ASSERT 341号(2006年4月22日発行)

【投稿】 小沢民主は小泉自民との違いを打ち出せるか
【投稿】 米軍再編の足下揺るがす民衆の反発
【投稿】 規制緩和政策の打破をめざすタクシー労働者の春闘
【投稿】 原発震災への画期的な警告
      ---金沢地裁・志賀原発運転差し止め判決---
【コラム】 ひとりごと---愛国心だけが焦点か---

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【投稿】 小沢民主は小泉自民との違いを打ち出せるか

<<自己崩壊した前原体制>>
 民主党の前原党首はついに就任六カ月目にして辞任に追い込まれることになった。いったい民主党の前原体制とは何であったのか?
 前原氏は代表就任直後から、自民党と競い合うかのように「憲法改正必要論」をぶち、憲法九条第二項の戦力不保持規定の削除や集団的自衛権の行使を主張、訪米するや「ブッシュ−小泉」の「日米同盟」路線を強力に支援し、小泉政権以上に中国脅威論を唱え、韓国と対決する姿勢を誇示し、小泉首相からは「憲法でも安全保障でもかなり自民党と似ている」として大連合構想まで持ちかけられ、内政においては、新自由主義路線・規制緩和路線という小泉政権と同じ基盤に立った「改革競争」を宣言し、「対決」ではなく、「対案」路線を打ち出し、これらのいずれもが途中挫折、修正を余儀なくされ、最後には拠り所をなくして、偽メールに飛びつき、ガセネタ問題で1カ月半以上も事態を収拾できず、責任を放棄し、ついに執行部全員の総辞職により、自己崩壊してしまった、というのが真相であり、実態であろう。こうした経緯は、この間、小泉首相本人の無責任体質によって低められ、もともと高くはなかった日本の政治への信頼度をいっそう低下させた、その責任の重さが問われてしかるべきであろう。
 さてその後に登場した小沢一郎氏を党首に選出した民主党の新体制は、こうした事態をいかに打開するのか俄然注目を浴び、小沢代表選出後の4/7-8の共同通信調査によれば57.4%の人が「小沢民主党に期待する」と答え、最も望む課題として「自民党との違いの明確化」を挙げた人が43・8%に達し、小沢氏を含めてメール問題でもたついた民主党執行部への評価は依然厳しいものの、民主党支持率は2月下旬当時の11・3%のどん底から、19.9%へと持ち直し、対照的に小泉内閣の支持率が47・2%と、今月1、2両日の前回調査より7・3ポイントもダウン、昨年8月以来の50%割れとなっている。しかしそれでも72.7%の人が「政権交代が実現するとは思わない」と答えている。

<<「うんうんうん。そんなところだ」>>
 確かに民主党に小沢一郎新代表が誕生したことによって、政界を取り巻く空気は大きく変化し、民主党への期待度は高まり、逆に小泉政権と、小泉後を目指す安倍氏を始めとする自民各派にとっては安穏としておれない状況をもたらしたといえよう。
 問題はまさに、小沢民主がいかにして「自民党との違いの明確化」を打ち出せるかにかかっているといえよう。
 その点について小沢新代表は4/10のマスコミ各社とのインタビューで、次のように語っており、小泉政権との違いを打ち出そうとはしており、そのことは過小評価すべきではないが、現段階ではこれ以上のものでもなく、それ以下のものでもないというところにその中途半端さがうかがえるのではないだろうか。
 ――靖国神社参拝問題に関する小沢氏の考えは分祀(ぶんし)論とは異なるのか。
 「(A級戦犯は)戦場で亡くなった戦死者ではないから、間違いを正せということだ。(戦没者をまつるという)本来の靖国の姿に戻したい」
 ――間違いをやっているところに、首相は参拝すべきではないと。
 「そうだ」
 ――前原誠司・前代表は「中国脅威論」を唱えていた。
 「日本国民にとって『脅威だ』と政治家が口にした以上、それを取り除かなければならなくなる。だから、小泉首相でさえ(脅威論を)言っていない」
 ――小泉首相は郵政民営化法案の反対者を公認しない手法を取った。
 「その一点では正しかった。郵政民営化を公約して自民党総裁に当選しており、反対する方が自己矛盾だという論理は正しい。私だってそうやる」
 ――非自民、非共産で選挙協力していくのか。
 「選挙協力かどうかは別だけど、共産党だけいらないと言う必要はない。反自公、非自公が過半数を取るかどうかだ」
 ――「ニュー小沢」は純化より融和を少し大事にするということか。
 「うんうんうん。そんなところだ」

