ASSERT 319号(2004年6月26日発行予定)

【投稿】 小泉政権の危険な暴走と参院選挙
【投稿】 小泉訪朝の意味するもの
【投稿】 均等待遇で公正な社会を拓く
【書評】 池田晶子『14歳からの哲学--考えるための教科書
【本の紹介】  『宮本常一という世界
【コラム】 ひとりごと ---三菱自動車の凋落について---

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【投稿】 小泉政権の危険な暴走と参院選挙

<<「サージェント(軍曹)」>>
 小泉首相の危険な綱渡りがいよいよ度を超えだした。6/8から始まった「シーアイランド・サミット」、初日に行われた日米首脳会談で、小泉首相はブッシュ大統領に対して、米国が安保理に提出した「イラク国連新決議」の採択について、「これは米国の大義の勝利だ!」と持ち上げ、絶賛したのだからあきれたものである。ブッシュの大義などことごとく化けの皮がはがれ、ブレア英首相ともども支持率が急落し、次の再選もおぼつかない状態である。問題の新国連決議でさえ、米国原案は三度にわたって修正を余儀なくされ、なおかつそれでもフランス、ドイツ、ロシアからは米国が主導する多国籍軍には参加しないことを明言されている。さらに、米国が求めた「イラク債務」の削減もこれら諸国からはねつけられている一方で、小泉首相だけがイラク債務の大幅削減に真っ先に賛同している。ブッシュ大統領から「小泉首相と会うたびに建設的な話し合いができる」とその腰ぎんちゃくぶりをほめられて喜んでいる姿は、ブッシュが陰では小泉首相のことを「サージェント(軍曹)」と呼んでバカにしているとの報道と符合するものであろう。
 問題の多国籍軍について、暴走するブッシュ大統領をいさめるどころか、小泉首相は「ぶれない大統領に敬意を表する」などとお追従発言を繰り返し、何の国内合意もなしに、それも突如ブッシュ大統領の前で「自衛隊をイラクの多国籍軍に参加させる」と言明したのだから、その無責任さと軽挙妄動は断固として糾弾されるべきであろう。このブッシュへの卑屈な忠犬ぶりは、あらためて日本が今後果たそうとしている役割を全世界に鮮明に印象付けたのである。

<<首相の越権行為>>
 そもそも多国籍軍参加問題については、これまで国連安保理決議によって十数回にわたって多国籍軍がつくられてきたが、一貫して「武力行使を伴う多国籍軍への参加は憲法上許されない」という政府見解のもとに、一度も参加したことはなかったのである。それほど重要な、歴史的な分岐点、転換点となる問題の判断を、小泉首相は単独で、国会審議も、法改正もせずに、勝手に独断で決定し、表明してきたのである。民主主義の原則とは似ても似つかない、思い上がった独裁者の原則であり、それは民主主義を否定する首相の越権行為なのである。こんなことが許されるのであれば、次に何をやりだすのかわからない、自衛隊をブッシュ.小泉の私兵の如く世界の各地の戦場に派遣しかねない事態を招きかねないともいえよう。
 首相は、小泉内閣メールマガジン第144号のなかで、「新しい全会一致の国連安保理決議のもとでの自衛隊の支援活動は、(1)日本の指揮下に入る、(2)非戦闘地域に限る、(3)武力行使と一体にならない、(4)イラク特別措置法の枠内、これら4点を守って、イラク暫定政府が要請した多国籍軍の中で、これまでどおりの人道復興支援活動を行うことになります。」と釈明している。この線であわてて閣議を開き、与党協議を行い、ドタバタと事後承認を取り付けているが、国会審議も承認もない、違法行為であることには変わりはない。

<<「口頭」の了解>>
 そして首相の釈明そのものに即して検討したとしても、多国籍軍に参加した自衛隊が、(1)日本の指揮下に入る、などということははなから問題にもされず、マクレラン米大統領報道官が6/15の記者会見で明確に語っているように、「日本の自衛隊もふくめて、多国籍軍全体が米軍司令部によって監督される」のであり、米軍と自衛隊との関係は、「調整」「連絡」ではなくて、事実上の指揮・監督下に置かれるということを米国政府自身が認めていることである。
 そもそも国連安保理決議一五四六では「多国籍軍に参加する軍隊は統一された指揮の下に置かれる」と明記されており、国連決議との関係で、「参加するが指揮下に入らない」ということは成り立たないのである。
 首相は事態をごまかすために、政府の「基本的考え方」なるものを急遽作成し(6/16)、「自衛隊は、…わが国の主体的な判断の下で活動するものであり、統合された司令部の指揮に従い活動するものではない」とし、独自の指揮権確保について「米、英両政府と我が国政府との間で了解に達して」いるとして、日本政府の方針に反する要請があった場合は断り、「活動の中断、撤退等の措置」をとることも「了解に達している」と言い出した。しかしその了解も「口頭」でしかないことが暴露され、「なぜ口頭『了解』なのか。憲法違反かどうかを決める大事な問題を口約束ですますのか。だれとだれが交渉したのか」と追及されると、「名前は明らかにできない」(川口外相)というのであるからいかがわしいものである。野党側からその「了解文書」の提出を迫られているが、当然、出しようもないであろう。

