ASSERT 374号 (2009年1月24日発行)

【投稿】 恐慌の深化と自公政権の立ち往生
【投稿】 人員削減の嵐と派遣労働
【本の紹介】 『監獄ビジネス − グローバリズムと産獄複合体』
【新春訪問】 吉村励先生と金融恐慌を語る(2008-01-10)
【コラム】 ひとりごと---連合結成20年に思う---

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【投稿】 恐慌の深化と自公政権の立ち往生

<<惨憺たる世論調査結果>>
 年明け早々のメディア各社の世論調査は、麻生内閣にとって惨憺たるものであった。もはや見放されたも同然であると言えよう。
 『朝日』の調査(1/10〜11日)によると、内閣支持率は前回調査(12月)の22%を下回る19%で発足以来最低、不支持率は67%に達した。定額給付金については、「やめた方がよい」が63%に達し、「政府の方針どおり配った方がよい」の28%を大きく上回った。「いま投票するとしたら」として聞いた衆院比例区の投票先でも、自民25%(前回28%)、民主38%(同36%)など、民主の自民に対するリードが拡大している。
 『読売』の調査(1/9〜11日)によると、支持率は前回調査(12月)から0・5ポイント減の20・4%、不支持率は5・6ポイント増の72・3%に跳ね上がった。内閣の不支持率が7割を超す高水準に突入したのは、森内閣以来の危機的状況であり、定額給付金についても、「支給を取りやめて、雇用や社会保障など、ほかの目的に使うべきだ」との意見に賛成と答えた人は78%に達し、支給撤回に反対する意見は17%に過ぎない状況となった。
 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査(1/10〜11日)でも、内閣支持率は18.2%に落ち込み、不支持率は13.1ポイント増の71.4%とこれも7割を超えている。政党支持率でも、自民党が23.4%だったのに対し、民主党は26.6%となり、自民党は麻生政権発足以来、初めて逆転を許す結果となっている。さらに、次期衆院選の比例代表で投票する政党を聞いたところ、民主党は41.5%を獲得し、29.0%の自民党を大きく引き離している。定額給付金については、「ばらまき」で好ましくないと答えた人が75.1%。給付金の財源2兆円についても「ほかの政策に回すべきだ」と答えた人は79.8%にものぼった。
 『共同通信』の調査(1/10〜11日)でも、支持率は昨年12月の前回調査から6・3ポイント下落し19・2%。不支持率は8・9ポイント増の70・2%と森内閣以来約8年ぶりに70%を超えた。定額給付金については「評価しない」が70・5%。麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表の「どちらが首相にふさわしいか」への回答は、小沢氏が46・4%(昨年12月調査から11・9ポイント増)で麻生氏の22・1%(11・4ポイント減)の2倍以上となった。望ましい政権の枠組みは「民主党中心」が51・4%と初めて過半数になり「自民党中心」30・5%に20・9ポイント差をつけた。次期衆院選比例代表での投票先も、民主党が39・7%で自民党26・3%を13・4ポイント上回った。政党支持率も民主党が2・4ポイント増の31・1%、自民党は1・4ポイント減の27・5%と、麻生内閣では初めて逆転した。
 『時事通信』の調査(1/9〜12日)では、麻生内閣の支持率は17.8%にまで落ち込み、2カ月連続で2割を割り込んでいる。次期衆院選の比例代表の投票先では、民主党が37.1%で、自民党の21.7%を倍近く引き離し、「首相にふさわしい政治家」では、小沢一郎民主党代表が同4.4ポイント増の39.2%。同3.1ポイント減で20.8%にとどまった麻生首相を圧倒する結果となっている。