<<「自分も変わらなくてはならない」>>
 小沢氏は「自分も変わらなくてはならない」というセリフで代表選を制したのであるが、どう変わるか、何をどう変えるかという肝心かなめの点、単にその横柄で独裁主義的な姿勢やだまし討ち的な裏工作主導の姿勢を変えることも確かに必要ではあろうが、最も決定的な政策面では、小沢氏の考えははっきりしていないし、はっきりさせることが出来ないのではないかという疑念である。もちろんたとえそうではあっても、与党・政治権力の無責任体制と堕落、腐敗、失政をきびしく批判・追及し、過ちを正すことが野党の重要な役割であり、責任でもあり、これまでの民主党にはそれが欠けていたことからすれば、その点で民主党が大きく変わるとすれば大いに評価できよう。
 しかしそれでも問題は、小泉政権に対して基本的な政治理念で対決できる政策を提示できるかどうかにかかっているが、小沢氏のこれまでの日米同盟、規制緩和と自己責任確立、小さな政府・官僚支配の排除などの主張と政策においては、小泉自民と大差はないし、これらの点において本質的な相違を打ち出せなければその政治的リーダーシップは旧態依然たるものに陥ってしまうものといえよう。
 確かに小沢氏は、4/7の代表選の際の演説で「一部の勝ち組だけが得をするのは自由ではない。民主党の目指すべき社会は、黙々と働く人、努力する人が報われる公正な社会だ」と述べ、これまでの小沢氏本来の新自由主義的な規制緩和論や自己責任論とは、明らかに異なる論点に政策対立の軸足を移そうとしていることは評価できよう。
 そしてまた、小沢氏が他の野党勢力との連携について、共産党をも含めて「自民党、公明党の政権では駄目だという人たちとは、どなたでも協力する。当たり前のことだ」という姿勢を明確にしたことも大いに評価できよう。具体的な連携の努力を注視したいところである。

<<「デモさん、ストさん」>>
 折りしもイタリアでは、小泉首相とは政治スタイルにおいても対米追随においても極めて近く、相似形でもあった極右ベルルスコーニ政権がついに敗北した。5年ぶりの政権交代である。全野党が「オリーブの木」以来の野党左派連合・「ユニオン(連合、団結)」という「統一戦線」を形成して、野党統一候補が与党連合を打ち破る成果を勝ち取った結果である。5月には、イラク戦争について「不正で正当化できないものであった」とし、「戦争はテロを封じ込めるどころか、それを激化させるのに貢献しただけだ」と批判し、「わが軍隊を撤退させ、再建を援助する民間部隊を派遣する」との方針を示しているブロディ政権が発足する。
 そしてフランスでは、首切り自由な不正規雇用を全面的に拡大しようとした新雇用制度に対して、高校生や大学生から始まった大規模なデモとストライキ、それに連帯し、自らの問題として立ち上がった労働組合のストライキの決行とデモによって、この新雇用制度の撤回を勝ち取っている。歴史的な意義深い勝利だと言えよう。
 このイタリアとフランスの事態の進行が示している貴重な教訓は、最も重要な国の進路にかかわる戦争と平和の問題、新自由主義の横行による富の一極集中と格差拡大、社会保障の削減、基本的人権と社会的民主的諸権利の制限と抑圧に対抗して、労働者と庶民の権利を擁護する広範な連帯と連合、統一戦線、そして直接民主主義の発露であり、権利行使の具体的形態でもあるデモとストライキに象徴される大衆運動こそが民主主義の根幹を支え、展望を開くことが出来る唯一の道であるということであろう。
 ところがこうした動きを報道する日本のマスコミでは、4/2付け朝日に示されているように、冨永格パリ支局長の、「重要政策が街角で揺らぐ風土も健全といえるのか」などとして、「デモさん、ストさん」「フランスの階級闘争」を不健全なものとして冷笑し、軽蔑、揶揄する記事を平気で掲載する程度の低さである。共産党をも含めて、日本の野党勢力がこうしたマスコミの世論誘導に流されずに、大衆運動をもって小泉政治と対決することこそが望まれているといえよう。
(生駒 敬)