アサート 302号(2003年1月25日)

【コラム】 ひとりごと --「坂の上の雲」を読んで --
○司馬遼太郎の「坂の上の雲」を年末年始にかけて読んだ。これで3度目だ。皆さんもご存知の通り、秋山兄弟を中心に据えて日清・日露戦争を描いた歴史小説である。○幕末の歴戦をくぐった人々が陸軍・海軍の首脳を構成していた時代、幕末の攘夷の熱が新しい国民国家の戦争遂行力となった時代をロシア革命前の腐朽した皇帝国家との対比において描き切っている。その中では、後の中国侵略や第二次世界大戦の結末を予感させる陸軍の保守的体質の形成をも描いている。○年が明けると、NHKが「スペシャル大河ドラマ」として「坂の上の雲」を製作することを発表した。報道によると、司馬遼太郎は生前から映像化を拒んでいたという。「軍国主義ととられるおそれがある」との考えからだ。○偶然に週刊のコミック誌に「日露戦争物語」という作品が連載中であることを知った。秋山真之を主人公に海軍の誕生から描き始めているようで、何か共通点があるのかなと考えてみた。○小泉改革政権も色褪せ、不況・倒産・リストラ・失業が厳しさを増している今、国家とは何か、そして国家が「輝いていた」時代を求めている雰囲気が感じられる。国民が自信を喪失している中ですっきりと語れるものが求められつつあるのだろう。こうした雰囲気としか言えない中に、危険な傾向も共存していると思う。○放送やメディアの分野を裏で操っている人々は、ナショナリズムが強まる事を期待をしていることだろう。○しかし、アメリカのイラク攻撃に対して6割を超える人々が反対の意思を持ち、世界的にも反戦行動の盛り上がりがブッシュ包囲網を形成しつつある。○「坂の上の雲」を一気に読み終え、次は幕末物をまた読み直そうかと思った次第です。(佐野) 

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