ASSERT 371号 (2008年10月25日発行)

【投稿】 投機と市場原理主義経済の破綻
     ---アメリカ発世界金融恐慌をめぐる闘い---
【投稿】 民主党は大胆なマネー戦略を
【投稿】 迷走する麻生政権 --民主党は明確な対案で臨め!--
【コラム】 ひとりごと--金融危機の第二幕は景気急降下--

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【投稿】 投機と市場原理主義経済の破綻
     ---アメリカ発世界金融恐慌をめぐる闘い---


<<つかの間の「歓呼の声」>>
 アメリカ発の金融恐慌は、10月に入ってさらに深刻な状況に突入していることを明らかにしている。10/9のニューヨーク株式市場は、ダウ工業株平均株価が9000ドルを大きく割り込んで、8579・19ドルへと急落した。7営業日で2271ポイントにも上った下げ幅は、史上最悪の記録であった。ちょうど1年前の昨年10/9は、1万4000ドルを超える史上最高値を記録していたものがこれである。
同じく10/10、東京株式市場の日経平均は9000円台を一挙に割り込み、8276円43銭まで急落、7営業日連続で、下げ幅は計3091円に達した。下落率は53年3月のスターリン暴落に次ぐ史上3位の9.62%であった。ITバブル後の戻り高値である昨年7/9の1万8261円から1年3カ月で半値以下になってしまったのである。そして外国為替市場ではドル売りが加速、円は一時、1ドル=97円91銭まで上昇している。
この9月からの1カ月余りで、世界の主要市場の下落率は日本が36%を記録、米国が25%、英国が23%、中国・上海が16%に達している。大和総研の試算では、世界の株式市場の時価総額は8月末の約49兆ドルから、9日時点で28%減の約35兆ドルに。日本の国内総生産(500兆円強)の3倍近い14兆ドル(約1400兆円)が吹き飛んだとみられている。
 翌10/10、急遽ワシントンで行われた主要7カ国財務省・中央銀行総裁会議(G7)は、各国の主要金融機関に対する公的資金を使った資本注入などを盛り込んだ行動計画を発表して、「現下の状況は緊急かつ例外的な行動を必要としている」と危機的な状況であるとの認識を強調、金融市場の機能回復、銀行の資本増強、預金者保護策の3点を強調し、金融システム全体に影響を与えるような重要な金融機関の破綻を避けるため、あらゆる政策手段を総動員する、との姿勢を打ち出した。
 これを受けて米政府は、総額2500億ドル(約25兆円)の公的資金を使い、金融機関に資本注入する新たな経済危機対策を発表し、まず大手9金融グループに合計で約1250億ドル(約13兆円)を注入し、全米の金融機関に広げることを明らかにした。
このG7の合意を受けた10/13のニューヨーク株式市場は、前週末比936.42ドル高の9387.61ドルと急騰し、過去最大の上げ幅を記録、9000ドル台を回復し、10/14の東京株式市場でも、日経平均株価の上げ幅が1000円を超え、9300円台に上昇。マスコミ報道は一斉に、「歯止めがかかった」「金融危機がいったん遠のいた」「金融不安は後退した」「市場は歓呼の声で応えた」とはやし立て、歓迎ムード一色であった。
ところがこうした希望的観測は二日と持つものではなかった。10/14のニューヨーク株式市場は、9700ドル台まで急伸した後、再び急落、302ドル下落し、9310.99ドルで取引を終了した。翌10/15にはさらに 前日より733.08ドル安い8577.91ドルに急落、下げ幅は、777ドル安を記録した先月29日に次ぐ史上2番目の急落を記録することとなった。
もちろん東京市場も、10/16、日経平均の終値は前日比1089円02銭安の8458円45銭に再び急落、下落率は11.41%と53年3月スターリン暴落の10.0%を上回る史上2位の暴落となった。市場関係者の中には、03年4月に付けたバブル後最安値=7607円の更新を警戒する声も出始めている。
10/16未明には主要8カ国(G8)首脳があらためて「金融機関を強化し、金融システムへの信頼を回復し、共通の責任を果たす」とする異例の緊急声明を発表し、金融危機の回避のため国際協調を打ち出し、各国政府が公的資金の注入や不良債権の買い取りなどを宣言しているにもかかわらず、市場はこれを無視し、株価下落を押しとどめるものではなかった。金融の信用危機ばかりか、政府の信用危機の表明とまでいえよう。

