ASSERT 379号 (2009年6月20日発行)

【投稿】 自壊の道を歩む麻生政権と民主党の課題
【投稿】 朝鮮半島情勢と麻生総理のお気楽
【投稿】 北朝鮮の2度目の核実験と日本の立ち位置
【本の紹介】 『スラム化する日本経済 4分極化する労働者たち』
【投稿】 総選挙と同化した東京都議選
【コラム】 ひとりごと--政治を堕落させている自民党・公明党政権-

トップページに戻る

【投稿】 自壊の道を歩む麻生政権と民主党の課題

<<「麻生ー、さっさと辞めろー」>>
 麻生首相は、やることなすことすべて裏目に出ている。唐突にいかにもしたり顔で提案し、閣僚に指示しながら、事態が混乱するや「最初からこだわっていない」などと空とぼけ、ドタバタ劇を演じて尻すぼみとなった厚生労働省の分割騒動がその典型であった。内閣を統率し、一貫した姿勢を堅持すべき首相としての、「矜持」も識見もなければ、指導性など皆無であることが、その稚拙極まりないその場しのぎの首相の姿勢に露骨に表れている。単に誰かの提案に飛びついただけで、要するに「首相の座」に居座り続けていたいだけなのである。
 とにかく人気回復のネタはないかと、「百年に一度の危機」を利用して、何の一貫性も政策基調も持たない巨大なバラマキ予算を編成してはみたものの、それでも一向に支持率が上昇しない。それは当然である。ばらまく一方で、平然と消費税増税を口にするのである。それも12%への増税である。そこには増税を説得、納得させることのできる哲学も一貫した政治的主張も皆無である。庶民感覚どころか、政治感覚さえ喪失しているのである。
 6/10に政府が示した「骨太の方針2009」は、社会保障費を毎年度2200億円抑制する方針をあくまでも継続し、11年度以降、消費税率を12%程度に引き上げる方針を示し、首相はこれを選挙の争点化することに固執している。与党内からは反対論、異論が続出し、マニフェストの取りまとめさえできない状況である。
 そこで首相は人気回復に躍起となり、露出度の高いイベントに片っ端から出向き、その得意とするはずの笑顔を振りまくが、いまやわざとらしいその悪代官ばりのニヤケきった不快な笑顔がかえってマイナス材料となっている。
 5/31、東京・府中の東京競馬場に姿を見せた麻生首相は、日本ダービーを制した横山騎手らに「内閣総理大臣賞」を授与するため例の笑顔で登場した。すると、会場から「麻生ー、さっさと辞めろー」というひときわよく通る声が投げかけられ、一瞬、会場がどよめいたという。

<<事実上の三くだり半>>
 麻生内閣はいまや完全な末期の迷走状態にあると言えよう。その極め付けが、今回の鳩山総務相の辞任問題である。現与党が息を吹き返す政治的選択としての麻生首相に期待された唯一の活路は、小泉・竹中主導の新自由主義路線、規制緩和・民営化路線からの決別・転換であった。その象徴が日本郵政問題であった。
 郵政民営化の本質が、340兆円にも及ぶ郵貯マネー、簡保の資金をアメリカの金融資本に開放し、叩き売る、そしてゴールドマン・サックス=住友連合にその草刈場を提供する、さらに小泉内閣の規制改革・民間開放推進会議議長となり、規制緩和の旗振り役となって政商役を買って出た宮内会長のオリックスへの利益供与をなんとしても実行する、ということであった。郵政民営化問題の表面化は、こうした隠されていた悪質な目的の本質的な膿が噴き出してきたのであった。不当に安く払い下げられようとした「かんぽの宿」問題は、その隠し切れなかった薄汚れた取引の一端が噴出した重大な疑獄事件であったと言えよう。それらの薄汚い取引がさらに暴露されることを恐れた小泉・竹中一派、それに連なる政財界が必死になって西川社長の続投と擁護に回り、麻生首相に脅しをかけ、首相はうろたえ、決断することもできず、鳩山総務相から「辞任」という事実上の三くだり半を突きつけられたのである。麻生氏を首相候補に担いだ盟友であり、有力閣僚である鳩山氏から、首相の方針は「不正義」と決めつけられて、辞表を叩きつけられたのである。麻生政権の統治能力の欠如がこれほどあからさまに露呈されたことは、もはやこの政権を支える自民・公明連合には明日はないということを示すものであったと言えよう。
 それは、鳩山総務相の辞任会見の「世の中、正しいことが通らない時があるんだなと。今はそういう思いですね。どんなに不透明で悪事をはたらいていても、私がそのことを、はっきり説明を世の中に対してもしてきましたが、今の政治は正しいことを行っても認められないことがあると。・・・私もそういった意味では、政府、内閣を去ることは躊躇しませんでした。」という言葉にはっきりと表れている。

<<「官僚の、官僚による、官僚のための政治」>>
 あの読売新聞でさえ、「今回の問題の核心は、「かんぽの宿」の不明朗な売却手続きなど不祥事が続発しているのに、西川社長が経営者としての責任を果たさなかったことにある。ところが、鳩山氏の発言が「罷免されても再任に反対する」とエスカレートするにつれ、「社長を辞めさせれば郵政民営化が後退する」といった、別次元の議論にすり替わってしまった。小泉元首相に近い中川秀直・自民党元幹事長から、首相が鳩山氏の肩を持つなら「本気で戦う」という発言まで飛び出すなど、党内抗争の兆しを見せ始めていた。首相が鳩山氏を更迭したのは、党内が混乱し、亀裂が一層拡大することを恐れたためだろう。しかし、不祥事に対する説明不足や経営責任を問う鳩山氏の主張には、肯(うなず)ける部分が少なくない。鳩山氏の指摘に共感する人は多いのではないか。」(6/13付け社説)と指摘される事態である。
 この段階での麻生首相の活路は、鳩山総務相と軌を一にし、西川社長の続投を認めず、郵政民営化の実態にメスを入れ、日本郵政問題で筋を通すところにしか存在しなかった。そうすれば、起死回生、支持率回復への大きな足がかりを得ることが可能であった。なぜなら、対する民主党は、新自由主義路線、規制緩和・民営化路線からの転換については態度があいまいであり、むしろ新自由主義路線を唱える議員が少なくはないし、鳩山・民主党党首自身が、閣内不一致を指摘すれども、麻生内閣の路線を「官僚の、官僚による、官僚のための政治」などといった的を打たざる主張を展開している状況である。「政策目標なき政権交代」論はあっても、何よりも、現在の経済恐慌に対する経済政策、不況・失業対策がいまだに不明確、かつ一貫性に欠ける状況にある。民主党ならびに野党連合が決定的な勝利を得るためには、このことこそが問われていると言えよう。
 しかし、自壊の道を歩む現在の麻生首相を先頭を先頭とする自民・公明与党連合党幹部は、民心を読む力をまったく失ってしまっている。民心の、世論の動きにまったく「鈍感」な政治には、もはや退場以外の道は残されていないと言えよう。
(生駒 敬)