ASSERT 363号 (2008年2月23日発行)

【投稿】 岩国市長選と沖縄少女レイプ事件
【投稿】 米軍再編と地方自治体
【投稿】 「地方財政健全化法」の狙いは何か
【投稿】 労働者派遣法改正問題について
    --規制緩和は労働者を保護しない--
【感想】 アサーティブ(assertive)であること
【コラム」ひとりごと--橋下大阪府知事は何処を向いている--

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【投稿】 岩国市長選と沖縄少女レイプ事件

<<ウソ・デタラメの大量ビラ>>
 岩国市長選の結果は非常に残念な結果ではあったが、井原前市長と井原氏を支えた人々はよくここまで善戦したと、筆者は評価している。米空母艦載機移転反対を貫いた井原前市長と移転容認派の前自民党衆院議員福田良彦氏との差はわずか1782票にすぎない。得票は、45,299票対47,081票で、得票率にすれば、49%対51%、得票率の差はわずか1.92%である。
 しかも肝心の米空母艦載機移転問題については、中国新聞の出口調査によると、米空母艦載機移転について「反対」は46%、「賛成」は 8・4%、「どちらかといえば」を加えると、「反対」は市民の65.7%、「賛成」は24.0%にすぎなかったという現実である。朝日の調査でも、「反対」47%、「賛成」18%であり、福田氏に投票した人でも、「賛成」は30%しかなかったのである。共同通信社の出口調査でも、艦載機移転に「賛成」と明確に答えた人は全体の二割にも届かず、福田氏に投票した人でも七割以上は「やむを得ない」と消極的な賛成であった。また、毎日の出口調査で注目すべきなのは、「移転反対」は41%、「反対だが仕方がない」20%、「条件付き賛成」33%、「無条件で賛成」2%で、問題はこの「移転反対」の人のうち、11%が福田氏に、「仕方がない」の82%が福田氏に投票した、という事実である。
 今回の選挙戦で福田陣営は、米空母艦載機移転問題については、「条件闘争」を主張し、「騒音・治安の問題で受忍の限度内との確約を取る」、「まず住民の不安を解消する。国の言いなりにはならない」、「国が土日の訓練中止など条件が飲めないなら反対」などと表明し、石破茂防衛相が、米軍再編計画に盛り込まれた岩国基地への艦載機移転の重要性を訴えたいと現地入りを打診したが、福田陣営は「来ると逆効果」と防衛相の来援を断り、自民党の閣僚や国会議員の応援演説も求めず、“政府・与党色”を消すことに懸命の努力をする一方で、井原陣営に対しては徹底したデマ攻撃と中傷攻撃を繰り広げた。井原市政のままでは財政が破綻すると強調するビラが何種類も作られ、「岩国は夕張のように財政破綻する」「井原市長が再選されtると税金が二倍になる。年金もなくなる」「艦載機を受け容れたら、国から五千億円から一兆円が交付され、市民も一人二万円もらえる」といった恐喝と脅し、アメとムチのウソ・デタラメのビラが大量にまかれたのである。「移転反対だが、仕方がない」という人々には、結果的にはこれが効いたとも言えよう。

