ASSERT 361号 (2007年12月15日発行)

【投稿】 民主党は「大連立」拒否の姿勢を明確にすべき
【投稿】 「対テロ戦争」こそ疑惑の源泉
【投稿】 再び、生活保護と最低賃金について
【書評】 「株式会社はどこへ行くのか」(上村達男・金児昭著)
【コラム】 ひとりごと---サブプライム問題が明らかにしたもの---

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【投稿】 民主党は「大連立」拒否の姿勢を明確にすべき

<<「出合い頭解散」>>
 日本の政局は、いつ衆議院の解散・総選挙があってもおかしくない時期に突入している。防衛省疑惑がアメリカをも巻き込んだ米軍再編と密接に絡んだ一大疑獄事件の様相を呈し始めており、守屋前次官関連だけで一件落着を図ろうとする政府・与党・防衛族の必死の抵抗の中で、国会審議は混迷と泥沼化に陥り、国会会期の再延長、給油新法再議決をめぐって、「出合い頭解散」が現実味を帯びだしている。参議院での首相問責決議可決という事態になれば、それは「年明け冒頭解散になっていいのか」と自民党は民主党をけん制し、これに対し民主党は山岡国会対策委員長が「2月5日公示、17日投開票」説を公言している。
 しかしこうした表面上の駆け引き、けん制が交錯しながらも、自民・公明与党連合、そして民主党を中心とする野党、それぞれに軸足が定まらず、不安と動揺、爆弾をお互いに抱えたまま事態が推移している。それは互いに挑発しあいながらも、実は互いに落としどころや妥協点を探りあうという、有権者の期待と相反しかねない事態の反映でもあろう。
 民主党の前原誠司副代表は12/5、国会内で講演し、参院で審議中の補給支援特別措置法案について、「会期延長せずにやめた場合、インド洋での活動は長い中断になる。これで解散されたら、うちの党は困る。国益を考えているのかと(批判される)。私はどうやって選挙演説したらいいか分からない」と語り、情けない自らの動揺を吐露している。
 自民党の伊吹幹事長は、次の衆議院選挙後に政界再編が起きるとして、与党が負けた場合には自民党から離党者が相次ぐことになりかねない、「かつて細川内閣ができた時に我慢できない人が自民党からドロップアウトした、それと同じことが起こりかねない」との見方を示し、選挙の時期については、「公明党の支持母体は参議院選挙で疲れ果てている」と述べ、解散を先延ばしする意向を表明している。しかしまたその一方で、「自民党が負けるおそれがあるから総選挙を遅らせているとはまったく考えていない」、むしろ「自民党だけの党利党略を考えればいま総選挙をしたほうがはるかに有利だ」とも述べ(12/6、日本外国特派員協会での講演)、支離滅裂である。
 もちろんその背景には、民主党小沢代表を抱き込んだ「大連立」構想の仕掛けによって生じた民主党の動揺、混乱を利用すること、そして福田内閣のソフトポーズ・対話路線によって支持率上昇を狙うという戦略であったが、期待に反して内閣支持率は発足当初より逆に下降傾向が明瞭になり出したこと、その後の国政選挙の指標ともなる11/18の大阪市長選では、自公連合は大差で敗退したことが大きくのしかかっている。有権者は、参院選に引き続き、大連立や談合・総与党化路線ではなく、政策対決に基づく政権交代をこそ要求していることを明らかにしたといえよう。