<<「カッコつけ」>>
 1月5日の新年早々に勢い込んで通常国会を召集し、昨年末まで出し惜しみにしていた第二次補正予算案を提出し、本予算との一括採択に持ち込む政権政党の、与党連合の優位性を前面に押し出したにもかかわらず、その直後の世論調査結果がこの有様である。内閣支持率が20%を切り、不支持率が70%を超えるような内閣は、過去の例からして半年と持つものではない。
 自民・公明連合は、麻生という首相の首をすげ替えて出直しに打って出るか、それともここまでくればすげ替える首も、その時間的人材的余裕もなく、あえて麻生首相とともにこのまま突っ走り、心中するのか、その岐路に立たされているといえよう。
 ここで、世論調査でも圧倒的に不人気であり、愚作とさえ指弾されている「定額給付金」について、あえて政策転換を行い、「定額給付金は取りやめる」、ないしは民主党の言うように「補正予算から切り離す」と言えば、事態は一気に前進するかもしれないが、それはすぐさま政治的危機に結びつき、与党連合の崩壊から、内閣総辞職が不可避となろう。もはや公明党の選挙協力なしには自民党は存立しえず、自民党と連合することによってしか自己の党派的利害を押し通すことが出来なくなってしまった公明党にとっても、そうした政策転換は呑めるものではない。しかしそれぞれの党の内部事情は別物である。さまざまな主張が飛び交い、事態は「定額給付金」問題から、2011年度からの消費税増税問題へと軋轢が強まり、さまざまなグループ形成、派閥連合、その離合集散に執行部は慌てふためき、収拾が取れなくなってきている。
 「定額給付金」については、首相自身がその目的・性格について二転三転し、「人間の矜持」とまで言って受け取りを固持する姿勢を示していたはずが、いつのまにか自らが受け取るかどうかの明言を避け、閣僚17人中11人が受け取る意向を表明したが、5人は態度保留、首相側近のはずの甘利明行革担当相は「辞退」を明言し、これに頭にきた細田幹事長が「カッコつけ」と口撃するなど、閣僚、党執行部の意見がまったくバラバラなのである。
 さらに消費税増税問題では、塩崎恭久元官房長官が「消費税を引き上げる前に、まず公務員制度改革や国会議員の定数削減などに取り組まなければ国民の理解は得られない」と方針の見直しを主張し、中川秀直元幹事長も「(一一年度からの)消費増税は党内で一度も議論されていない」と調整不足を批判、さらに決定的なのは自民党税調の責任者である津島雄二税調会長が1/17、麻生首相が税制改正関連法案の付則に11年度からの消費増税の明記を指示したことについて「(与党の)税制改正大綱では時期は明示していない。付則でも明示する必要はない」と語るに至っている。
 痺れを切らし自民党を離党し別グループを結成した渡辺喜美・前行革担当相は、前記のFNNの調査では与野党全体の“首相にふさわしい人”で、小沢、小泉に続く3位で、現・麻生首相をさえ上回る事態となっている。

<<「解散は麻生太郎が決断する」>>
 問題は、麻生首相自身にこうした混乱する事態を収拾させる指導力もなく、ここまで政治的政策的能力もなく、自らの言動でさえ次から次へと迷走し、しゃべればしゃべるほど身内や支持勢力に反対勢力をわざわざ拡大させる、与党にとってはまったく期待はずれの予想外の人物であったというところにあろう。しかしいまさら引くに引けなくなったのが実情であろう。
 年頭1月4日の記者会見で、麻生首相は「解散は総理大臣、麻生太郎が決断する」とわざわざ息巻いて見せたが、もはや追い込まれ、解散の時期を失してしまった現状では、4月の予算成立直後か9月の任期満了直前か、いずれにしても事実上、首相は自らのイニシャチブによる解散権の行使は封じ込められてしまったともいえよう。
 しかしながら、日本の政治のこうした末期的症状は、金融恐慌から、いよいよ実体経済がどんどん悪化する世界的経済恐慌に突入している最中にあっては、きわめて否定的で許しがたい状況をもたらすものであることが警告されねばならない。
 不正規雇用労働者・派遣労働者の解雇、住宅からの追い出し、正規雇用労働者にまで及ぶ人員整理と賃下げが、資本の一方的論理で横行し、今後さらに失業者があふれ出す事態を前にして、その場しのぎの責任逃れの対策しか講じられない現在の政治状況は、一日も早く退場させることこそがもっとも緊急に要請される課題と言えよう。経済恐慌の深化に対応できる、アメリカの戦争政策と手を切り、戦争経済からの脱却こそが恐慌克服の最大の近道であることを明らかにし、大胆な政策転換を実行できる政権に取り替えられなければならない。その際の要は、小泉・竹中路線の自由競争原理主義・規制緩和路線を全面的に改め、決別することを鮮明にし、健康保険から雇用保険、労働法制に至るまで、ずたずたに切りちじめられて来た労働者、全勤労者、若者から高齢者に至る全世代の権利・人権、社会保障制度、社会的セイフティネットを再建し、再確立する、そのような政策転換でなければならない。この点では与党のみならず、野党にも自由競争原理主義・規制緩和路線から脱却できない、むしろいまだにその路線に拘泥する路線からの決別が要請されている。
(生駒 敬)