ASSERT 336号(2005年11月26日発行)

【投稿】 小泉外交の惨憺たる失態
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【投稿】 小泉外交の惨憺たる失態
<<「取り繕えぬ靖国の影」>>
 11/18-19、韓国・釜山で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は、案の定というか、当然とも言えようが、小泉首相にとってはまったく成果のない、それどころか自らの無恥、無能をさらけ出す場でもあった。
 ホスト国でもっとも肝心な韓国の盧武鉉大統領とはわずか三十分ばかりの短い会談しか持てず、しかもそのほとんどを首相自身が強行した靖国参拝問題でのやりとりに時間を取られ、盧大統領からは「首相の靖国参拝や最近の多数の政治家による参拝は韓国に対する挑戦でもあり、日本が過去に戻るのではないかとの懸念がある」と強い調子で批判されたのである。首相は「戦争の美化、正当化では決してなく誤解だ」と釈明にこれ努めたが、大統領からは、前回の首脳会談では新たな追悼施設建設の検討を進めるよう要請していたが、今回はこれに触れず、逆に前回の会談では言及しなかった独島領有権問題を、靖国参拝問題、歴史教科書問題とともに取り上げ、この3点について「いくら首相の考えを善意に解釈しようとしても、韓国民は絶対に受け入れることはできないだろう」とにべもなく撥ね付けられたのである。慣例化している半年に1度の相互訪問について、年内までにと日本側が働きかけてきた大統領の訪日についてさえ、正式に招請することすらできない、という首相にとっては思いもかけぬ惨憺たる失態を演じたといえよう。
 11/20付け朝日社説はこの事態を、「取り繕えぬ靖国の影」として「せっかくのAPECなのに、これは深刻な事態というほかない。」と嘆く。一方、小泉内閣を叱咤激励してきた読売は、「両国の首脳が、対話の継続さえ確認できなかったのは、異常な事態だ。」としつつも、靖国参拝については「首相が言うように「誤解」以外の何物でもない。」として、盧大統領の「一方的な主張」を批判し、中国・韓国の「“共闘”」を指摘する。(11/19社説)
 なお、この“共闘”をさらに拡大すべく、盧大統領は、11/17に持たれた米韓首脳会談で、ブッシュ大統領に朝鮮半島と北東アジアの侵略の歴史、日本の歴史認識問題を詳しく説明し、小泉首相の靖国参拝を批判したうえで、ドイツを例にあげ、「過去の歴史を反省する両国の姿勢には大きな違いがある」と指摘、ブッシュ大統領も「理解する」と応じたというのである。小泉首相が頼みの綱とし、忠誠を励むブッシュ大統領にまで「靖国の影」が取り繕えぬ影として覆いかぶさりだしたのである。

<<「短期的な一つの問題」>>
 さらに中国との関係について、小泉首相はこのAPEC首脳会議で日中関係に触れ、「あるいは心配している国があるかもしれないが、全く心配はいらない。自分は日中関係を重視しており、中国との友好は大事だと考えている」と述べたにもかかわらず、昨年、一昨年とAPECの機会に続いてきた胡錦涛国家主席との会談はおろか、外相会談すら拒否され、中国との間では、首脳同士の相互訪問が断絶してしまったのである。
 こうした異常な事態をもたらしたことを象徴するのが、11/19、APEC終了後に首相が臨んだ記者会見であった。内外から首相に向けられた四つの質問のうち、三つが靖国参拝問題に質問が集中し、「大勢の人を連れて内外に放送される参拝は私的ではないのではないか」と質問されると、必死に弁明に追われ、あげくの果て「仕事柄、SP(警護官)がいる」「テレビはどこにでもついてくる」など開き直る始末であった。さらに英BBC放送記者からは、靖国神社の戦争博物館、遊就館が日本の過去の戦争を「防衛のためとして正当化する見解を流している」と指摘され、「この解釈を支持しているのか」と追及され、さすがこれには「その見解を支持していない」と弁明せざるをえなかった。
 首相はこの記者会見で、自らの靖国神社参拝問題について、「短期的に一つの問題で意見の違いがあったとしても、中長期的に両国関係を悪化させない方向での努力をしていかなければならない」「お互い時間がたてば理解されうる」などと述べて、事態を取り繕おうとしたのであるが、問題の根本には、首相のこのような態度こそが事態を悪化させていることにまったく気付かないそぶりをしているところにあるといえよう。
 そもそも過去の侵略戦争を正当化するような靖国神社参拝問題を、「短期的な一つの問題」などととらえる姿勢が根本的に誤っているのである。日本の侵略戦争で多大な犠牲をこうむった韓国・朝鮮、中国、東アジア諸国にとっては、現在の日本の政権担当者が、この過去の日本の侵略戦争についてどのような態度をとっているかということは、「短期的な一つの問題」などというものではなく、対日関係の前提となる根本問題だといえよう。ましてや「お互い時間がたてば理解され得るもの」などと言う無責任な発言は、首相自身の歴史認識の程度の低さ、傲慢で恥知らずな無理解をさらけ出しているだけなのである。

<<小泉・麻生・安倍トリオ>>
 問題は、首相が言うような、靖国神社は単なる戦没者慰霊の場でも、ましてや「不戦の決意」を表明するような場でもなく、侵略戦争を肯定する神社であり、先の大戦を聖戦と美化し、皇軍兵士の武勲をたたえ、戦犯を英霊として合祀する神社であり、なおかつ、首相は靖国参拝が何を意味するか、十分に計算し、ナショナリズムを扇動する格好の場として利用し、むしろ「外国政府が、戦没者に哀悼の誠をささげるのを『いけない』とか言う問題じゃない」と挑発し、開き直っているところにあるといえよう。10/17の参拝では、「適切に判断」した結果、例の紋付き袴姿やモーニング姿ではなく、わざわざ平服のスーツ姿で、「総理大臣.小泉純一郎」とも記帳せず、賽銭箱に金を投げ入れて、「私的参拝」だという見え透いた姑息な姿勢にこだわり、それが浅薄な言い訳に役立つと考えているところに、この人物の程度の低さが現れているといえよう。
 中国の王駐日大使は今年の4/27、自民党外交調査会に於ける講演で、「政府の顔である首相、外相、官房長官の3人は靖国神社に参拝しない」との、中曽根康弘内閣時代の1986年に日中政府間で結ばれた「紳士協定」に言及したという。いわば中国側からの日中正常化への最低限これだけはというシグナルであったといえよう。この「紳士協定」は、後藤田官房長官が、靖国神社参拝が「戦争への反省と平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれる恐れが有る」との談話の発表と相前後して結ばれた「紳士協定」である。
 ところが今回の小泉改造内閣の顔である三役、首相、外相、官房長官には、揃いも揃って参拝強行派の小泉・麻生・安倍トリオが就任したのである。いわば挑戦状をたたきつけたのである。来年8月15日には、首相はこのトリオで靖国参拝を強行するとまでいわれている。
 首相は、APECで「日中関係については、心配はいらない」、「問題があっても、友好は進めることができる」と強調したが、自ら日中正常化への道を叩き潰しているのである。国内では今や読売や産経を先頭にもはや批判精神も失い、翼賛化した大手マスメディアや小泉チルドレン、その他有象無象の小泉礼賛の叱咤激励に何とか通用したとしても、一歩外に出れば、国際的にはまったく通用するものではない。
 来月の12月14日には、クアラルンプールで初の東アジアサミットが開かれる。首相が頼みの綱とするブッシュ米大統領は参加しない。このままではまたもや失態を重ねることにしかならないであろう。
(生駒 敬)