<<ブレトンウッズ2>>
 もはやアメリカを中心としたG7の時代は終わった、G7ではこの世界的金融恐慌を克服する力も能力もないということが、誰の目にも明らかになってきたのである。それはまた同時に、サブプライムローンの破綻から今日の金融恐慌に至る、虚業が実業を圧倒するマネーゲームと投機的金融資本主義の破綻、とりわけブッシュ政権が押し進めた軍備増強と戦争経済優位がもたらした国家的破綻と泥沼状態、その結果としてのアメリカの凋落、そして無法と無責任・格差拡大・弱肉強食の市場原理主義、新自由主義がもはや継続しがたく、持続不可能であり、崩壊の危機に瀕している端的な現われでもある。
そして金融システムの機能不全、金融恐慌の進展には、いよいよ実体経済に直接的悪影響をもたらし、大型倒産・解雇を初めとするあらゆる価値破壊を含む負の連鎖が控えている。すでにアメリカを始め各国にそれらの兆候が拡大し始めている。
 これからまさに金融恐慌から世界経済恐慌への進展をめぐって、いかにそれを回避し克服するかをめぐって熾烈な闘いが展開されざるを得ないともいえよう。
 すでに金融恐慌の進展によって、ドル離れが急速に拡大せざるを得ない状況に直面している。この機会に英政府は、ドルと米国債の破綻を予期し、ロシアやBRICの参加を前提とした新たな国際通貨会議、ブレトンウッズ2を開くことを提唱している。欧州連合(EU)首脳会議は、米国中心の国際金融制度を改革するために、取引の透明性強化や規制導入を含む金融の新秩序づくりを目的に主要8カ国に中国やインドなど新興国を加えた拡大首脳会議の開催を求めるという。ブラウン英首相は「1940年代に国際通貨制度を創設した時に匹敵するようなビジョンが必要だ」と語り、サルコジ仏大統領は「21世紀の金融システムを再構築する機会を逃してはならない」と強調する。IMFはすでに、ドル一極の基軸通貨体制の持続は困難であるがゆえに、ユーロや人民元、円、ペルシャ湾岸諸国(GCC)の通貨などの、他の諸国・地域の有力通貨を加えた通貨の多極化が必要だと表明している。
 当然、ドル基軸通貨体制の転換が必要ではあるが、何よりも決定的に重視され、指摘されねばならないことは、もはや破綻し泥沼化しているイラク戦争、アフガニスタン戦争を即刻停止させ、戦争経済から平和経済への転換を明確にすることこそが、世界経済恐慌回避への最大の近道であり、そうした転換を前提としない新たな国際通貨体制では危機の回避は不可能であることを認識しなければならないであろう。
 次いで明らかにされなければならないことは、市場原理主義からの決別である。マネーゲームとも言われ、カジノ資本主義とも言われる投機経済、野放しの弱肉強食経済に対して、徹底した民主的規制と国際的共通課税を課すことを国際的ルールとし、それらを原資とした地球規模の環境対策、貧困対策、食糧危機対策、これらを包括した国際的規模のニューディール政策に前進すること、資本や資金の流れをこれらの政策に合流させることを明らかにすることである。
 こうした転換の結果としてこそ、世界経済恐慌への進展を食い止めることが可能となろう。

<<「解散引き延ばし」>>
 金融危機を通じて無力の象徴となったブッシュ政権、共和党政権はいよいよ瓦解しようとしている。11/4の米大統領選の投開票日は、ブッシュ氏が率いてきた共和党政権の退場、オバマ民主党政権の登場という歴史的な一日となろう。軍事強硬路線をあくまでも継承しようとするマケイン氏に対して、オバマ氏はイラクからの米軍の撤退を公約とし、対話路線を外交の基本としていることからすれば、重要な前向きの転換といえよう。しかし一方で撤退米軍をアフガン増強に回していたのでは元の木阿弥である。この際、日本をアフガン戦争にさらに深く関与させ、財政的軍事的負担を増強させようとしている政策も危険である。対話路線とも矛盾せざるを得ない。マケイン候補が、一時伯仲していたにもかかわらず、オバマ氏に差をどんどん開けられたのは、皮肉なことにブッシュ氏の経済政策の破綻、金融恐慌に対する無策であった。ここでも徹底した平和経済への転換が問われていたのである。
 一方、日本の麻生政権は、こうした経済危機と政策転換については、まったく無知無能力無方針をさらけ出したままである。
 麻生首相は10/10発売の月刊誌「文芸春秋」に寄稿した論文のなかで、「国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢(民主党)代表にぶつけ、その賛否をただしたうえで国民に信を問おうと思う」「強い政治を取り戻す発射台としてまず国民の審判を仰ぐのが最初の使命だ」と述べて、臨時国会の冒頭、所信表明演説と各党の代表質問が終わった時点で衆院解散に踏み切る考えだったことを明らかにしている。
ところが、その後の米国発の金融危機の進展に驚き、金融不安がいっそう広がり、内閣支持率も下がってくるとなると、ずるずると解散戦略の修正を余儀なくされ、もはや追い込まれ解散しか出口がなくなりつつある。金融危機の広がりはすでに八月の末には明瞭な形を取っていたのであり、自らの総裁選で浮かれていた九月中旬にはその深刻さ、危機の日本への波及がさらに明らかになっており、そのような現状を正確に把握することさえ出来ない、情勢の読み誤りにも気づかない政治的能力のなさを露呈している。しかも所信表明演説が、自らの与党としての政策を明らかにし、それへの支持を訴えるのではなく、野党に対する質問・攻撃演説に終始するという前代未聞のあきれた無責任さをさらけだし、それが「強い政治を取り戻す」基本姿勢だと錯覚し、悦に入っていたのである。肝心要の政策は、後手後手のアメリカへの追随政策しかない、「麻生カラー」を出すための政策減税、第2次補正予算についても「詳細を示したら期待はずれになる。骨格だけ示して解散したほうがいい」といわれる始末である。
 麻生政権にとっての唯一の救いは、小沢民主党が「解散引き延ばし」に対抗するために、麻生政権が成立を願っている問題法案、民主党が反対してきた法案まで十分に審議することなく、審議を早めて早期採決、成立させ、結果的に麻生に貢献していることである。問題の対アフガン給油新法改正案もろくな論議もなく成立させられようとしている。このような姑息な対応は必ず手痛いしっぺ返しを受けるであろう。民主党にも平和政策としっかり結びついた経済政策が問われているのであり、亜流アメリカ追随政策と決別することが問われていると言えよう。
(生駒 敬)