ASSERT 381号 (2009年8月22日発行)

【投稿】 広島・長崎平和宣言と「政権交代」選挙
【投稿】 クリントン訪朝と日本の孤立化
【投稿】 貨幣の暴走をどう止めるか
【本の紹介】 『[新訳]大転換 市場社会の形成と崩壊』

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【投稿】 広島・長崎平和宣言と「政権交代」選挙

<<「オバマジョリティー」>>
 8月6日の広島平和宣言、8月9日の長崎平和宣言は、いずれも今年4月のオバマ米大統領のプラハ演説の画期的意義を強調し、「核兵器のない世界」に向けて「核兵器廃絶のために活動する責任」、唯一の被爆国として世界に占める「被爆国の責任」を強調する、新しい希望を託し、それを実現させる活動の責任を強調するものであった。
 秋葉忠利・広島市長は、その広島平和宣言において「今年4月には米国のオバマ大統領がプラハで、『核兵器を使った唯一の国として』『核兵器のない世界』実現のために努力する『道義的責任』があることを明言しました。核兵器の廃絶は、被爆者のみならず世界の大多数の市民並びに国々の声であり、その声にオバマ大統領が耳を傾けたことは、『廃絶されることにしか意味のない核兵器』の位置付けを確固たるものにしました。
 それに応えて私たちには、オバマ大統領を支持し、核兵器廃絶のために活動する責任があります。この点を強調するため、世界の多数派である私たち自身を『オバマジョリティー』と呼び、力を合わせて2020年までに核兵器の廃絶を実現しようと世界に呼び掛けます。その思いは、世界的評価が益々高まる日本国憲法に凝縮されています。」と強調し、来年のNPT再検討会議で、2020年までに全ての核兵器廃絶を目指す「ヒロシマ ・ ナガサキ議定書」(2020ビジョン)が採択されるように取り組むこと、オバマ演説を支持し核兵器廃絶の責任を自覚する「オバマジョリティー」(核廃絶への世界の多数派)として力を合わせることを呼びかけた。
 そして田上富久・長崎市長も、長崎平和宣言において「日本政府はプラハ演説を支持し、被爆国として、国際社会を導く役割を果たさなければなりません。また、憲法の不戦と平和の理念を国際社会に広げ、非核三原則をゆるぎない立場とするための法制化と、北朝鮮を組み込んだ『北東アジア非核兵器地帯』の実現の方策に着手すべきです。 」と訴え、核兵器保有国と開発疑惑国の個々の指導者の名前を挙げて、「オバマ大統領、メドベージェフ・ロシア大統領、ブラウン・イギリス首相、サルコジ・フランス大統領、胡錦濤・中国国家主席、さらに、シン・インド首相、ザルダリ・パキスタン大統領、金正日・北朝鮮総書記、ネタニヤフ・イスラエル首相、アフマディネジャド・イラン大統領、そしてすべての世界の指導者に呼びかけます。被爆地・長崎へ来てください。」と呼びかけたのであった。

<<「宿題をサボる小学生」>>
 本来なら、この被爆都市両市の平和宣言を受けて、オバマ演説を具体化させるために提起された呼びかけに応え、日本が核廃絶の積極的なイニシアチブをとることこそが期待される。ところがこれに応えるべき政府・与党には、誠実な態度は一片たりとも示すことができず、逆に「核兵器への依存」をこそあらためて確認するものであった。
 麻生首相は6日、広島市内で「核を持って攻撃しようという国が隣にある」と述べ、「日本を守るために日米安保体制は引き続き重要」、現状では米国の「核の傘」が必要との認識を強調。9日の長崎での記者会見でも、核軍縮の一環として核兵器の先制不使用を米国に求めることについて問われると、「核兵器を保有している国が『先制攻撃をしません』と言ったとしても、その意図を検証する方法はない。日本の安全を確保するうえで現実的にはいかがなものか」と否定的な見解を示すだけであった。これでは核兵器の先制使用、先制攻撃を認めるものであり、この発言に対して、長崎市内で首相と面談した団体の一つ、財団法人長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄会長は「被爆国の首相としてはあるまじき発言。この場で撤回するよう求める」と抗議されている。
 8/14の「各政党の核廃絶に関する公約について」の記者会見で、秋葉・広島市長は、「(核廃絶という)『当たり前のことは盛り込まない』と麻生総理はおっしゃったが、それは間違いだ。マニフェストは考えを示すもの。『大事なことは言わないのだ』といったら、選挙は出来ない。麻生総理は一方で、『核の傘が必要だ』ということも言っている。(選挙に当たって)何が総理の考えかという基準がなくなってしまう。それはきちんとやっていただく必要がある」とし「言葉だけでなく具体的に政権の座にある人が、願いを実現すべく最大限の努力をすべき」と、麻生首相を批判し、「日本国民の悲願が核廃絶にあるならば、いろいろな努力、外交努力、信頼醸成などさまざまな国や市民と連携をとりながら辛抱強く前に進むべき」と指摘し、さらに「努力をしないためにそういう理屈(核抑止力)を持ってきている。後付の理由は良いから、努力をするのが大事だ。努力をしない理由をつくるのは誰でも出来る。小学生が夏休みの宿題をサボるのと同じ」と、首相の論理と認識の甘さに鋭く切り込んでいる。

