アサート No.377(2009年4月25日)

【投稿】 外国人管理と排除---入管法改定の狙うもの---

<外国人管理を一元化>
 政府は、3月3日、6日「住民基本台帳法」(住基法)「出入国管理及び難民認定法」(入管法)および「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国に関する特例法」(入管特例法)の各改正案と「外国人登録法」(外登法)の廃止案を閣議決定し、開会中の171通常国会に上程した。
 日本はこれまで、外国人については長年、在日朝鮮人を主要な対象として、「入管法」(1951年制定当時は政令)と1952年制定の「外登法」の2本立てで管理をしてきた。
 しかし在日コリアンを中心とした民主勢力の闘いによる、指紋押捺制度の段階的な廃止から全廃など「外登法」の度重なる改正や、1991年の「日韓覚書」に基づく特別永住資格=「入管特例法」制定によって管理体制形骸化が進んだ。
さらには90年代以降の「合法(日系ブラジル人、中国残留邦人の子孫など)」、「非合法(オーバースティ、無資格者など)」を問わない外国人労働者の大幅な増加による外国人の多国籍化によって、軸足を「ニューカマー」に移した管理システムの再編が迫られていた。
 これまでも政府・法務省はアメリカの進める「対テロ戦争」への協力を口実に、2007年にはテロリストの上陸を阻止するとして、新規入国者からの指紋採取と写真撮影=「生体情報認証制度」を導入するなど、巻き返しとも言える「入管法」の強化を行ってきた。
 しかし、今後東南アジア各国とのFTA(経済連携協定・現在はインドネシア、フィリピンと締結)による、介護・福祉労働者の受け入れ、さらには来年からは難民の第3国定住制度試行(当面はミャンマー難民)がはじまる。こうした「外圧」に加え、経済界の要求する安価な労働力の確保という「内圧」により、日本社会の「国際化」は一層進むこととなる。
 こうした情勢の変化を踏まえ政府・法務省はこれまで、外国人の「出入り」だけをチェックしていた「入管法」へ在留状況の管理システムを加味し、一気に外国人管理一元化を強行することとしたのである。
 今回の「法改正」では在日外国人を@旧植民地出身者とその子孫など「特別永住者」A定住者など各種在留資格を持つ「中長期在留者」(前述の日系ブラジル人や中国残留邦人の子孫、FTAによる労働者などはここに含まれる)Bオーバースティなど「非正規滞在者」という三つのカテゴリーに分類することとなっている。
 これら外国人のうち@とAには、それぞれ法務省が地方自治体を通じICチップを埋め込んだ「特別永住者証明書(永住者カード)」および「在留カード」を発行し、「改正住民基本台帳法」に基づく外国人住民基本台帳に登録する一方、Bについては「在留カード」の発行や台帳への登録は行われない。

<処遇改善は不十分>
 今回の改訂の問題点は、@については、表面上日本国籍者に準ずる自治体住民として扱うものの、ひきつづき法務省の管理下におかれ、カードの常時携帯義務や罰則は「外登法」廃止にも関わらず、「改正入管特例法」でそのまま継続される。
一方で目立った改善点は「特別永住者カード」への記載事項が、現在の「外国人登録証明書」に比べて減るくらいであり、今回の「改正」では事実上の放置状態に置かれていると言っても過言ではない。
 Aについては、とりわけ「不法就労」摘発のため、「在留カード」には就労可否欄がもうけられ、仕事に就こうとした場合カードを提示しなければならない。さらに事業所も「就労不可」の外国人を雇用した場合、ペナルティを受けることになる。
 また「在留カード」登録事項の転居や転職など各種変更については、変更から14日以内など届け出を細密、厳格化し、偽造や虚偽記載など違反者には刑事罰が科せられる。
 入管局が登録事項等に虚偽が無いかを、外国人が就労、留学している事業所、学校に情報提供を義務づけ、居住する自治体とは専用回線で情報の照合を行い、警察とも綿密な連携を進めるとするなど、管理システムと法務省権限の強化が著しいものとなっている。
 Bについては、住民サービスの対象から除外されるのはもちろん、基本的には「日本に存在してはならない者」として扱われる。
 外国人や支援団体からの批判に対し、政府・法務省は、労働基本権が保障される「就労研修」資格新設や、再入国要件の緩和を認めるなど、一定の権利拡大や住民票の発行等、「市民サービス」の向上をもって、在日外国人の利便性に配慮した内容であることをアピールしている。

<目的は管理強化と排除>
 しかし、見てきたように外国人関連法案改定の目的は、主には「中長期在留者」の管理強化であり、無資格在留者の排除徹底であることは疑いない。
 とりわけ、先に述べた就労以外にも公共、民間の各種サービス、特に入居やクレジットカードなど契約関係において「在留カード」の提示が求められることが「指導」され、そうした光景が常態化する恐れがある。   
 さらに入管一元管理により、これまで「外登法」下では、福祉や教育施策などにおける、自治体や公立学校の裁量が可能であったが、「改定入管法」下では、「法定受託事務」であっても、それらが大幅に制約され自治体が「入管の出先化」することが懸念される。
 これらのことは多くの外国人支援組織が進める取り組みに、重大な影響を及ぼすことになる。今後懸念されるのは、現在の経済情勢とあいまって、排外主義が進みかねないことである。
 この間の事態は、経済界の唱える「外国人労働者受け入れ」の本質が、いかなるものであるかを明らかにした。
 すでに日系ブラジル人など多くの外国人労働者が職を失い、家族共々不安な日々を送ることを強いられている。安定した在留資格である「定住者」でさえこうした状況に置かれているのである。
 在留資格を持たない「非正規滞在者」はさらに悲惨な状態にある。この間大きく報道された、フィリピン人のカルデロンさん一家のケースでは、長女ののり子さんへの在留特別許可は出たが、両親は帰国せざるを得なくなった。ネット上では一家と支援者に対する悪罵が飛び交っている。

<共生社会の実現へ>
 しかし、一家が住んでいた埼玉県蕨市では、約2万人の支持署名が集まり、3月3日市議会で「カルデロンのり子さん一家の在留特別許可を求める意見書」が全会一致で可決された。また、大阪府八尾市でも、同様のケースで退去強制が迫られている中国人一家への支持署名が1万7千人を超えている。
 入管法改定に対する全国レベルの取り組みでは、1月24日には多くのNGOが東京に結集し「管理ではなく共生のための制度を!NGO 共同声明」が発せられた。さらに2月19日には日弁連が「新たな在留管理制度の構築および外国人台帳制度の整備に対する意見書」を公表、管理強化に走る政府・法務省に警鐘を鳴らしている。
 麻生内閣は未曾有の不況を奇貨として、日本人と外国人の分断、さらには外国人相互の分断を図ろうとしている。そして新たな外国人管理制度は、住基ネットを端緒とする市民管理システムを、さらに高度化させるための「社会実験」ともいえる。
 民主勢力は日本から排除されようとしている外国人に対する個別支援と、入管法改定反対の取り組みを結合させ、全ての在日外国人が安定した生活を送れる制度作りを進め、真の国際化、多文化社会を実現しなければならない。 (大阪O)

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