ASSERT 384号 (2009年11月28日発行)

【投稿】 進行するデフレ不況と鳩山内閣の無策
【投稿】 軍事同盟見直し以外に道なし―沖縄米軍基地問題―
【投稿】 成長なき経済下での民主党の「コンクリートから人へ」の政策転換をどう評価するか
【本の紹介】 憲法第九条を発案したのは誰か〔新説〕

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【投稿】 進行するデフレ不況と鳩山内閣の無策

<<3年5カ月ぶりのデフレ宣言>>
 11/20、菅直人副総理兼経済財政担当相は、日本経済について「総合してみると、緩やかなデフレ状況にある」として、今や日本経済が物価下落が長期化する「デフレ」に陥っていると宣言し、このデフレが景気を腰折れさせる恐れがあるとの見方を示さざるをえなくなった。その前日の11/19、経済協力開発機構(OECD)が、日本のデフレが2011年まで続くとし、日銀に量的金融緩和で戦うべきだと提言したが、日銀は翌11/20の金融政策決定会合で政策を現状維持し、白川総裁は量的緩和の拡大など追加策は不要との考えを示し、日銀のデフレに対する認識の甘さが問われるところであるが、いずれにしても、政府が明確にデフレを認めるのは06年6月以来、3年5カ月ぶりである。
 戦後初めて政府がデフレを認定したのが01年3月であったが、それ以来今日に至るまで、デフレ脱却宣言をすることができないままに、今回再びデフレがぶり返したというわけである。
 これまでのデフレに対する「小泉・竹中」路線に象徴される自公連立政権の「デフレ対策」は、徹底した自由競争原理主義を推し進め、規制緩和の名の下に派遣労働・非正規労働を全産業にいきわたらせ、コストカットと労賃切り下げによって大企業・大資本の競争力を高め、内需拡大ではなく、輸出依存・輸出主導によって景気回復を図る、それに呼応して、郵政民営化を初め、公的社会的資産を安値で売り飛ばし、医療・教育・社会保障財源を徹底的に削減し、セーフティネットをずたずたに切り崩し、その結果として「小さな政府」を実現するというものであった。
 その結果はいかなるものであったか。「いざなぎ景気」を超える景気回復が続いたと喧伝されども、景気回復を実感したものは皆無に近く、潤ったのは内部留保を極大に溜め込んだ一部の大企業・大資本、マネーゲームで巨利を稼いだ金融資本、一部の資産家だけであり、貧困と格差がこの期間に一挙に拡大し、社会はずたずたにぶっ壊されてしまったのである。こんな路線は早晩破綻することが明らかであったが、昨年来の世界経済恐慌の進行によって、このような路線こそが全世界にただならぬ経済不況をもたらした根源であることが暴露されてしまったわけである。

<<チェンジできない弱点>>
 このような「小泉・竹中」路線、市場経済原理主義・弱肉強食・規制緩和路線に対して、民主党が対置したのが「国民生活が第一」という路線であった。時代は明らかに転換点にあり、アメリカでもブッシュの同様な路線に対抗してオバマ政権が登場し、ブッシュ政権に追随し、「小泉・竹中」路線を踏襲してきた自公連立政権は敗退し、民主党に勝利をもたらした。ある意味では必然的な勝利であったといえよう。
 問題は、時代は転換点にあるにもかかわらず、その転換の方向がいまだに確立されず、むしろ逆行状況さえ現出されているところにあるのが現状といえよう。
 オバマ政権はイラク・アフガン戦争から決定的な決別ができず、アフガンの泥沼に足踏みをしており、サブプライムローンで暗躍し、金融恐慌をもたらした金融資本への規制策はいまだに野放し状態にあり、ゴールドマンサックスなど生き残った大手金融資本は、金融ミニバブルを演出し、再びマネーゲームで巨額の利益を手にしようとしている。
 そして鳩山内閣は、国際舞台での華々しいデビュー、その積極的な平和友好政策、反核政策、環境政策によって、これまでの自公政権とは明らかに異なるプラスイメージをもたらし、「国民生活が第一」のマニフェスト実現に向けた内閣の姿勢はプラス評価をもたらし、高い支持率をもたらした。しかしここにきて、これらのプラス評価にはいずれにも実が伴っていないばかりか、むしろ前政権と代わり映えのしないマイナス評価、逆行する兆しさえ明らかになってきている。そして閣内は不統一、普天間基地撤去問題で明らかなように、まったくばらばらで無責任な発言が横行する事態である。
 そして最も致命的な最大の弱点は、鳩山政権には「国民生活が第一」をもたらすべき経済政策がまったくなきに等しく、むしろ「小泉・竹中」路線の根幹たる市場経済原理主義・規制緩和路線が民主党の中に色濃く根を張っており、それらが前面に踊りだしてきていることであろう。

