ASSERT 390号 (2010年5月29日発行)

【投稿】 辺野古回帰・鳩山政権存在意義そのものの否定
【投稿】 高速増殖炉もんじゅの運転再開
【投稿】 続「チョナン」爆沈の衝撃
【本の紹介】 『我、知事に敗れたり 二〇〇九年九月 堺市長選』
 (その1)「橋下イズム」への巻き返しの書
 (その2)民主主義を冒涜する橋下知事のファシズム的独裁的手法を徹底批判

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【投稿】 辺野古回帰・鳩山政権存在意義そのものの否定

<<「怒」の渦の中>>
 5/23、鳩山首相は再度沖縄を訪問、県庁前を埋め尽くした「怒」を高く掲げた抗議の渦の中、仲井真知事との会談を行い、この場で初めて米軍普天間基地の移設先として「辺野古周辺」と明言するに至った。米軍キャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる前自公政権が取り決めた現行計画を「自然への冒涜」と批判し、「辺野古の海を汚してはいけない」、「最低でも県外」と主張し続けてきた自らの態度を完全にかなぐり捨てたのである。
 防衛大臣や外務大臣が辺野古現行計画を前提に対米追随交渉を展開していても、首相はあくまでも県外移設を追及しているかのようなそぶりを繰り返し、4/24付けワシントン・ポスト紙が岡田克也外相が辺野古案を大筋で受け入れる態度を示したという報道に対しても、首相は「外相が大使と会ったのは事実だが、内容は必ずしも事実ではない」「そういう事実はない」と否定し、同じ4/24の記者団の質問に対して、「私は辺野古の海に立って、海が埋め立てられることの自然への冒涜を大変強く感じた。現行案が受け入れられる話は、あってはならない」と述べていたのである。たった一ヶ月足らず前のこの態度表明はいったい何であったのであろうか。ずるずると期待を持たせるだけ持たし、あげくの果てに前政権の現行計画への逆戻りとは、まったく沖縄県民を愚弄するものであり、その不誠実で「裏切り」にも等しい態度は許せるものではないし、もはや首相としての資格をさえ喪失したものともいえよう。それは、政権の存在意義そのものを自ら否定したものでもある。

<<「全く交渉さえしてこなかったのでは」>>
 この沖縄訪問の直前、5/21、当初は中国、韓国だけを訪問する予定だったクリントン米国務長官が来日し、鳩山首相、岡田外相との会談が持たれ、首相は会談後、記者団に「北東アジアに大変緊張感が漂っている時、日米同盟の重要性で一致できた。普天間問題は五月末までに(日米で)合意すると言ってきた。クリントン氏もその考えで努力していただいている」と力を込め、岡田外相も「(沈没事件は)普天間問題に直接影響するものではないが、日米同盟の重要性を国民に再確認させた」と強調し、今回突如浮上した韓国海軍哨戒艦沈没事件で緊迫する朝鮮半島情勢をこれ幸いと利用し、米軍普天間飛行場の沖縄県内たらいまわし決行と「五月危機」乗り越えの絶好の機会ととらえたのであろう。
 しかし、クリントン長官との会談は、中国には5日間も滞在しながら、日本にはほんの3時間あまりの立ち寄りであり、しかも普天間問題にわずかでも触れたのは3分程度でしかなく、しかも共同記者会見での「日米は共通の危機に直面している」として在日米軍基地の重要性を強調した発言は、日本に「辺野古現行案」をそのまま承認させ、実行させる絶好の機会として米国側に巧みに利用され、鳩山政権側もそれに便乗したものともいえよう。
 鳩山首相と仲井真知事の会談録(5/23付け沖縄タイムス)によれば、首相は「私はこれまでぜひ、『普天間』の代替施設は県外にと考えて、実際にそれも追求してまいったわけでございます。それがなぜ県内なのだと、皆さまのご懸念、お怒りはもっともなことだとも思っております。これは昨今の朝鮮半島の情勢からもお分かりだと思いますが、今日の東アジアの安全保障環境にまだ不確実性がかなり残っているという中で、海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力を現時点で低下させてはならないということは、一国の首相として、安全保障上の観点から、皆さま方に、低下をさせてはならないと申し上げなければならないことでございまして、」と、朝鮮半島情勢を早速に利用している。続いて首相は「批判、ご批判をちょうだいしておりますことから、逃げるつもりもございません。同時に、ただ今回の政府の方針の中には、これまで実現はおろか、米国と本当に交渉してきたんだろうかと、全く交渉さえしてこなかったのではという点も含めまして、・・・」と発言をしているが、実際には今回のクリントン長官との会談でも明らかなように交渉らしい交渉などほとんどしていないのが実態といえよう。

<<首相との面談拒否、議員全員座り込み>>
 この時点で明らかになったことは、政権交代を成し遂げて誕生した鳩山政権は、その政権交代にこめられた民意、期待を背負って誕生したにもかかわらず、これまでの自公政権と同様の対米追随外交をしか展開していない、民意を無視することにおいては前政権以上に期待を持たせ続けただけにより悪質とさえいえる、さらに日米双方ともに、民意無視の県内移設を強行することを双方が了解した上で、協議を急いでいる、という否定しようのない現実が鮮明に浮かび上がってきている。
 しかし民意を無視した基地建設の強行は、もはや不可能となっていることをこそ、日米双方ともに認識をすべきであろう。強行すればより重大な、取り返しのつかない失政と災厄に見舞われることは間違いない。
 肝心かなめの沖縄現地の民意は、これまでよりもより強固になり、その激しい怒りは強まりこそすれ弱まることなどありえないといえよう。
 すでに5/21、沖縄県議会は21日、各会派の代表者会議を開き、鳩山首相との面談を拒否することを決め、48人の県議全員が県議会棟前に座り込み、県内移設断念を訴えることも申し合わせ、高嶺善伸議長は「県民の思いを伝えるためには、いままでとったことのない行動で全国民に訴える方が有効だという結論に至った。県内移設が政府原案と決まっても、県議会はそれを容認することはない」と決意を表明している。
 さらに辺野古現地を抱える稲嶺市長は、首相が米軍普天間飛行場を名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに移設する方針を正式表明したことについて、「『ようこそ』という気持ちにはとてもなれない。これまでの思いを裏切ることで怒りを覚える。断固反対する」と述べ、受け入れをあくまでも拒否する考えを明瞭に表明している。
 鳩山政権に残された道は、ごまかしの負担軽減策などではなく、徳之島の大久保町長が的確に指摘しているように、「基地を、ここやあそこに移すという議論でなく、今こそ軍縮をしていけばこのような問題にはならない」という立場を貫くことである。
(生駒 敬)