ASSERT 332号(2005年7月23日発行)

【投稿】 ロンドン・テロと小泉政権
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【投稿】 ロンドン・テロと小泉政権

<<「たそがれ」サミット>>
 7/7、イギリスにサミット八カ国(G8)首脳が参集し、会議を始めかけたまさにその日、ロンドンで地下鉄やバスを狙った同時多発爆弾テロが仕掛けられた。会議は中断され、ブレア英首相は特別記者会見を行い、「我々はこの蛮行を強く批判する。一国に向けられたものではなく、全人類への挑戦である。テロと断固闘う」と怒りに肩を震わせた。ブッシュ米大統領とともに大量破壊兵器の存在というデッチ上げでイラク侵攻という「蛮行」を行ってきたブレア首相が名誉回復と威信をかけ、支持率挽回に期待をつないだサミットが台無しにされたのである。
 ロンドンは4年前の9・11テロ以降、「反テロ法」を施行、強化し、100万台ともいわれる街頭監視カメラが設置され、イスラム系住民の不当逮捕・拘束等々が頻繁に行われ、主立ったイスラム過激派は常に監視下に置かれる、いわば「監視社会」と化していた。それでもそれをあざ笑うかのような同時多発テロがおこなわれた。現実は、こうしたテロを治安立法の強化や監視社会化や弾圧体制の強化によって防ぐことは到底不可能であることをあらためて明らかにしたといえよう。ブレア首相自身がしぶしぶながら認めているように、「この種のテロは、治安対策だけでは阻止できない」のである。
 7/10付朝日社説は、「主要国首脳会議(サミット)は、その年ごとに世界の世相を反映する。30年を迎えたことしのグレンイーグルズ・サミットが示したのは、『たそがれ』だった。 」と指摘している。「まず参加者たちだ。主要8カ国の首脳のなかで政権の足元がぐらついているのは、小泉首相だけではない。ホスト役のブレア英首相は、総選挙で与党の議席を大幅に失った。シラク仏大統領は欧州連合(EU)憲法の批准を国民投票で否決され、シュレーダー独首相の与党は地方選挙で負け続けている。ブッシュ米大統領の支持率も、就任してから最低の水準で低迷している。」、そして「『新しい世代のテロリストの出現を防ぐ』という視点は必要だ。しかし、それなら、イラクやパレスチナの悲惨な状況がテロ組織を広げている現状についても、もっと議論すべきだったろう。」と述べる。

<<「殺意の思想」>>
 それでもこの「たそがれ」サミットの出席者たちにとっては、今回のテロ攻撃は、干天の慈雨であったのかもしれない。高騰する石油価格と中東地域の政治不安、アフリカへの支援策、地球温暖化問題、国連改革問題、どれをとっても利害は対立し、具体的な成果は期待しがたく、解決への意欲さえ疑われていた。そこへこのテロ攻撃である。サミットは急遽、難問を適当に棚上げして、「テロとの国際的闘いでの団結」を決議し、「罪なき人々へ無差別攻撃を行う者たちを、われわれは一致団結して断固として撃滅する」と宣言した。
 ブッシュ米大統領は「21世紀の『殺意の思想』に米英両国で立ち向かう」として、米英同盟の結束で対テロ戦に勝利する決意を示したが、イラクやアフガンで無差別攻撃を行い、「罪なき人々」を苦境に陥れてきた米英のサミット当事者が今さら何を言うかではあるが、いかにしてテロを「撃滅」するのか、テロを拡大させてきた当事者には、「テロ拠点の一掃」の名の下にさらに展望のない戦争拡大政策しか提示できていない。それこそが「殺意の思想」であろう。しかしそれはさらなるテロの拡大をしかもたらさないことは明らかである。
 今回のロンドン・テロの場合、サミット当事者の「テロに屈するな」の合唱にもかかわらず、ロンドンやイギリスの民衆からは「テロ撃滅」のための好戦的報復や熱狂の声は上がらず、むしろ「対テロ戦争では安全を守れない」という冷静な認識が語られていることに、認識の変化と特徴があるといえよう。

<<「赤旗」まで評価>>
 そして小泉首相もまた、「結束してテロとの闘いを続けていかなければならない」と表明し、「対テロ戦争」の強化に諸手を挙げて賛成してきた。そこで出てきた「テロ対策」は、「ゴミ箱撤去」「監視カメラ増設」や「地下鉄避難の仕方」など、不安と恐怖をあおり、猜疑心を高める警察国家、監視社会体制、人権抑圧体制、そして共謀罪法の制定である。
 日本の大手マスメディアはこぞってテロ事件を非難し「テロとの国際的闘い」を支持し、さらなる「テロ対策強化」を主張している。読売が「毅然とした姿勢で臨め」、「テロによって得るものは何もないことを示さなければならない」と主張し、産経が「G8が『打ち負かすことを決意する』としたのは当然」、「国際テロには、世界各国が協力して立ち向かう必要がある」と主張する。これにたいして毎日は、「自衛隊を派遣した日本も決して人ごとではない」、「浮き足立つ必要はないし、卑劣な脅しには屈してはならない。だが、起こりうるテロに対して日本も真剣に、冷静に対策を再検討する必要がある」と主張、朝日は「むき出しの武力だけではテロを押さえ込めないどころか、はびこらせる結果にさえつながる」と当然の指摘をしながらも、「この戦いに勝つには、警察や情報機関の操作能力を高めるしかない」、「国際的な監視網、捜査網に各国がもっと投資すべきだ」というのだからあきれたものである。
 共産党の「赤旗」までもが「地球上からテロを一掃していく基本は、断じて卑劣なテロを許さないという国際世論を大きくし、テロの策動の余地を封じ、なくしていくことです。テロ対策で二度目のG8声明は最終第七項を『国際的なパートナーシップの強化』としています。そこでいうように、『国際的な義務、規範、標準が普遍的に履行され』なければなりません。」(7/10付)と主張し、サミットのG8声明を支持している。
 テロの標的が「次は日本」という当然の懸念は、日本にとって最大の問題がイラクへの自衛隊派遣にあること、小泉政権のブッシュ追随政策にあることが誰の目にも明らかであるにもかかわらず、日本のマスメディアで自衛隊撤退を主張したところは皆無なのである。ここに日本の現下のマスメディア、与野党を問わず政治の貧困化が現れているといえるのではないだろうか。
(生駒 敬)