<<「政権を取った錯覚」>>
 もはや御用済み寸前の事態にある麻生首相に対比して、民主党・鳩山代表には大きな期待が寄せられているが、これまたなんともふがいなく、頼りない姿を露呈している。
 8/12日、21世紀臨調の主催で行われた自民・麻生、民主・鳩山両党首の対決討論では、鳩山氏には、歴代自民党政権、とりわけ小泉−安部−福田、そして麻生政権がここまで日本社会を破綻に陥れ、内政・外交ともに行き詰まりをもたらしたその重大な責任を追及する攻勢の姿勢がほとんどなきに等しく、麻生首相側の財源論に引っ張りまわされて防戦・守勢の姿勢ばかりが目立つ、先が思いやられる情けない展開となってしまった。政権交代必至との報道に乗せられて、地に足が着かず、浮ついた右往左往に追い込まれているともいえよう。
 問題の平和・外交政策においても、8/9、鳩山氏は長崎市内で被爆者団体の代表者らと懇談し、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則について「唯一の被爆国として守っていくことが重要で、法制化という考え方もある。党としてしっかり検討する」と述べ、政権交代を実現した場合、非核三原則の法制化に取り組む姿勢を明らかにした。これは大いに歓迎すべきことであるが、その三日前の8/6には、「法律にすれば逆に、政府が代わると力関係の中で、曲げられてしまう可能性がある」と、法制化に慎重姿勢を示していたばかりであり、政策の歩み寄りを本来歓迎すべき社民、国民新両党からさえ「政権を取った錯覚を起こしたような軽々しい発言はやめるべきだ」(国民新党の亀井静香代表代行)との苦言が出される状況である。
 この問題と関連する核密約に関しても、先月の7/14の記者会見で、鳩山氏は「非核三原則が堅持される中で、北朝鮮の問題も含め、必要性があったからこそ現実的な対応がなされてきた。(今後も)その方向で考えるべきだ。」と述べ、現に裁判で争われている密約を公然と認め、それを「現実的な対応」として承認し、さらには非核三原則のうち「持ち込ませず」を廃止する二原則化の方向を打ち出していたのである。
 現政権ならびに米政権にいとも簡単に妥協し、擦り寄り、迎合さえする。政権に就けば、多少の柔軟性や修正も求められるであろう。その場合でも明確な説明責任が問われてくる。しかし政権につく前から政策を変更するのであれば、政治への信頼性は根本から崩れてしまう。
 8/14、民主、社民、国民新の野党3党は、今回の総選挙の「共通政策」を発表した。「共通政策」は、〈1〉消費税率の据え置き〈2〉子育て支援〈3〉年金・医療・介護など社会保障制度の充実――など6項目で構成。冒頭で、「小泉内閣が主導した市場原理・競争至上主義の経済政策は、国民生活、地域経済を破壊した」と指摘し、家計支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やして国民生活を立て直す方針を強調している。
 外交安保政策については「選挙後の連立政権協議の課題」として先送りし、社民党が主張する非核三原則の法制化も盛り込まれず、前文で「唯一の被爆国として日本国憲法の『平和主義』をはじめ『国民主権』『基本的人権の尊重』の3原則の遵守を確認する」と記すにとどめている。
 浮ついた、実態の変わらない政権交代ではなく、根本的な政策転換を実現する政権交代にすることこそが求められているといえよう。
(生駒 敬)