ASSERT 386号 (2010年1月23日発行)

【投稿】 難局・鳩山政権
      ---問われる政治姿勢の明確化---
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【投稿】 難局・鳩山政権
          ---問われる政治姿勢の明確化---


<<「政治家はクリーンであってほしい」>>
 鳩山政権は発足後四ヶ月も経過せぬ間に重大な難局に直面している。民主党大会と通常国会開会を目の前に控えて、小沢民主党幹事長の側近であった現職の国会議員や秘書らが逮捕されるという異常事態を招いているのである。首相があくまでも幹事長をかばい、続投を支持する中で、小沢氏の逮捕にまで発展すれば、鳩山政権それ自体が瓦解の道へと引きずりこまれかねない情勢であるといえよう。政権交代の歴史的・積極的な意義が消し去られかねない局面に差し掛かっているのである。
 鳩山首相自身の政治資金管理のあまりなずさんさ、世間常識から外れた脱税まがいの母親からの資金供与のうやむやな決着は、「国民生活が第一」という旗印や庶民の生活からあまりにもかけ離れた政権トップとしての限界、民主党それ自体の限界をあからさまに示したが、小沢幹事長の疑惑は、その限界とは質が違うといえよう。小沢幹事長の疑惑は、歴代自民党政権、権力者が、権力者たるがゆえに培い、蓄積し、背負ってきた政官財癒着の真っ只中に浸りきってきた汚濁の構造的疑惑なのである。小沢氏は用意周到ではあったであろうが、この構造的疑惑を今日に至るまで引きずり、またそれを自身の権力基盤拡大の手段にしてきたのであろう。「コンクリートから人へ」と民主党が唱えてきた、そのコンクリートから政治家へという、ダム工事をめぐるヤミ献金疑惑が隠しようもない現実として浮かび上がっているのである。それは政治資金規正法上の形式的合法性の問題や不実記載、形式犯以上の問題なのである。政権交代は、こうした構造的疑惑を払拭することを期待した有権者の選択でもあったのである。問われているのは、この構造的疑惑と民主党がきっぱりと手を切れるかどうかなのである。その意味では問われているのは、検察の権力的捜査や国策捜査、それに協力するマスコミ、アメリカをも巻き込んだ政権交代を良しとしない「体制意思」などではなく、むしろそのような「体制意思」を跳ね返す民主党、ならびに連立政権の政治姿勢、政治理念の明確さなのである。
 鳩山首相は記者会見(1/15)で「私もすべてですね、国民の皆さん、政治家はクリーンであってほしいと、そのように思っておられることは間違いありませんから、その意味で当然反省すべきことは反省する必要があると、政治資金の問題などもこれから、どのようにしていくべきかという議論はこれは与党野党へだてなく考えるべきことではないかと思っていますし、うーその、それをどのようにして考えていくかということも、これは私は、例えば有識者なども含めてね、検討していただくことが必要なのかなと、今はそのように思っています」と答えているが、あまりにも鈍感であり、逃げの姿勢であるといえよう。「検討していただく」前に、自ら、政治資金については、企業・団体献金の全面禁止を明確に打ち出し、早急に法制化を行い、公明性、公開性を徹底する政治姿勢をこそ明らかにすべきであろう。

<<「私を信じて」>>
 こうした鳩山内閣の政治姿勢は、沖縄の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題についてもいえる。
 辺野古移設は歴代自民党政権が利権がらみで沖縄県側の了解も得ることなく決めてきたものである。この日米合意は、先の衆院解散・総選挙によって日本の有権者から拒否されたものであり、日本国民の意思を代弁するものではないことが明確にされたのである。当然のこととして、政権交代の結果誕生した新政権がアメリカに対して従来の自民党政権とは違う対応を求め、新たな政策対置を提起し、それに伴って交渉をすることは当然な権利であり、義務なのである。日米の信頼関係はそのことを抜きにしてはありえないものである。旧来の日本政府の側がむしろ、全面撤退方針を掲げていたアメリカ側に基地の存続とその費用の負担を申し出たからこそ、米軍基地が居座り続けてきたものであることからすれば、この際事態を白紙に戻し、沖縄の基地の全面撤退を含めた再検討を求めることは、当然であろう。ところが日本の大手マスメディアはこぞって日米同盟の危機をあおり、脅迫と恫喝まがいのアメリカ側の発言を誇大に騒ぎ立て、そのお先棒を担ぎ、「沖縄県内移設で早く決着せよ」と大合唱をするありさまである。自民党政権でさえ十何年もとっかえひっかえ引き伸ばして利権まみれにさせてきた基地問題を、政権交代が実現するやすぐさま決着せよなどと要求すること自体が間違っており、横暴そのものなのである。
 事態を複雑にさせたのは、日本側の「思いやり予算」が膨大に膨れ上がり、アメリカ側の不透明な要求を唯々諾々と受け入れてきたことにあり、アメリカ側もそれに乗じて要求を拡大させてきた結果が、現在の事態をもたらした根本原因なのであり、そうした政策の転換こそが有権者の意思として表明されたのである。
 ところがこの問題においても鳩山政権は、こうした問題の本質に目をつぶったまま、オバマ大統領に対して「私を信じて任せてください」などと軽はずみな発言で相手側に都合のよい期待を抱かせ、代替基地探しに焦点をずらせたり、自らを窮地に追い込む期限を設定し、関係閣僚が得て勝手な発言をすることさえ統率できず、彼らが巻き起こす不協和音に場当たり的に対処することを繰り返しているのである。

<<「日本に対する侮辱だ」>>
 1/14の産経報道によると、米民主党のクシニッチ下院議員は13日、社民党の阿部知子政審会長とともに訪米中の服部良一衆議院議員との会談後、共同通信に対し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)への移設について、住民の反対を押し切って自然を破壊する計画であり、「日本に対する侮辱だ」と強い言葉で非難した、という。さらに服部議員によると、クシニッチ議員は会談の中で「この問題は下院歳出委員長にも報告し、移設反対の声を同僚議員からも集める」と約束し、「海兵隊が日本にいる必要性はない。時代は変わった」とも述べたという。
 さらに、米ニューズウィーク誌の日本版のサイト(1/13)に、トバイアス・ハリス記者の「普天間問題はオバマ政権の空騒ぎ」という記事が掲載され、「米政府は、鳩山政権に課せられた制約を理解していると口先で言うだけでなく、そうした認識に基づいて冷静に対応すべきだ。そして、発足して間もない日本の新政権に対して選挙公約を破るよう圧力をかけるのは見苦しい行為だと認識すべきだ。」と指摘し、「今後の日米関係は、日米安保共同宣言が出された96年や、ブッシュ政権の軍事作戦を支持した小泉政権時代に両国の関係者が期待した形ではなく、より緩やかで、安全保障だけに頼らない関係に姿を変えていくだろう。」と結論付けている。
 こうした冷静な視点こそが今求められているものといえよう。
 鳩山政権は、アメリカのみならずアジアと全世界に対して、日本の政権交代の意義と沖縄県民の意思、民主党の公約を前提に政策転換の必要性をこそ積極的に提起し、日本側の政治姿勢、政治理念を明確に示すべきなのである。鳩山首相の言う、核兵器の廃絶と東アジア共同体の提起は、そのような具体的な道筋でこそ生かされるべきものであり、もっと積極的に展開されるべきものであろう。
(生駒 敬)