にある種の実現可能性を期待する国民感情に訴えるところがあった。その人物的象徴が、少々頼りないが、鳩山由紀夫ではなかったのか。
 その鳩山氏が舞台から降りた今、民主党のメッセージは何になるのか。小泉と自民党を相手に、新しいイメージを国民に与えることが課題になる。
 菅代表のイメージは、HIV問題に象徴的な霞ヶ関官僚主導政治への徹底的な批判であろうか。こうした国民のイメージを考慮した菅代表誕生だったのだろうが、余りに安易すぎる面も強い。鳩山が現状維持的だがリベラルな層へのメッセージを内包していた点からすれば、党内のバランスに微妙な不安感を生み出しているのではないか。
 
<政党助成金ねらいの保守新党>
 一方連立与党内でも次期衆議院選挙に対応する動きが出て来た。支持率0%政党・保守党の揺れだ。野田党首が自民党に復帰との報道もあり、保守党そのものの前途が全く見えていない。そこに、菅代表誕生に危機感を抱いた民主党内グループが接近し、政党助成金の確保を狙った保守新党の動きが出て来た。これは鳩山退場の一つの結末だとも言えるのではないか。残念ながらこの動きは自民党復帰が狙いだということは目に見えている。自民党吸収への序曲でしかありえない。
 先の統一補選の結果、自民党は衆議院で単独過半数を回復している。別に公明党との連立を続ける必要はないはずである。最近の公明党のスタンスも、ややチェック機能に軸足を移しつつあるようにも取れるが、念願の大臣枠を確保した以上、与党枠組みに変化は生じないだろう。それよりも、自民党内の反小泉グループの動きの方が政権の不安定要因になる。

<超タカ派政権との対決を>
 今回のイージス艦の急遽の参戦を推し進めたのは、先の内閣改造で防衛庁長官となった石破だ。従来からミサイル防衛の主張を隠しもせず、北朝鮮拉致議連でも極右的主張を繰り返した男だ。そして同様に安倍官房副長官の起用など、小泉政権は外交・防衛分野にタカ派を意図的に配置し、アメリカの無謀で独善的な戦争政策への協力を推し進めようとしている。
 経済・金融政策、外交・防衛政策、健保・医療政策、年金・福祉政策、分権・地方財政問題、個人情報問題など、どれを取っても自民党・与党と対決する課題に事欠かないはずであり、自民党内の様々な対立に介入しつつ、国民からの信頼回復を勝ち取る政策・主張を打ち出すことが民主党に求められている。自民党の歴史的凋落は目に見えており、現在危機を乗り切ってこそ民主党に未来も生まれる。
(佐野秀夫) 

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