ASSERT 389号 (2010年4月24日発行)

【投稿】 辞任論まで飛び出す鳩山政権の迷走
【投稿】 大阪復権とは無縁の「大阪都」構想
【投稿】 米の医療制度改革法の成立と鳩山連立政権の医療政策200日
【投稿】 「チョナン」爆沈の衝撃
【本の紹介】 『趙紫陽 極秘回想録 天安門事件「大弾圧」の舞台裏!』
【書評】  鈴木正著 『九条と一条----平和主義と普遍的妥協の精神』
【追悼】 「改憲阻止のつどい・大阪」代表井上淳一さん、急逝

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【投稿】 辞任論まで飛び出す鳩山政権の迷走

<<内閣支持率30%台切る>>
 鳩山政権はいよいよ重大な岐路に立たされている。内閣支持率が、麻生政権末期の様相に酷似してきており、支持率の下落に歯止めがかからない事態である。
 4月3〜4日の共同通信の世論調査では内閣支持率が33%(前回より-3.3%)、4月2〜4日の読売新聞調査でも同支持率が33%(前回より-8%)であったが、4月10〜11日に実施されたテレビ朝日の世論調査では内閣支持率が28.5%、4月9〜11日の日本テレビの調査でも28.6%、4月12日放送のNHK調査でも28%台、時事通信が4月16日に発表した世論調査によると、なんと内閣支持率は23.7%(前月比-7.2%)へと急落、4月17〜18日実施の朝日新聞調査でも25%に続落、政権維持の危険水域とされる内閣支持率30%をついに下回り始めたのである。

 いずれの調査においても、民主党に「失望している」人が7割前後に達しており、支持政党なしの無党派層が5割台に急増している。
 それは、米ブッシュ政権の戦争政策と市場原理主義・弱肉強食路線に追随し、社会をずたずたに切り裂き、セーフティネットの破壊と格差の拡大と貧困化を推し進めてきたこれまでの自公政権路線、小泉・竹中路線からの根本的転換を期待して、民主党を中心とする「政権交代」が実現したのであったが、そうした人々の期待に鳩山政権がほとんど応えていないことへの「失望」である。
 鳩山政権のこの間の表面的な特徴を列挙するならば、常に基本政策が定まらず、毀誉褒貶が激しく、日毎に発言が変わり、しかも閣僚個々人が勝手気ままに相違する発言を繰り返し、閣僚間でお互いにののしりあい、首相自身がその跡始末に追われ、その首相自身も政策や政治姿勢がぶれまくって定まらないという、なんともお粗末な実態である。首相ばかりか全閣僚に、政権維持能力、統治能力はゼロに近いと採点せざるを得ない状況といえよう。

