アサート No.377(2009年4月25日)

【コラム】 ひとりごと---群馬火災から、再び「無届老人ホーム」について---

○筆者は、昨年12月のNo373に「無届ホーム増加の意味するもの」を書いている。介護施設不足から、無届老人ホームが増加していること、無届であることから行政のチェックが届かず、安全上も問題が多い事を指摘した。○3月19日群馬県の「無届老人ホーム」で起こった火災は、正に心配していた事が起こったというしかない。○多くの入居者が死亡したこともあり、それ以後マスコミも「無届老人ホーム」の問題を取り上げ始めている。○あの火災以後に焦点化したように見られているが、実は1月のNHKの番組以降、厚労省は、一定の実態把握に動きだしていた。○その番組では、千葉県や茨城県など関東地方に、無届老人ホームが多い事実を取り上げていた。その入居者の多くが東京都内から転居してきており、東京都内の福祉事務所が生活保護費を支給しているというのである。番組では6畳くらいの和室に男女の区別なく3〜4人を詰めこんている「施設」が紹介されていた。○問題の多い無届ホームに入所させている点もさることながら、本来これらは介護サービス付きのアパートといった性格であり、入居すれば生活保護の実施は、「施設」のある千葉や茨城の自治体に引きがれるのが原則である。しかし、入居後も引き続いて東京都内の福祉事務所が保護費を出していたのであった。○こうした保護の特例実施例が1000人以上存在している、そんな番組であった。○東京都内での認知症や一人暮らしが困難になった高齢者の施設は圧倒的に不足しており、このような実態が生まれたのである。○生活保護は単に費用を負担するだけではなく、定期的な訪問が必要である。しかし、都内から遠距離にある「施設」では、訪問も途絶える。どんな実態の施設なのかの把握もできない。○今回の群馬の「施設」で多くの死亡者を出したのは東京都墨田区から転居した方が多かった。○このNHKの番組以降、1月下旬であっただろうか、厚労省から福祉事務所に「社会福祉各法に規定されない高齢者住宅」についての実態調査依頼が届いている。○この結果は群馬火災の後、3月31日に公表され、全国に無届老人ホームは579箇所と報告されている。(老人福祉法適用の施設は4110、15都道府県がゼロと回答。)しかし、これはかなり少ない数字であろう。そもそも現状では「届出の必要のない」施設ということであり、実態把握は難しいからである。おそらくその倍以上の「施設」があると見るべきだろう。○群馬火災に驚いた厚労省は、生活保護受給者が入居している無届ホームについて、生活保護のケースワーカーが、火災防止機器の有無や防火体制を調査するよう指示を出している。消防署の専門官がすべきことであり、根本的な把握になるはずもないが。○1990年代であったか、長崎県の老人グループホームの火災で多数の死者がでた。その後老人施設の場合、延べ面積が1000uを越える場合、各部屋にスプリンクラー設置が義務付けられた。○無届ホームの場合は、単なるアパートとして建設されるか、既存の住宅や建築物が利用される。○当然、防火義務は建物の持ち主ではなく入居者自身ということになる。○要介護3や4の高齢者が対応できるはずもない。○今回の群馬の施設も、夜間は外から施錠されていた。火事になって対応が遅れた場合、外に出ることもできないのである。○既に指摘したように、無届ホームには、生活保護受給者が多い。住宅費や介護費用が必ず支払われるわけで、事業者は安定な経営が出来る。当然防火施設などは、消防署の指導があっても、「うちはアパートや」と逃れようとするのである。○これも「貧困ビジネス」の一つである。貧しいものをネタに金儲けをしている連中が経営している場合が多い。○かつて、NPOを名乗って働けなくなった人をアパートに入居させ、食事は弁当をひとつ、生活保護費をピンはねする「ビジネス」が流行ったが、この時はひどい待遇に入居者が逃げ出した。しかし、高齢者の場合、それができない。もの言えぬ人も多いからである。○貧困からの脱却を支援するのが福祉である。しかし、無届ホームの実態は、貧しい人を「貧困な施設」に送り込んでいることを示したのである。○今後厚労省は、一定の基準を満たさない「無届ホーム」への生活保護費に規制を設けて対応することになると思われる。○しかし、問題は圧倒的な施設の不足である。寝たきりを増やさないための介護保険制度であったが、核家族化の進行と単身生活者の増加により共同生活施設の需要は、想定をはるかに超えているようにも思える。小規模であっても、しっかりとした安全の運営が確保された、そして安価な共同生活施設の充実が求められている。(佐野秀夫)

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