<<民主党の情けなさ>>
 さらに福田陣営にプラスしたのは、福田氏の議員辞職に伴い、四月二十七日に実施される衆院山口2区補選に出馬を予定している民主党の平岡秀夫陣営が、あきれたことに「福田票もほしい」と自主投票を決め込んだことであった。民主党の情けなさ、ふがいなさが福田陣営を大いに喜ばしたことは間違いがない。
 こうしてやっとのことで僅差の勝利を獲得した福田陣営であるが、ウソ・デタラメの約束、「条件闘争」は自らに跳ね返ってこざるをえない。中国新聞2/11付けが報じるように、「政府が今後も強硬な姿勢を取り続ければ「移設反対」の機運が再燃する可能性もはらんでいる。」ことは間違いない。
 町村官房長官は2/12、十日の岩国市長選を受けて「米軍再編が着実に進む環境が整い、歓迎している」と市長選の結果に大いに満足の意を表明したが、艦載機が計画通りに移ってくれば、岩国基地の米軍機はいまの2倍の120機に増え、沖縄県の嘉手納と並ぶ極東最大級の航空基地となる。さらに米軍再編後の岩国は、「アジア最大の基地」になり、米軍と自衛隊を合わせると、現在の沖縄・嘉手納の100機をも超える142機の航空機が配備され、年間離着陸は嘉手納の約7万回を遙かに超える約10万回に、米兵・軍属・家族は嘉手納の約9700人を超す1万0300人になる計画である。福田新市長を待ち受けているのは、このような厳しい現実であり、福田氏当選にもかかわらず圧倒的多数の住民がこのような艦載機移転に反対しており、移転の結果がもたらす、そして基地の拡大がもたらす災厄の発生が避けられないことである。
 そして現実に、2月10日の岩国市長選が終わった途端に、沖縄で米兵による女子中学生レイプという悲惨な事件が発生し、表面化した。沖縄では、今回と同じ沖縄市で昨年10月に、米軍人の息子が強姦致傷容疑で逮捕されており、今年の1月にも、普天間基地所属米海兵隊員2人によるタクシー強盗致傷事件など凶悪犯罪が続いている。事件が起こるたびに、米軍当局は毎回のように「綱紀粛正」や「二度と事件を起こさぬ」と約束するが、事件は後を絶たないばかりか、凶悪化している。

<<レイプ事件の共犯者>>
 今回の女子中学生レイプ事件で新たに明らかになった問題は、在沖縄米海兵隊は04年6月以降、犯罪防止のため、若い隊員に対しては夜間外出を制限しているが、今回の容疑者は基地外に住んでいたためその対象外であったこと、基地外に住む米兵・軍属や家族は野放し状態であり、なおかつ米軍基地を抱える自治体が基地外に居住する米兵の数を米側に照会しても、地位協定をたてに、公表を拒否していることである。
 さらに問題なのは、基地外の日本の統治権内に居住しているにもかかわらず、日本政府でさえ「実態を十分に把握していない」(岸田文雄沖縄・北方担当相、2/15)という現実である。米軍の情報紙によれば、基地外に住む米兵の数は〇六年で8595人、在日米軍の兵力約四万八千人の約18%、軍属や家族を加えると、これを大きく上回る米軍居住者の実態が地位協定をタテに公表を拒否されているのである。今回の犯罪が発生した沖縄県北谷町では、町職員が一軒一軒歩いて調査し、約千二百世帯が米軍関係だとの推計を出したが、これは北谷町の全世帯の実に約15%にもあたるという。こうした米軍人とその関係者がパスポートもビザもなしに出入国し、外国人登録も免除されて、居住できるという特権のもとに野放し状態で放置されているところに、見過ごしえない犯罪の温床があることは否定しえない。
 さらに、社民党の保坂展人議員によって明らかにされたことであるが、国交省が自己財源であるかのように私物化している問題のガソリン税を財源とする道路特定財源を流用して、佐世保道路建設の名の下に、たった8棟の「米軍住宅」を28億2千万円もかけて建設していたという事実である。道路特定財源が、米軍住宅建設に化けてしまうという許しがたいこうした事態がこれまで問題にされることもなくお手盛りで横行してきたのである。しかもその米軍住宅については、日米両政府とも地位協定をタテに実態を明らかにしない。
 今回のレイプ事件に際しても政府は、「今回の事件で地位協定の問題は生じない」として、見直しをまたもや否定している。レイプ事件の共犯者は日本政府であるとも言えよう。
 筆者は、このレイプ事件に対して、2/16の米総領事館への緊急抗議行動に参加したが、いちゃもんをつけ食って掛かる人間もいたが、道行く人々の関心も高く、その抗議行動は日本政府への抗議行動でもあった。沖縄県民の、そして岩国を含め基地を抱える住民の怒りと不信感は、米軍ばかりか日本政府に対しても向けられていることを銘記すべきであろう。
(生駒 敬)