ASSERT 387号 (2010年2月20日発行)

【投稿】 オバマ・鳩山、日米両政権の混迷
【投稿】 これ以上許されない生活と自治の破壊
        −問われる橋下イズムとの戦い−
【投稿】 トヨタのリコール問題の背後にあるもの
【本の紹介】 「発禁『中国農民調査』抹殺裁判」
【コラム】 ひとりごと--貧困ビジネスの蔓延と社会保障--

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【投稿】オバマ・鳩山、日米両政権の混迷

<<「国民は怒っており、いらだっている」>>
 オバマ政権、鳩山政権、この日米両政権はともに期せずしてその支持率を急落させてきている。両政権ともに、それまでの前政権まで推し進められてきた新自由主義、市場経済原理主義路線からのチェンジ、そして泥沼のイラク戦争、反テロ戦争からの脱却、日本の場合はそうした路線への一方的追随路線からの脱却を掲げて政権を獲得したのであった。ところが政権獲得後の事態は、チェンジはいっこうに明確にならず、むしろ後退さえしていることに多くの人々が失望し、落胆し、怒りをさえ表明しだしているのである。
 オバマ政権は、昨年11月のニュージャージーとヴァージニアでの州知事選では共和党に州政を奪還され、続いて今年1月のマサチューセッツ州の上院議員補欠選挙では、半世紀近くも民主党が議席を確保してきた強固な地盤の選挙でまさかの敗北を喫したのである。これによって、上院民主党の議席は絶対安定多数の議席を割ることとなり、オバマ政権が最大課題としてきた健康保険改革は法案が棚晒し状態に追い込まれ、妥協に妥協を重ねてきた「改革」は、国民皆保険からほど遠い法案でも可決する見通しが立たない状態である。
 1月末の「年頭一般教書」ではついに健康保険改革を政権の最大課題として取り上げることができなくなり、雇用対策を前面に掲げたが、財政均衡論に縛られた中途半端な「景気刺激策第二弾」しか打ち出せず、いまだにもたつく「公的資金注入銀行への監視」や「銀行と投資銀行の垣根の規制」も先が見えず、今やオバマ政権が掲げた改革・チェンジ路線は失速状態から迷走状態へと移行し始めている。
 1月12日に発表されたCNNの世論調査では、米国民の大統領支持率は51%、不支持率は48%、オバマ政権1年目の実績を成功と見る人47%、失敗と見る人48%というまったく厳しい評価である。ニューヨーク・タイムズ紙とCBSによる連合世論調査でも、大統領の支持率は46%、不支持率は45%と、逆転目前という状態である。70%前後の支持率を確保していた昨年前半からすれば急落である。
 オバマ大統領は1/20、マサチューセッツ州上院補選で与党・民主党候補が敗北したことについて、「私が当選したのと同じ力が、(野党候補に)働いた。国民は怒っており、いらだっている」とテレビインタビューで述べざるを得ない事態である。このまま手が打たれず、迷走状態が続けば、今年11月の中間選挙ではさらに民主党が後退する可能性が不可避といえよう。

<<迷走の本質>>
 さらにこの事態に拍車をかけているのは、オバマ政権の平和・外交路線である。
 イラク以上に泥沼状態が明らかであるアフガニスタンに、オバマ大統領は3万人の米軍を増派することを明らかにし、同時に2011年7月から米軍撤収を開始するとの方針を打ち出したのであるが、これは一方で産軍共同体と保守・タカ派にご機嫌をとり、もう一方で撤収開始期限を明示することでハト派への言い訳とする、まさにオバマ流の中道・妥協路線の典型ともいえるその場しのぎの路線にしか過ぎないものである。これではブッシュ政権の対テロ戦争路線とまったく変わらない、まさに公約破りの路線である。
 オバマ大統領はしかもそれを合理化する際に、またこともあろうにノーベル賞受賞演説の場で、アフガニスタンで米国が戦っているのは「正しい戦争」であり、対テロ戦争では「殺し、殺される」ことも当然であり、「戦争という手段には平和を守る役割もある」と述べてノーベル平和賞の価値を一挙に台無しにしてしまったのである。対アフガン戦争は核兵器を持つパキスタンをまで巻き込んで、よりいっそう危険な泥沼戦争状態をもたらしかねない。これではブッシュ路線のチェンジどころか、戦争政策の継続、拡大でさえある。これには米国民のみならず、全世界の人々が大きく落胆させられたのは当然といえよう。これまでオバマ政権誕生に最大の貢献を果たしてきた無党派の平和を求める広大な支持層が、この事態に失望感をいっそう深め、離れていってしまっているのである。
 中東和平政策においても、ユダヤロビーにご機嫌をとる従来路線をこれまたそのまま継承し、イスラエル・ネタニヤフ政権に政策転換を迫ることさえできない。世界中に軍事基地を維持・展開し、軍事費をさらに増大させる路線もそのまま継承する。虐待・拷問で世界中から批判を浴びたキューバのグアンタナモ基地内の収容所閉鎖でさえいまだに実行できていない。
 軍事拡大路線から平和外交路線への決定的転換こそが期待されていたし、それこそが実はアメリカの政治・経済再生の決定的なかなめであったものが、このようにうやむやにされ、放棄されているところに、オバマ政権の迷走の本質があるといえよう。