<<「順序が逆。めちゃくちゃだ」>>
 東京新聞15日社説「通常国会 これで閉じていいのか」は、「順序が逆。めちゃくちゃだ。自衛隊の多国籍軍参加を対米公約した後で与党調整、そして国民も従えと。年金法もまた、大事な情報が後から続々。これで国会を閉じられては主権者軽視も甚だしい」「本来ならば国会は会期を延長して首相の独走を諫(いさ)め、憲法とのかねあいをめぐっての精査をあらためて必要とすべき」と鋭く問題を提起している。
 ところが自衛隊の派兵を積極的に支持してきた「読売」は、「自衛隊の役割が、ますます重みを増す」(十日付社説)と礼賛し、同様な主張をしてきた「産経」も、参加の「意義は大きい」と積極的に評価している。しかし世論調査では、自衛隊の多国籍軍参加については、「賛成」は33%にすぎず、「反対」が54%に上り、過半数を超えている(毎日6/15日付)。事態は流動的である。
 小泉首相が日米首脳会談で多国籍軍への参加を表明した翌十日、井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子、以上九氏の呼びかけによる「九条の会」の記者会見が行われた。ところが「朝日」は第三社会面で写真つきの囲み記事で報じたが、「毎日」は社会面「情報ファイル」での短信扱い、「読売」や「産経」には一行もなし、自衛隊派兵や改憲に反対する行動、気に食わないものは黙殺するマスメディアの面目躍如である。
 そして政府が多国籍軍への自衛隊参加を閣議決定した十八日、約千二百の団体・市民が共同声明を発表し、「自衛隊のイラク多国籍軍参加は、まったく違憲・違法なものであり、私たちは絶対に反対です」と訴えた。記者会見には、札幌地裁でイラク自衛隊派兵の違憲訴訟をおこした元郵政相で元防衛政務次官の箕輪登さんが同席。「自衛隊を(多国籍軍に)参加させるというのは、国会をはなはだ侮辱する行為だ。憲法九条が固くことわっている。武力行使の道具をイラクに持ち出したことは重大だ。国会の承認もなく、ブッシュに会ったら約束してくるというこんなばかな話がありますか。ほんとうに憤りを感じる」と語ったが、大手マスコミはほとんど無視という状況である。

<<全野党の大同団結の呼びかけ>>
 また、沖縄においては、直面する参議院選挙に向けて重要な一歩が踏み出された。先月5/24に発表された、全野党の大同団結の呼びかけである。呼びかけは次のように述べている。
 「私たちは、今回の参院選において、沖縄における全野党統一候補の実現、ひいてはその勝利が、沖縄の民衆運動を活性化させ、閉塞状況にある日本、さらには世界の政治情勢を未来に向けて切り拓く一つのきっかけになると考えました。そこで、小泉自公政権の危険極まりない政治的スタンスと政策展開に反対する全野党に対し、小異を残して大同に立つ立場から、民衆と共に沖縄の未来を切り開く方向で大同団結することを呼びかけました。同時に、志を同じくする一人ひとりの市民の想いを政党関係者に伝えるべく「沖縄の明日を切り拓くために―来る参院選をどうたたかうか―」をテーマとする「市民集会」を開催しました。選挙のあり方について、一般市民が、すべてを政党関係者にゆだねるのではなく、主体的にそれぞれの意思表明を行う市民集会を開いたのは、市民の政治参加を考える上で意味のある試みだったといえるでしょう。
 全野党関係者が、こうした試みの中で表明された様々な市民の想いを真摯に受け止め、糸数慶子全野党統一候補が実現したことを私たちは心から歓迎します。全国的にも類似の試みがなされなかったわけではありませんが、それが実現したのは、唯一沖縄のみであったことは特筆すべきことです。それは沖縄が置かれている特殊な状況と、そうした状況を打破しようとする民衆の想いの反映です。
2004年5月24日「来る参院選勝利のために大同団結を」呼びかけ人 安里英子、新崎盛暉、親泊康晴、金城睦、桑江テル子、高里鈴代、山内徳信」
 参議院選挙に向けては、老人党の提案者、なだいなださんが次のように述べている。
 「参議院選挙は、これまでと原則は変わらないが、沖縄の「きなしょうきち」さんが民主党から立候補した。迷った末の選択だろうが、いまどき個人として、迷いなく推薦できるのは、この人ぐらいだ。民主がこの人を将来、自分たちの看板にするようだったら、政権交代は近いだろう。ぼくの個人的な考えはこうだ。今回の選挙は、直接政権交代に結びつかないが、それでも政権交代を頭において投票する。だが、比例区では個人的には中村敦夫の「みどりの会議」と福島みずほの「社会民主党」を推薦したい。出来ることなら二つの連合が出来て欲しい。きなさんは民主をここに引っ張ってきて、この連合にくわわればいい。それに共産党が孤立主義を改めて加わってくれれば、こちらもあれこれ迷わないですむ。」なかなかの提案ではある。
 それぞれに重要な動きだといえよう。これらもマスメディアは無視している。

<<「九条の会」発足>>
 先に紹介した「九条の会」は、そのアピールの冒頭で「憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破ってきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向かう道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。」と訴えている。
 アピールは最後に「日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます」と結んでいる。
 このような努力が今こそ必要とされているといえよう。
(生駒 敬)