アサート 301号(2002年12月21日)

 【コラム】  ひとりごと
       ‐‐マイナス人勧の悪影響はじわじわと押し寄せる‐‐
○今年の人勧は、制度発足以来初のマイナス人勧となった。月給ベースで7770円(‐2.03%)、一時金で0.05ヶ月分の引き下げという内容だ。
○経済低迷の影響から民間賃金も大幅な切り下げが横行し、失業率も高止まりしている現実の中で、民間賃金準拠という制度設計が行なわれている人事院勧告制度である以上、マイナスの賃金勧告が有りうる。しかし、理屈の話と現実とは違う。一度として経験したことのない事態なのである。さらに加えて、予定されているのは国家公務員の退職金について、民間との比較調査が行なわれ、10%の退職金引き下げが現実のものになろうとしている。○多数の都道府県では、これまでに独自の賃金カットを実施してきているが、来年度もこれを継続する姿勢が硬い。北海道庁では、年末闘争でも4年前から強行実施されている一時金の7.5%カットの停止を勝ち取れず、マイナスを4月に遡る減額遡及も強行されている。東京都も、これまで財政再建を理由として期限付きで実施されてきた一般職員の給与カットを継続する提案を行なった。○大阪府堺市では退職金10%カットの提案が行われるなど、大阪府でも減額遡及問題に加えて基本賃金のカットや昇給延伸提案を行う市が相次いでいる。人勧とは切り離しての年末闘争の方向のようだが、年度末に向けて火種は残っている。
○一方で、人事院勧告はこれまで各種補助金等の人件費算出の基礎となってきた。人勧の引き上げ率が次年度算出の基礎となってきたのである。マイナス人勧ということで、現在作成されつつある2003年度予算でも、軒並み人件費部分が引き下げられつつある。特に福祉関係の補助金には、施設福祉にしろ社会復帰施設関連にしろ人件費部分の占める割合が大きい。○まだ、全貌は明らかになっていないが、補助金の基準額の引き下げということになれば、行き着く先は、関係労働者の賃下げという事態である。介護保険関連でも、個別の単価では引き上げられるものもあるが、全体としては介護報酬は5%程度の引き下げの方向が出された。現在でも介護関係労働者は、介護報酬部分の44%程度しか賃金を受け取っていない。(ヘルパーの平均時給を1,261円とすると、ヘルパー賃金率は44%(=1,261円/2,867円:介護基準報酬)○さらに、労組の存在しない企業や、公共関連の様々な職場・企業では、人勧を元に賃金決定が行われてきている。言わば世間相場としての人勧である。マイナス人勧の影響はこうした職場を直撃することだろう。あくまでも引き上げ率としての人勧を横目で見た来たわけだが、引き下げ要因となる。○この数年の一時金引き下げ、そして今回のマイナス人勧だといっても、年収ベースで数10万の賃下げであり、まだまだ一般的な労働者の賃金水準と比べれば比較的優遇されているのだろう。春闘が萎み、賃下げが横行し、そして公務員賃金が下がる。しかし、この結果は、社会の隅々の賃金決定システムを縛り、影響を及ぼしていく。○公務員のマイナス人勧の悪影響はじわじわと押し寄せてくるのである。その意味を初めての経験から学ぶことが必要だ。社会的連帯の本当の意味と賃金闘争の大切さを。(佐野) 

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