ASSERT 322号(2004年9月25日発行)

【投稿】 安保理常任理事国入りのファンタジー
【投稿】 関電美浜3号機蒸気噴出事故について
【投稿】 米軍、自衛隊再編の危険性
【コラム】 ひとりごと--市町村合併に思う--

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【投稿】 安保理常任理事国入りのファンタジー

<<「苦悩」さえ見せない首相>>
 小泉首相が繰り出してきた耳目驚かすサプライズ作戦も、もはや種も尽き、その浅薄な底意も見え見えで、求心力も失い、すがるはブッシュ頼みとなったのであろう。突如、首相は、国連総会で安保理常任理事国入りを目指すという。支持率回復作戦である。6月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領から「日本は安保理常任理事国になるべきだ」とリップサービスでおだてられ、この21日の日米首脳会談でも、大統領選挙で苦戦するブッシュを支援し、改めて米国に協力を求めるという。厚顔無恥、あるいは傲岸不遜とは、こういう連中のことを言うのであろう。国連を徹底的に無視し、嘘と欺瞞で、大量破壊兵器の存在を口実に対イラク戦争に踏み切ったブッシュ政権、これに無条件で追随してきた小泉政権、事態が泥沼化し、彼らの手に負えなくなるや、国連重視、国連改革である。
 しかし彼らの目論見は、そうたやすいものではない。ブッシュ政権自身が窮地に立たされている。パウエル米国務長官はこの9/13、上院政府活動委員会の公聴会で、ブッシュ政権がイラク開戦の最大の根拠と位置付けた大量破壊兵器について、「いかなる備蓄も発見されておらず、この先も発見されることはないだろう」と証言したのである。先制攻撃直前の昨年二月の国連安保理で大画面映像を使って得々と大量破壊兵器の存在について、脅威がいかに差し迫っているかについて偽証したその本人が、今さら「情報機関のスタッフの一部は情報が疑わしいと分かっていたが、それが私に知らされなかったことを知り苦悩した」と反省の言葉を口にしても、国際社会を欺いた責任は免れるものではない。
 この証言は、小泉首相にとってもショックであろう。なにしろ首相は、イラクは「大量破壊兵器を保有する」と断言し、その根拠を問われると、「フセインが見つからないから、存在しないとはいえない。大量破壊兵器も見つからないからといって、なかったとは言えない」という詭弁まで弄して、失笑と爆笑を買ってきた張本人である。当然、首相はこの証言に何のコメントも出来ないでいる。もちろん反省もなければ、パウエル長官のような「苦悩」さえ見せない。

<<アナン事務総長には反論>>
 ところが国連のアナン事務総長の発言には直ちに反応している。
 アナン事務総長は9/15、英BBC放送に対して、「イラクを攻撃するかどうかの決定は安保理で行われるべきであり、(これを無視して)単独で決定すべきではなかった」と語り、戦争が違法だったかとの質問に対し「違法だった。我々から見ても国連憲章から見ても違法だった」と語り、「イラク戦争以降、国際社会は『つらい教訓』を学んだ」と指摘、「結局すべての人々が、国連を通じて加盟国と一緒に仕事をするのが最善だという結論に達したと思う」と述べ、さらに、「国連の承認がなく、国際社会からの幅広い支持のないイラク型の作戦が今後実行されないよう望む」として、ブッシュ政権の有志連合型単独行動主義やその先制攻撃論に対して明確な批判を明らかにしたのである。
 その上、今後の展望についても、「治安状況が今のまま続けば、信頼できる選挙はできない」と、米主導の占領統治への懸念まで表明している。
 この発言に対しては、翌9/16、細田官房長官は「(イラク攻撃の根拠となった)安保理決議との関係で、どのような観点で言ったかはっきりしない。真意を照会し、確認したい」とあわてたが、続いて9/17、閣議後の会見では、川口外相が「日本政府としては違法と考えていない。一連の国連決議があり、(安保理は)満場一致でイラクが継続的な違反をしていると認定している。アメリカの行動は国連憲章に合致していると思う」と、アナン発言に反論し、さらに外相は、「事務総長は国連の中で大変重要な役割を果たしているが、安保理決議を解釈する権利は安保理にある。米英の解釈を、日本も国連メンバーとして支持している」とまで語ったのである。解釈権まで持ち出した、事務総長への全否定である。
 しかし国際社会は、占領政策の失敗や捕虜への拷問・虐待には目をつぶり、自主性も主体性もなくブッシュ大統領には従う一方で、アナン事務総長には即座に反論というこの常軌を逸した日本政府の姿勢を厳しく評価せざるを得ないといえよう。