<<「最大の敗者」>>
 表面的な鳩山政権の右往左往と表裏一体なのが、根本的な政策面での迷走であり、実質的には裏切りに近い政権公約違反の実態である。政権交代によるいくつかの積極的な政策転換が実現しつつあるが、それを打ち消して余りある否定的側面が前面に出てしまっている。
 最大の懸案である沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題にそれは象徴的である。首相自身が昨年の総選挙の際に基地移設先を「最低でも県外」と繰り返し訴えてきたにもかかわらず、外相や防衛相が沖縄県内移設案を繰り返し放言していてもそれを野放しにし、移設先の候補地を二転三転垂れ流し、挙げ句の果てに、沖縄県知事に防衛相や官房長官をして沖縄県内移設案としてのキャンプシュワブ陸上案、勝連半島(同県うるま市)沖の埋め立て案を打診するという背信行為を行っているのである。これだけではまずいと判断したのであろう、鹿児島県・徳之島へのヘリ部隊移転などを組み合わせる案に収斂させようとしている。どれもこれも利権がらみであり、個々の政治家の暗躍が見え隠れし、地元の同意など到底ありえない事態を自ら招いているのである。
 さらに醜態なのは、4月12日からワシントンで開かれた核安全保障サミットの夕食会席上で非公式にしか持てなかったオバマ大統領との約10分間の会談でのやりとりである。鳩山首相が米軍キャンプ・シュワブ陸上部などへの移設を組み合わせた日本政府案を念頭に、「5月末の決着に向けて努力している」と説明、そのうえで、「大統領にもぜひ協力を願いたい」と要請したのに対して、オバマ大統領は「(11月の首脳会談で)あなたは『私を信じてほしい(Trust me)』と言った。しかし、何も進んでいないではないか」と不満を表明、さらに、「きちんと最後まで実現できるのか(Can you follow through?)」と、5月末までの決着を疑問視され、日本政府の対応に強い不信感と疑念を示されたという。
 4/14付けワシントン・ポスト紙は、核安全保障サミットで最大の敗者(the biggest looser)は日本の鳩山由紀夫首相だと報じ、「不運で愚かな日本の首相」とまで紹介し、「鳩山首相はオバマ大統領に2度にわたり、米軍普天間飛行場問題で解決を約束したが、まったくあてにならない」とし、「鳩山さん、あなたは同盟国の首相ではなかったか。アメリカの高価な核の傘のおかげで何十億ドルも節約してきたんじゃないか。核の傘をお忘れか。その上で、まだトヨタを買えというのか。鳩山首相を相手にしたのは、胡主席だけだ」と報じた。核全廃の精神とも相反し、アメリカが居座り、押し付け、「思いやり予算」をさんざん日本政府からふんだくってきた基地問題の重要性をまったく理解していない、その意味では言いがかり的なたちの悪いコラムを掲載したが、政府は不快感を示しただけで抗議の意思も示すことができないでいる。それは政府・与党にあくまでもアメリカの核の傘に頼り、沖縄に米軍基地が存在してくれることを願う勢力が厳然と存在し、暗躍しているからでもある。腰が定まらないのも当然といえよう。ここまでくれば、じっくりと腰をすえて、米軍基地は米軍本国にお引取り願う戦略にこそ切り替えるべきなのである。

<<「普天間なんて知らなかったでしょう」>>
 しかしことここまでにいたってもなお、鳩山首相は普天間問題の「5月末決着」に固執し、自縄自縛に落ちっている。たとえ無理やり政府案を決定したとしても、米側や関係自治体の合意を得るめどは全く立たないことが歴然としているのである。
 いらいらをつのらせたのであろう、4/16、国会内で後援会関係者と懇談し、米軍普天間飛行場の移設問題をめぐり、「皆さん、普天間なんて知らなかったでしょう。それが国民の一番の関心事になること自体が、何かメディアがいろいろ動きすぎている」と述べ、問題がこじれているのはメディアの報道に問題があるという責任転嫁論を口にしだしたのである。さらに首相は懇談の場では「5月末決着」についても言及し、「どうせ鳩山なんだから、できないだろうと、メディアが書いているが心配しなくて結構だ。必ず5月末までに結論を出すと言っているのだから、結論を出す」と開き直ったが、自らを窮地に追い込む以外のなにものでもない。首相であるならば、本来持つべき冷静さをまで失いかけているともいえよう。
 そしてついにこの「5月末決着」と関連して、首相辞任論までもが現実的可能性として浮上するにいたっている。4/16のTBSの番組収録で仙谷由人国家戦略担当相は、「永田町ではダブル説が流れている。おっしゃる通りかもしれない」と述べ、鳩山首相が辞任した場合に触れ、「(前の衆院選から)1年で申し訳ないが、ダブルを問う可能性がある」と述べ、衆参同時選がありうるとの見方を示したのである。現職閣僚がこのような発言をすること自体が、一種の政権末期症状であろう。
 政権交代後一年も経たないうちにこのような事態を迎えたことは、この政権の脆弱性と限界を明らかに示すものであるが、方向を決定付け、それを不可避とさせる広範な世論の結集と大衆運動こそが要請されているのではないだろうか。
(生駒 敬)