ASSERT 394号 (2010年9月25日発行)

【投稿】 菅改造政権と名護市議選、オスプレイ配備
【投稿】 尖閣諸島における中国漁船衝突事件と日中関係の緊張
【投稿】 あえて、民主党代表選--路線の今後
【人権ひとりごと】 私の人権考
【日々雑感】---誤認ということ二題---

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【投稿】 菅改造政権と名護市議選、オスプレイ配備

<<どちらが首相なのか>>
 民主党の代表選は、これまでそれほど明確ではなかった菅氏の政治姿勢をさらに明らかにする機会でもあった。先の七月の参院選に際しては、菅内閣発足直後の支持率の上昇に舞い上がり、財務官僚や一部学者の主張を鵜呑みにして、突如党内論議さえ経ていない消費税10%増税を公約化し、反発を食らうや慌ててしどろもどろの軽減税率や税の全額還付などその場しのぎの姑息な「逃げ」、「ぶれ」、「ごまかし」、「すり替え」に終始し、あげくの果てに「次の衆院選までは1円も上げない」と言及するなど、この政治家は、基本的な政治家としての政治理念、あるいは政治信念、そして立脚基盤がいまだに定まっていないのである。その結果として参院選での大惨敗を喫したのであり、その最大の政治的責任は菅氏自身にあることが明瞭になったのである。この時点で菅氏は責任を取り、本来辞任すべきであったのである。
 幸か不幸か菅内閣は成立した直後という事情に助けられ、ろくに責任追及もされず、菅氏はすべてをほおかぶりして低姿勢でやりすごしてきたのである。しかし菅氏の泥縄的付焼き刃的政治手法では、当然のこととして綿密な政策形成もできず、党内合意、政権合意すら手順を踏めず、おだてられればそれに乗っかり、トロイカ体制の復活といえばそれに乗り、不利となれば媚も切り捨てもいとわず、ただひたすら自己の地位と権力にしがみつくことが「最大目標」となってしまい、今回の民主党の代表選はそのことをいっそう明らかにしたのであった。
 民主党大会での現首相である菅氏の決意表明は、民主党が問われ、決断を迫られている基本政策よりも、国会議員の職業を羅列して出席している個々の議員に媚を売り、情緒的感傷的に訴え、挑戦者である小沢氏に対しては「クリーンな政治を」と当てこすりはすれども政策論議はすべて避けて通る、対して小沢氏は日本が直面する政治課題について菅氏では語れない政治選択、政策選択を迫るという、どちらが現職首相であるか、まったくあべこべの状況が現出されたのであった。とりわけ小沢氏が普天間基地問題についての日米合意について、日米関係は対等であり、沖縄住民と米国の双方が受け入れられる解決策に向けて米政府と改めて話し合うという政策を提起し、菅氏の対米追随一辺倒の路線との違いを際立たせた意義、政権交代の意義を誰の目にも明らかにできる焦点を明らかにしたことの意義は大きいといえよう。しかしそれでも、小沢氏は負けるべくして負けたのであった。

<<奇兵隊から新撰組へ>>
 「負けるべくして負けた」最大の要因は、小沢氏が身にまとい続けてきた政治とカネの問題、その金権体質、独裁的政治手法もさることながら、大手メディア・マスコミあげての「首相がコロコロ代わるのは好ましくない」という世論形成であった。朝日新聞8月27日付社説は「小沢氏出馬へ―あいた口がふさがらない」として、小沢氏の代表戦出馬そのものさえ問題視し、代表選当日9月14日付の社説「再び民主議員へ―新しい政治を突きつめて」では「小沢一郎前幹事長が勝てば、1年で3人目の首相になる。自民党のたらい回しを批判してきた民主党としては、およそ筋が通らない。」として露骨に小沢氏に投票をするなという民主党議員への呼びかけであった。「あいた口がふさがらない」のは、政策の是非を問わない、したがって政権交代の歴史的意義を踏まえない、むしろこうした強引な民主党代表選への介入であろう。菅氏への選択は、ただただ「首相が短期間で代わるのは良くない」という消去法での選択、負の選択としての、実質上ぎりぎりの過半数に過ぎなかったといえよう。
 そしてむしろ問題なのは、菅首相自身が街頭演説で「1年で3人も首相が代わってもいいんですか」と絶叫する姿、その政治姿勢である。そして民主党議員自身も「首相がコロコロ代わるのはよくない」を最大の理由として菅氏を支持する、「コロコロ代わる」事態をもたらしたのは菅首相自身の責任であり、民主党の責任なのである。有権者の責任ではないし、有権者の前で恥ずかしげもなく大声で語ることではないし、語るべきは対米追随一辺倒と、弱肉強食の新自由主義の自民党長期政権からついに政権交代を果たした政権交代の歴史的意義をいかに具体的に実現していくかをこそ語り、実践することであった。しかし現実の菅政権の政治姿勢は、小泉的自民党政権とまったく似通った路線に逆戻りしてしまっていることに最大の問題があるといえよう。こんな再選では、求心力の強化どころか、拮抗する勢力バランスとグループ再編、疑心暗鬼と報復合戦で早晩行き詰ることが目に見えているといえよう。
 菅氏をよく知り、付き合いをしてきた田中秀征(元経済企画庁長官)氏が「菅内閣は、自らを高杉晋作の「奇兵隊」と称して出発した。長年、彼は自民党政権を「霞ヶ関政権」と断定して攻撃の先頭に立った。それなら幕府に挑戦した奇兵隊と言ってもよい。しかし、何と彼は、鳩山政権下においても全くその努力をしないどころか、自民党よりもひどい官僚主導の方向に転ずる主役となった。それが最後には、参院選前の消費税10%発言になり、自ら志を捨てた姿を明らかにした。・・・菅奇兵隊は、何といつの間にか“霞ヶ関幕府”を警護する“新撰組”に大変身してしまったのである。・・・菅首相は、既に参院選で、首相に不適格と判定されている。“脱官僚”どころか“没官僚”になっている。」(9/9ダイアモンド・オンライン)と指摘、糾弾している。正鵠を射ているといえよう。
 ある意味では、小沢、菅両氏は、共に辞任していて、新しい次のリーダーを立てて闘うという、政権交代の歴史的意義を実現する道を踏みにじってしまったのである。