<<プレ911時代のファンタジー>>
 ところで今回、外相が持ち出したこの解釈権は天に唾するものである。問題の決議は、安保理で採択された直後、安保理常任理事国のフランス、ロシア、中国の三カ国が同決議に関する共同声明を発表し、決議が「(イラクに対する)武力行使におけるすべての自動性を排除している」ことを評価し、「安保理において次にとられる措置が決定される」ことを明らかにしていた。
 その上、ネグロポンテ米国連大使(当時)自身が、同決議には「武力行使に関して『隠された引き金』も『自動性』も含まれていない」と発言し、イラクが武装解除に応じない場合にも、自動的に対イラク戦争を容認するものではないと明言していたのである。
 つまり、安保理各国にとって、自動的に武力攻撃を容認しないことが全会一致による採択の条件となっていたのである。日本政府でさえも、「米国代表も、武力行使につながる隠れた引き金はないと述べている」と述べて、決議が自動的に米軍の武力行使を容認しないとの認識、解釈を示していたものである。
 だからこそ、アメリカは対イラク戦争容認の新たな安保理決議案の採択をその後も追求し続けたが、多数の反対にあい、採択が不可能と判断して、安保理決議なしの、「国連の承認のない」違法な対イラク戦争に突入し、今日の事態をもたらしたのである。いくら川口外相が「アメリカの行動は国連憲章に合致していると思う」と弁護しても、アメリカ自身は「国連の承認のない」戦争行為を自覚していたのである。
 ニューヨークの何十万人ものブッシュ批判渦巻くデモのなかで開かれた共和党大会では、「国連の指揮下ではアメリカは守れない」、「国連重視はプレ911時代のファンタジー」などといったスローガンが騒々しく流されたという。まさにこうした国連軽視のブッシュ政権に追随しながら、そのブッシュ政権の後押しで、ファンタジー・幻想まがいの、国連重視の安保理常任理事国入りを目指そうというのだから、小泉政権もまたとんだ皮肉な役回りである。

<<「9条改憲」の足場作り>>
 もちろんその役回りには、小泉政権のしたたかな計算があることも見逃せない。
 9/13、ブッシュ大統領は遊説先のミシガン州で、自らの選挙戦を有利にするためにわざわざ小泉首相との緊密な間柄を強調し、「彼とは平和について、さらに北朝鮮の独裁者への対応について語り合う仲だ」と述べている。当然そこには、対中国、対ロシア、韓国、イランを含めた核開発問題、等々での日米間の駆け引きや裏取引も介在していよう。それでも、またであればこそ、世界で孤立するブッシュにとっては、小泉は忠実につき従ってくれる、ブレア英首相にも劣らぬ得がたい存在である。
 一方の小泉首相にとっても、レイムダック化しつつある自らの立場を、米国を後ろ盾にして挽回し、政局の主導権を握りなおす絶好の機会でもあるといえよう。「9条改憲」の足場作り、集約化がその典型である。それに呼応するかのように、この七月以降、アーミテージ米国務副長官、パウエル国務長官らが相次いで、日本の常任理事国入りの条件として、9条改憲を期待する、と露骨に表明しだした。「憲法九条は日米同盟関係の妨げの一つ」(アーミテージ発言)だというわけである。新たな論拠を打ち出してくれた、気付かせてくれたとばかりに、自民党憲法調査会は8月末、九条改正について「常任理事国入りを含めた議論が必要」という認識を打ち出した。
 これならば、訪米中に「9条を書き換えると言う前提」で改憲是認発言をした岡田・民主党代表も巻き込めるし、少なくとも民主党内はかき回すことが出来る、政局のイニシャチブもとれる、と読んだことは間違いない。

<<「夏休み中だから」>>
 しかしたとえそうであったとしても、小泉首相のレイムダック化は止めがたいであろう。なぜなら、そのような小泉政権の路線は、よほどのことがない限り、圧倒的多数の庶民の支持を獲得することは出来ないからである。
 その典型が、沖縄国際大学構内に米軍ヘリが墜落、炎上した際の、米軍の対応、小泉政権の事後処理と沖縄県民の怒りに象徴されている。
 事件がおきた8/13、「犠牲者が出なかったのは奇跡」という大事故であるにもかかわらず、そして日米地位協定で米国側が警護や管理のために必要な措置が取れる「施設及び区域内」ではなく、米軍基地外での事故であり、普天間基地から米兵30人が急遽駆けつけ、銃を構えて現場を閉鎖、先に到着していた消防署員と県警の捜査員を閉め出し、日本側の立ち入りを禁止し、米軍が機体を勝手に撤去し、現場の立ち木まで含めてあらゆるものを持ち出し、しかも警察の現場検証すら拒否するという、明らかな違法行為(日米地位協定第3条違反)、日本の主権侵害行為、沖縄国際大学への住居不法侵入行為に対して、小泉政権は一切の抗議すら行わなかったのである。しかも、米軍は墜落現場で放射能測定器のガイガーカウンターを使った調査をし、密封容器に覆いをかけて運び出しており、そのことから当然、劣化ウラン弾などを搭載していた可能性が疑われており、放射能飛散・近隣住民への汚染の可能性さえ疑われる事故である。
 ボルネオから緊急帰国し、首相官邸に抗議と要請に訪れた沖縄県知事に対しては、小泉首相は「夏休み中だから」として門前払いし、面会にさえ応じなかった。ところがこの間、首相は高級ホテルで静養し、歌舞伎鑑賞、映画三昧、オリンピック番組に明け暮れ、金メダル選手に「感動した!」などと国際電話をして、それを記者団に披露までしていたのである。ようやく稲嶺知事との会談に応じたのは事故後10日以上たってからである。首相はこの期に及んでも沖縄県民の怒りと不安の声に耳を貸そうともせず、ただ川口外相に対してパウエル米国務長官に電話して「事故原因の早期究明」をお願いさせただけである。
 首相は9/13、米軍ヘリ墜落事故を受けた世論調査で、81%が首相の対応を評価しなかったことについて、その態度を問われると、ただ「再発防止に努めることが大事だ」としか答えられないありさまである。年金問題にしてもしかりであるが、庶民の怒りや不安を甘く見くびるような権力者に未来はないと言えよう。しかしそれを現実化するには、野党の対応が問われている。
(生駒 敬)