アサート 304号(2003年3月22日)

 【投稿】 もんじゅ判決の画期的意義 by 福井:R
一審提訴から18年、「安全審査には重大な誤りがある」と40名の周辺住民が国を訴えた高速増殖炉「もんじゅ」設置許可処分無効確認訴訟で、名古屋高裁金沢支部は1月27日、原告の主張を避けた一審判決を取り消し、許可処分の無効を言い渡した。
高速増殖炉「もんじゅ」はプルトニュウムを燃料とし、冷却材に水を使う通常の原子力発電所とは異なり、熱伝導率のよい液体ナトリウムを使う。そのナトリウムの熱を2次系で水と熱交換する。化学の実験でも明らかなように、水とナトリウムは爆発的に反応する。また、ナトリウムは酸素とも反応するため、空気を遮断しておく必要がある。
今回の高裁の判決で安全審査に「看過し難い過誤、欠落があり‥重大な瑕疵がある」としたのはその、水とナトリウムが接触する恐れのある「2次冷却材漏洩事故」「蒸気発生器伝熱管破損事故」と「炉心崩壊事故」の3点である。結果、「原子炉格納容器内の放射性物質の外部環境への放散の具体的危険性を否定することが出来ず‥本件許可処分は無効と判断すべきである。」と結論付けている。
まず、「2次冷却材(ナトリウム)漏洩事故」であるが、1995年12月8日に「もんじゅ」は大規模なナトリウム漏れ火災事故を起こし、それ以降運転停止の状態が続いている。すでに事故後のナトリウム燃焼実験で、漏れたナトリウムとコンクリート(コンクリート中の水分とナトリウムが反応する。)との直接接触を防止するために敷かれている床ライナの腐食を全く考慮していなかったことが明らかとなっている。判決では本格的なナトリウム・コンクリート反応が起これば系統分離が破壊され、すべてが機能不全に陥る可能性が否定できないとした。
次に、「蒸気発生器伝熱管破損事故」については、既に、イギリスの高速増殖炉PFRにおいて40本の伝熱管が瞬時に破断する事故(「高温ラプチャ」)があり、「もんじゅ」の安全審査においては、これを起こりえないとしているが、発生の可能性を否定できないとしている。
3点目の「炉心崩壊事故」については、原告側も想定していなかったきわめて踏み込んだ画期的判決であり、当初予定していた判決に対するコメントを記者会見前に急遽書き換えることとなった。炉心を流れる冷却材の流量が一挙に減少し、同時に制御棒の挿入に失敗したときに起こる現象について、審査は炉心損傷後の機械的エネルギーの評価を申請どおりとしているが、旧動燃の解析ではその3倍のケースも含まれていたのに報告されていなかったとした。さらに、判決は、1995年12月のナトリウム漏れ火災事故後の「変更許可申請」は「反応度抑制機能喪失事象」(炉心崩壊事故)を対象としていないとして、変更許可申請が審査の瑕疵を是正するものではないと結論付けている。
ところで、今回の行政訴訟において、国はナトリウム漏れ火災事故後の「変更許可申請」の理由をほとんど述べておらず、事故後の設計変更が裁判官の心証に不利に影響すると考えていたようであり、弁論においてほとんど反論していない。このことが、逆に判決では「本件変更許可申請に対する被控訴人の判断は、本件口頭弁論終結時までになされておらず、本件変更許可申請は、本件の結論に何らの影響を及ぼすものではない。」という裁判官の結論となっている。今回の川崎和夫裁判長の訴訟指揮を見る限りにおいては、かつての国家無誤審論的行政訴訟から、反論しなければ証拠として採用しないという民事訴訟の手法に近づいているようである。
国は判決のあまりの衝撃の大きさに判決後数日を経ずして上告した。無効確認訴訟では違法性が重大かつ明白であることが必要であるが、明白性を欠く「判例違反」として争うようである。社民党の福島瑞穂衆議院議員(もんじゅ弁護団の海渡弁護士の妻)は国会で、「もんじゅ」の控訴審判決に国は上告できない、最高裁での上告審というのは相当に重いもので、上告の要件は厳しく制限されており、判決が「判例違反」か「憲法違反」でなければ上告できないという趣旨の質問を行っている。
2003年度当初予算の福井県の税収は951億円を見込んでいる。税収が極端に落ち込む中で原発関係税収の占める割合は年毎に高まっている。おそらく2003年度は6分の1程度になるものと思われる。しかし、「もんじゅ」(核燃事業団)については運転停止する中、わずか数十万円の法人県民税の均等割を払っているに過ぎない。福井県は今後とも危険な「もんじゅ」に依存し、新たな税源を求めようとするのか、それとも「もんじゅ」を切り捨てるのか、4月に行われる知事選挙を含め、重大な岐路に立っているといえる。
3月8日(火)には、福井市文化会館において、「もんじゅ」無効判決についての報告集会が行われる。国は上告で時間稼ぎをし、その間に改造工事、運転再開にまでこぎつけたいようであるが、こうした時代錯誤の馬鹿げた動きをやめさせ、判決に従わせるには、世論の声を大きく広げなければならない。 

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