<<「勘弁してくれ」>>
 この民主党代表選のさなかに、普天間移設問題を巡って二つの重要な動きが明瞭となり、どちらも今後の政治情勢に無視し得ない事態をもたらしている。一つは言うまでもなく、9/12の名護市議選の結果である。選挙前まで辺野古移設反対派と容認派が拮抗していた議会の力関係が、移設反対の市長派圧勝で一変したのである。前原国交相は沖縄担当大臣として、辺野古移設容認派の島袋前市長と二度にわたって密談を凝らしていたことが暴露されており、前原氏らの必死のてこ入れと支援にもかかわらず辺野古移設容認派は敗退し、辺野古現地の市長と市議会は「移設反対」で結束し、菅政権が現地に望みを託す可能性は封じられてしまったのである。次なる最後の望みは、この11月11日に告示、28日投票の沖縄知事選である。菅政権は、すに八月初めに自民党の候補者である現職の仲井間知事と会談した際に、北沢防衛相が「政府としては仲井間知事に当選していただきたい」と発言しており、仲井間知事をおびやかす有力な対抗馬である宜野湾市長の伊波洋一氏を落とすべく、民主党としての第三の候補を含めて現地住民の分裂を策することに躍起になっている。きわめて悪質な介入といえよう。
 もう一つの新たな事態は、今まで巧妙に隠され、発表されていなかった米軍の垂直離着陸機MV22オスプレイの配備問題である。岡田外相は9/9の国会答弁で、辺野古の代替施設に同機が配備される可能性を初めて認め、「可能性があるなら、そういう前提で議論すべきだ」といとも簡単に言ってのけ、米側も配備計画を日本に伝達していることを明言したのである。そして北沢防衛相も9/10の会見で「事務方の協議の中でも米軍はそれ(オスプレイ)を想定した意見交換をしている」と述べ、米側の配備方針が事務レベルで伝わっていたことを平然と認めたのである。これでは、辺野古に移設されるのは、普天間飛行場の海兵隊ヘリの「代替施設」ではなく、新たなオスプレイ基地の建設であることを明らかにしたようなものである。事態は新たな展開と火種をもたらしたのである。
 このMV22配備は1996年当時から、代替飛行場計画の運用所要に盛り込まれ、米国防総省が97年9月にまとめた普天間移設計画の報告書では、36機のMV22を運用することを前提に代替飛行場の規模などを検討していたものであった。ところが日本政府は、米側から配備計画について正式な説明は受けていない、と嘘の説明を繰り返し、オスプレイ配備を前提にした騒音予測は行っておらず、当然、辺野古への移設計画で進めている環境影響評価に反映させてこなかったものである。稲嶺名護市長は「(オスプレイ配備は)以前から指摘されており、日本政府はひた隠しにしてきた。地元には『危険はない、騒音は軽くなる』と説明してきたが、全部うそだったということになる。許せるものではない」と怒りをあらわにし、仲井真知事でさえ「事故を起こした機種だ」「県民が『わかりました』と言える種類のものではない」と言い切り、「勘弁してくれ」というほどの反発を表明している。このオスプレイ、ヘリコプターとプロペラ機の機能を合体させた垂直離着陸輸送機で、騒音がすさまじく、「未亡人製造機」といわれるほど開発過程から事故を多発し、すでに30人以上が死亡しているしろものである。岡田外相はこんなしろものの配備を「可能性があるなら、そういう前提で議論すべきだ」などとして受け入れることを平然と認めようとしているのである。仙谷官房長官も9/14、オスプレイが配備された場合、現行案(V字案)を前提として進められている環境影響評価の見直しの可能性について、「そういう認識ではない」と述べ、見直しは不要という立場を鮮明にしている。よくこんな不誠実な態度が取れたものである。
 そして菅改造内閣の新たな布陣は、菅首相のもとに仙谷官房長官、岡田幹事長、前原外相、北沢防衛相という体制となった。沖縄から見れば、まさに「日米共同声明」を強行突破するための布陣であり、岡田、前原、北沢という三頭立て馬車に菅首相と仙石官房長官が騎手として乗り込み、鞭を振り、沖縄の民意を蹴散らす作戦に乗り出したのである。
 こんな政権は、早晩、行き詰らざるを得ないであろう。
(生駒 敬)