<<「ねじれ国会」の成果>>
 政府・与党は、与党提案案件が一本も通過しないこうした事態を「ねじれ国会」がもたらした悪しき事態として描き、「国会が機能していない」と思い通りにならない状況を嘆き、伊吹幹事長は「民主党は子供がピストルを持っているようなものだ」と不満を募らせ、町村官房長官は野党が「同意人事を政府の提案通りに通さなかった理由を説明しろ」などと食って掛かる発言までする事態である。
 しかし先の参院選においてもたらされた、参議院における野党優位、与党少数派という事態こそが、政局に緊張をもたらし、これまでのようにやすやすと数々の腐敗や疑惑にふたをすることを許さず、安倍政権下ではろくな議論もなされずに連発された強行採決がいまや不可能となり、逆に野党提案の参議院での可決という事態に与党側が何らかの形であれ応じざるをえないという積極的で前向きな事態を生じさせている。
 参議院では、航空自衛隊をイラクから撤退させるためのイラク特措法廃止法案が11/28の本会議で賛成多数で可決され、さらに年金保険料流用禁止法案、農業者個別所得保障法案も可決され、衆議院に送られている。国会同意人事では、官僚の天下りを許さない不同意が56年ぶりになされた。その他にも肝炎医療費助成法案、障害者自立支援法応益負担廃止法案等が提出され、被災者生活再建支援法改正案が議員立法で可決・成立し、これまでは政府・与党が頑として認めてこなかった住宅本体部分への支援金の適用が可能となる成果を生み出している。これらはまさに政権交代を要求する民意と、それに基づいた「ねじれ国会」の成果といえよう。
 また、年金問題や薬事行政、防衛省疑惑や政官財の癒着に関して国政調査権によるチェックや情報開示が以前と比較すれば格段に進み、応じざるをえなくなったことは、これまた参議院での与野党逆転、「ねじれ国会」の成果でもある。これまで与党側の圧倒的多数支配によって封じ込められ、単なる通過手続きとして形骸化させられていた国会の本来の機能が、ここに来てようやくのことで発揮され始めたばかりなのである。
 ここでもしも福田・小沢会談に引き続く「大連立」構想が民主党側で受け容れられ、自民党・公明党と民主党の大連立政権ができていたとすれば、衆参両院とも与党連合の圧倒的多数支配となり、戦前の大政翼賛体制以上の国会支配体制が成立するところであった。その帰結するところは、衆参両院を支配する与党連合の独裁体制と、それによる国会の形骸化、民意への敵対であったといえよう。

<<中曽根提案>>
 ところが、民主党の小沢代表は辞任撤回騒動後も、いまだに「大連立は正しい」との発言繰り返し発言している。当初、小沢氏は11月7日の辞意撤回発言で、「党首会談をめぐり、国民、民主党の支持者、党員、同僚議員に迷惑をかけ、心よりおわびする」「いま思えば、「総選挙に向けて頑張ろう。私が先頭に立つ」とまとめればよかったと反省している」と語っていたものが、11月16日付朝日新聞のインタビューで、「政治判断は今でも正しいと思っている」と答え、11月20日には、記者会見で「実際に政権の一端を担うことで、自民政権では絶対できないことを実現できれば国民は喜ぶのではないか。より支援が集まると思っていたし、今もそう思っている」と語りだしたのである。辞意撤回発言での反省発言は一体なんだったのか、疑わせるものであり、信頼を裏切るという意味では自らの政治生命の終わりを語るものでもある。自己に有利な党内情勢の反映でもあろうが、まだ懲りていないのである。党内で反対されたからやめたが、ことと次第によってはいつでもその方向に動き出すという意思表明でもある。それは民主党役員会の決定を公然と否定するものでもある。
 小沢代表を援護するかのように、自民党の中曽根元首相は「衆院解散後の(自民、民主両党の)公約に、『情勢によっては国益を中心に両党の協力関係を構築することもある』という程度のことを入れ、国民の了承をある程度得た後で、大連立に入ることが適当だ」と述べ、自民、民主両党が次期衆院選公約に大連立を明記すべきだとの考えを示した(12/2付け読売新聞)。敵もさるもの、まだあきらめてはいない。むしろこれからが本番と考えているのであろう。
 岡田克也副代表(元代表)が「大連立をすれば最終的に自民党に都合のいい形になる。…小沢氏が「大連立は間違っていなかった」というなら食い違いがある。党の方針にかかわるのできちんと議論しないといけない」(毎日新聞11/20付)と語ったのは当然である。鳩山幹事長も日本記者クラブで講演し、「小沢氏は今でも連立が正しいと思っているのかもしれないが、そんなに単純ではない」と述べ、小沢氏の大連立を批判している(毎日11/20付)。そうであるならば、民主党はこの際、「大連立」構想を明確に否定・拒否し、さらに総選挙前に代表を差し替えるべきであろう。民意を獲得し、政権交代を実現させるためには、最低限、このことに踏み切らなければならない時期に到来しているといえよう。
(生駒 敬)