ASSERT 355号 (2007年6月16日発行)

【投稿】 安倍政権崩壊への機会到来
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【投稿】 「反戦の母」シーハンさんを決別させたもの
【書評】 『人はなぜグローバル経済の本質を見誤るか』 
【書評】 「被爆動員学徒の生きた時代―広島の被爆者運動」

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【投稿】 安倍政権崩壊への機会到来

<<自爆テロ>>
 いよいよ安倍自公連立政権は、自らの焦りと暴走によって自壊する兆しを濃厚に見せ始めてきた、と言えよう。
 疑惑と不安が底無しの状況になってきた「消えた年金」問題では、冷静な対処・問題の解決を完全に忘れ去り、ドロナワ式に作成し、わずか5時間の審議で無理矢理に強行採決した「年金時効停止特例法案」によって、5095万件にも及ぶ給付漏れ処理にフタをし、苦情処理は第三者機関に丸投げし、さらに社会保険庁を解体して、それを新たな特殊法人・「日本年金機構」に移行させることによって、政府・与党の全ての責任をこれに転嫁させ、一切合切の責任からの逃げ切りを計ったのである。そして首相自ら、何の根拠もその現実的可能性も示しえないままに「一年以内に5000万件の照合作業を終える」と発言したが、その舌の根も乾かぬうちに、1430万件ものそもそもコンピューター入力作業さえしていない未入力案件の存在がさらに明らかになり、今や泥沼の底なし状態である。しかも消失記録の件数は調査すればするほど増え、しかもその多くはもはや破棄されたり、確認不能である事が明らかになっている。社会保険事務所には多くの人々が押しかけ、そのずさんな処理にあきれ、怒り、暴発寸前ともいえよう。
 6/7、自民党の中川幹事長は、政府が08年5月までに「宙に浮いた年金記録」5000万件の照合作業を終える方針を示したことについて、「安倍総理が責任を持つと言った。これ以上重い言葉はない。『できなければ私が政治責任をとる』という意味だろう」と述べ、遂に政治責任に触れざるをえなくなった。ところが、言うに事欠いて、こうした年金記録の問題が次々と明らかになる状況について「社会保険庁を国家組織として存続させたい勢力が(社保庁改革法案を廃案にするため)自爆テロをしかけている。これからも自爆テロが続くことを覚悟しなければならない」と語ったのである。氏のヤカラ的体質をあらわにした暴言であり、責任を果たす代わりにこうした暴言でしか事態に対応できない、現在の安倍政権の末期的症状を象徴するものである。

<<民主が自民を上回る>>
 そして、安倍首相個人にとっては、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」以来の「靖国派」の仲間であり、共に歴史教科書への「慰安婦」記述の掲載削除を要求し、NHKの「慰安婦」番組に圧力をかけてきた松岡利勝農水相という現職閣僚を自殺に追いやるというショッキングな事態に見舞われた。この時点ですでに首相の面相はこわばり、落ち着きをなくしだしている。当然、一時持ち直していたかに見えた安倍内閣の支持率も急落し始めた。
 松岡農水相の自殺前に行われた毎日新聞の世論調査(5/26-27実施)ですでに、内閣支持率は32%に急落し、不支持率は44%と差は広がり、参院選で勝ってほしい政党では、民主が42%、自民が33%と逆転してしまったのである。
 6/1-2に実施された共同通信の世論調査でも、安倍内閣の支持率は35.8%と5月中旬の前回調査から11.8ポイントも下落し、昨年9月の内閣発足以来、最低、不支持率も48.7%と10.5ポイント上昇している。参院選を今、実施した場合の投票先では、民主党が28.8%と、自民党の26.5%を超え、36.6%が民主党中心の政権を望み、自民党中心の政権の継続を望むのは35.7%で、いずれも初めて、民主党が自民党を上回る結果となった。
 6/2-3の朝日新聞の世論調査でも、内閣支持率は30%に下落、政権発足後最低を更新、不支持率は前回の42%から49%に上昇している。
 安倍内閣のその場しのぎの発言やドロナワ式のザル法の作成、責任逃れの強行突破姿勢、そして争点回避のためにとってつけたような環境問題重視が見透かされ始め、大きく流れが変わり始め、これまで安倍政権を支持していた層までが背を向け始めたのである。
 事態は、これまでの安倍内閣発足以来の、「政治とカネ」疑惑、靖国参拝組の復党、定率減税の廃止と負担増、「貧困と格差」の拡大、支離滅裂な「教育再生」論、そして右派「安倍カラー」としての教育基本法改悪・憲法改悪・集団的自衛権行使へのなりふりかまわぬ暴走姿勢が、今回の年金問題と結びついて、安倍内閣の存続そのものを揺るがす重大な政治的危機、もはや取り戻しのきかない、退陣する以外解決の方途がないような政治的危機へと発展していると言えよう。
 このまま参院選に突入すれば、自民党の敗北、自公与党連合の参院過半数割れ、安倍内閣の退陣は必至となろう。

<<「指導力の発揮」>>
 こうした安倍政権にとっては思いもかけない事態の進展、危機的局面に直面して右往左往し、必死にもがき、あわてふためき、冷静さも失って打ち出した対応策が、「指導力の発揮」であった。中川幹事長は「指導力を発揮することで安心感と信頼感が広がる。V字形の支持率回復もあり得る」と期待をかけている。首相は、「1年で調査を終える」「審査する第三者機関をつくる」「過去に遡って、責任の所在をはっきりさせる」「社会保険庁の歴代長官の責任を追及する」と、約束を連発しているが、すべて空手形であり、化けの皮がはがれつつある。
 その一方で空手形ではない、安倍首相のはきちがえた「指導力」は、民主主義的議論・討論を極限にまできり縮めた強引な国会運営、国会は“議論の場=議会”ではなく、議会を単なる採決マシーンと化させ、一週間に三度の強行採決を行うという危険極まりない独裁型強権政治に向かって暴走させ始めたのである。それはさすがに河野洋平衆院議長が「連日の強行採決は国民から見ていかがなものか」と釘を刺さざるをえない事態を招来し、こうして焦れば焦るほど、その短慮と性急さはさらに政治不信を増大させ、自らの政治危機を深刻化させている。
 かくして安倍政権は自滅・自壊への道を歩み出したと言えよう。安倍政権崩壊への絶好の機会が到来している。しかしこれを現実のものとし、実際に安倍政権を退陣へと追い込むためには、野党が、こうした与党の政治姿勢と明確に対決する姿勢を明らかにし、そのもとに連合・結集することが不可欠であろう。まさにこの点で野党には多くの心ある人々がふがいなさと不安を感じており、それを克服出来るかどうかを注視している。その意味では、与野党共に、大胆な政治的再編成が要請されているとも言えよう。
(生駒 敬)