<<「これ以上の説明はない」>>
 鳩山政権においても、事態は酷似しつつある。
 鳩山政権は、小泉構造改革反対の選挙公約がいつのまにか、財政均衡を最優先する縮小均衡路線が主流となり、財務省主導の予算縮小・切捨て路線が大手を振ってまかり通り、財務、戦略担当、国土交通、総務の各大臣、政務官に市場競争原理主義と規制緩和を主張するメンバーが主要な地位を占め、無駄の排除と根絶の名の下に徹底的に予算を削り、社会的セーフティネットの再建や内需拡大、グリーンエネルギー政策が中途半端な事態に追い込まれ、出口は消費税増税しかありえない路線に誘導することが事実上、鳩山政権の主要課題となってしまおうとしているのである。その一方で、インド洋上の給油活動は停止したが、対アフガン政策では自公連立政権以上の4500億円もの対米追随予算を気前よく提供しようとしている。オバマ政権と同様の迷走が、鳩山政権にも色濃く滲み出しているのである。
 こうした中、2月上旬に発表された各紙世論調査は、朝日新聞=内閣支持率41%、不支持率45%、読売新聞=内閣支持率44%、不支持率47%、共同通信=内閣支持率41・4%、不支持率45・1%、といずれも支持率が50%を切り、支持率よりも不支持率が上回る逆転が明確となってきている。
 さらに小沢一郎民主党幹事長の続投に対しては、朝日新聞=「小沢幹事長辞任を」68%、読売新聞=「小沢幹事長辞任を」74%、共同通信=「幹事長を辞めるべきだ」72.2%、毎日新聞=「不起訴でも(小沢氏)辞任を」69%、と実に70%にも上る人々が幹事長辞任を要求している。しかも、「小沢さんのこれまでの説明に納得できますか」=納得できない86%、「小沢さんの政治資金問題をめぐる、鳩山さんのこれまでの対応に納得できますか」=納得できない76%、「小沢さんの政治資金問題で、あなたの民主党に対する評価は下がりましたか」=下がった64%、「小沢さんが鳩山内閣に対して、影響力を発揮することは、好ましいと思いますか」=好ましくない74%(以上、朝日新聞)、読売論調査では、小沢氏が「事件の責任をとって幹事長を辞任すべきだ」と答えた人のうち66%が、「衆院議員を辞職すべきだ」とし、小沢氏が土地購入資金を「個人的な資金である」などと説明していることに「納得できない」と答えた人は86%、「民主党が小沢氏本人の政治的責任を問うなど自浄能力を発揮した」と思う人は5%に過ぎず、「そうは思わない」との答えが88%を占めている。共同通信調査でも、「不正な金はない」との小沢氏の説明に「納得できない」は87・2%、小沢氏の政治資金問題をめぐる鳩山由紀夫首相の対応に「納得できない」も78%に達している。圧倒的多数の人々が小沢氏の弁明と、それを擁護する鳩山氏の態度に不信感を突きつけているのである。
 ところがこうした世論の動向に対して小沢氏は、2/8の記者会見で、「検察当局の公平公正な捜査で、不正なカネを受け取っていないということが明らかになった」と、対検察闘争の勝利宣言を行い、さらなる「説明」要請に対しては「これ以上の説明はないんじゃないかと思う」と説明を拒否し、報道機関に対して「(小沢は)潔白だった」と報道することまで求めたのである。こうした虚勢は、小心と裏腹のものであろう。
 民主党は政権交代をなしえた、「国民生活が第一」という原点から自らの政策を再点検し、新たな体制で再出発することが求められているといえよう。
(生駒 敬)