<<「恐竜」論争下の「鳩山大不況」>>
 問題はデフレ不況の進行に対する危機認識の薄さ、軽薄さ、当然そこから出てくる不況克服対策への関心の薄さ、経済政策の不在、無策である。雇用情勢が一段と厳しさを増し、雇い止めが拡大し、完全失業者数が12カ月連続して増加し、失業率がさらに悪化し、冬のボーナスの大幅減、全面カットまで打ち出され、内需は拡大するどころかいっそう縮小する状況下にあってもなお、デフレ不況の克服に正面から取り組む緊急経済対策、雇用対策、派遣切り対策はいっこうに打ち出されてもいなければ、実行されてもいないのである。
 菅直人副総理兼国家戦略担当相にいたっては、10兆円以上の不況対策の必要性を主張する亀井静香金融・郵政担当相に対して、「日本の財政は危機的状況にあり、金でなく知恵を出すことが必要だ。財政出動が大きければ大きいほどいいというのは恐竜時代(の感覚)」と切って捨てるありさまである(11/18の政府の経済対策検討チームの初会合での発言)。藤井財務大臣、平野官房長官、仙谷由人行政刷新相らの唱導する「緊縮財政路線」への追随である。これに対して亀井氏は、11/19の参院財政金融委員会で「私は恐竜みたいなでっかい、おっかない男ではない」といなし、そのうえで「経済が氷河期に入っていて、今のままでいいのかという問題がある」と切り返している。
 民主党のブレーンでもある榊原英資・早大教授(元財務官)でさえ、第2次補正予算の規模について「3兆円といわれるが、少な過ぎる。4兆〜5兆円は必要だ。そうでないと景気が二番底に直面する懸念がある」としている。すでに現実の経済は、物価変動をそのまま映す名目国内総生産(GDP)では、09年7〜9月期まで6四半期連続で減少し、来年以降はさらに二番底に向かう可能性が極めて高く、現在の無策のままではこれは「鳩山大不況」という事態に突入し、消費は縮小し、生産や投資が萎縮するデフレ不況がさらに長期化し、日本経済はこのままでは「失われた20年」になりかねないものである。

<<財務省主導・演出の「仕分け作業」>>
 そして「金でなく知恵を出すことが必要だ」といって出されてきたのが、行政刷新会議の「事業仕分け」公開作業であった。220項目、447事業について、本当に必要か、国がやるべきか、改善の余地はないか、などを精査して、財務省の予算査定に反映していくというものであった。情報開示と無駄遣いカット、追い詰められた官僚の姿が大々的に報じられ、注目を浴び、かつ絶賛されさえした。鳩山首相は「静かな革命」だとさえ自賛した。確かに一定の成果はあったといえよう。
 しかしここでも、その本質的な欠陥が露呈されてきている。そもそもこの仕分け作業開始に当たって、10/22の行政刷新会議で、この会議の事実上のリーダーを委嘱された稲盛和夫京セラ名誉会長は、「景気よりも財政再建」の考え方を示し、仕分け項目の選定から切り込み方にいたるまで財政再建を至上命題とする財務省の提供・主導・演出が突出するものとなったのである。
 もともとこの「事業仕分け」は、小泉内閣時代に「行政改革推進法」(2006年)によって規定されたものであり、公的な事業を削減し、民営化を推進するために提起、規定されたものであり、08年には自民党内のプロジェクトチームが「事業仕分け」に着手、そこには今回の鳩山政権の行政刷新会議事務局長をしている加藤秀樹氏が代表を勤める「構想日本」が参加、関与していたものである。鳩山内閣は、この小泉路線の象徴であり、それを推進してきた「構想日本」をわざわざ事務局のかなめに据え、「民間人」の「仕分け人」の選定は加藤秀樹氏の「構想日本」にゆだねたのである。同一労働同一賃金や最低賃金引き上げに反対し、労働者派遣法のいっそうの緩和を推し進めてきた自公政権下の規制改革会議・労働タスクフォースの座長を務めた人物など、小泉・竹中路線を推進してきた民間人や小泉・竹中の「隠れ経済政策立案者」と言われたモルガン・スタンレー証券経済調査部長のフェルドマン氏らが多数入り込み、論議を主導したのも当然といえよう。
 結果は当然のこととして、小泉・竹中路線の市場経済原理主義・規制緩和路線のいっそうの継続政策であり、縮小均衡路線をいっそう押しすすめるものであった。このようなことがまかり通っている限りは、不況・失業はさらに深刻化し、「鳩山大不況」を自ら招くものであることが警告されなければならないといえよう。
(生駒 敬)