ASSERT 396号 (2010年11月27日発行)

【投稿】 菅内閣・民主党政権凋落の真の原因
【投稿】 高速増殖炉「もんじゅ」の棺桶化が進むのか
【編集部への通信】 井上 清著『尖閣列島 釣魚諸島の史的解明』
【書評】 「ポピュリズムへの反撃−現代民主主義復活の条件」
【コラム】 ひとりごと ---迷走する民主党に思う---
【日々雑感】 最近涙したこと、その2

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【投稿】菅内閣・民主党政権凋落の真の原因

<<沖縄版ニューディール政策>>
 11月11日に告示され、28日投票の沖縄県知事選挙の激しい闘いの火蓋が切って落とされた。沖縄県那覇市の県庁前公園で行われた出発式で、無所属新人で前宜野湾市長の伊波洋一さん(社民・共産・社大推薦)は、1000人に達する支持者、支援する人々を前に、基地の県内移設には断固として反対すること、そして「私はぶれることなく、辺野古への新基地建設に反対し、海の埋め立てを認めることはありません。新しい基地をこの沖縄に作らせる日米両政府の圧力を、県民の力で撥ね退けていこうではありませんか。私は沖縄が自らの意思で基地を取り除き、平和で豊かな沖縄を皆さんと共に作っていきたいと思います。」と力強く決意表明を行った。そして「相手候補の後ろには、日米両国政府が控えています。決して簡単な選挙ではありません。日米両政府相手の選挙であるということは、沖縄県民と日米両国との闘いであるのです。県民をあげてこの選挙に勝利し、私たち県民の意志を、日米両国ならびに世界に示していこうではありませんか。」と真摯に訴えた。
 この「決して簡単な選挙では」ない、「日米両政府相手の選挙」に際し、伊波氏は「平和で豊かな沖縄」を作るために、「今回、新たに沖縄版ニューディール政策を打ち出しました。これは総合的な政策です。県民の福祉や県民の暮らしを良くしながら公共工事を行っていく、産業を興していく、そのような政策です。沖縄本島だけではなく、また北部だけではなく、先島までさまざまに産業振興を行ってまいりたいと思います。」として「沖縄版ニューディール政策」を明らかにしている。それは、新たな雇用の創設と失業率の低下を実現するために、沖縄の観光を、農業や漁業や文化や、さまざまな分野とコラボレートする政策、第1次産業、農林水産業を全県下で推進し、それを製造・加工する製造業をしっかりと育てていくこと、県民のための医療、宮古・八重山・先島の病院を守り、県民の命を守り、暮らしを守り、そのようにして雇用を作り、7%台の失業率を5%台に低下させる、ものとして提起されている。

<<「沖縄の海兵隊不要」>>
 日米両政府に決定的、本質的に欠けているのは、このようなニューディール政策である。軍事優先主義と自由競争原理主義からの転換としてのニューディール政策である。
 オバマ民主党は、この11月の中間選挙においてなぜ大敗したのか? まずなによりもイラク・アフガンの泥沼の戦争からの脱出どころか、ブッシュ時代にも劣らぬ展望のない戦争政策にのめり込み、戦争・軍事産業を喜ばせども、湯水のごとく垂れ流され費消される軍事費はとどまるところを知らず、オバマの「チェンジ」は単なる空約束であり、事態はより悪化していることを見抜かれたのである。
 11/10に発表された大統領の諮問機関「財政責任・改革国家委員会」は、国防関連費を2015財政年度までに1000億ドル削減すること、在外米軍の3分の1削減などを含む草案を発表しているが、これに対して、ゲーツ国防長官は「国防戦略を考慮していない」と批判、国防費は毎年3%の伸びが必要だと反論するような政権である。
 11/18に発表された米国の安全保障分野の有識者46人の同委員会委員長あての書簡は、この1千億ドル削減草案の内容でさえ「不十分」だと批判し、「これまでオバマ政権は、国防総省を予算削減の例外としてきた。これは近視眼的だ。このことは、米国の軍事力の基盤でもある経済の力強さの回復を難しくする」と主張、「安全保障を犠牲にすることなく、国防予算を大幅に削減することは可能だ」として、具体的には、目的が不明確な任務の廃止、米軍の規模自体の縮小、海外展開部隊の縮小、イラク戦争やアフガニスタン戦争のような方式の戦争を避けることによる陸軍、海兵隊の規模の縮小、兵器調達過程の見直しなどを挙げている。
 11/19、民主党の重鎮バーニー・フランク議員は、「海兵隊の役割は変化した。沖縄や欧州にある不要な米軍基地をまず撤去するべきだ」と、沖縄の海兵隊不要論を改めて唱えている。
 沖縄の海兵隊不要論を日米交渉の重要な議題とすることが今こそ必要であることを、これらの事態は明らかにしているといえよう。

<<沖縄自衛隊10倍増計画>>
 さらにオバマ政権は、規制緩和・弱肉強食の新自由主義に一貫して妥協的姿勢をとり続け、「チェンジ」で掲げたニューディール的政策がことごとく頓挫し、葬り去られ、期待を失望へとチェンジさせてしまった、そのことが、ブッシュの戦争政策継続と不可分のオバマ大敗の理由である。オバマ民主党の「大不況克服・弱者救済」政策は、共和党の「新自由主義・小さな政府」、「勝ち組・金持ち優遇」、財政再建優先政策の前に妥協に妥協を重ね、失業率は高止まりしている一方で、膨大で手厚い救済策によって保護され救済された大手金融資本が、何の責任も取らされることなく、規制政策さえどんどん骨抜きにされ、今再び投機的マネーゲームで我が物顔に振る舞い、オバマ政権を逆に指導・監督している現実が、ここでも見抜かれたのだといえよう。
 同じ事態が日本においても進行している。
 沖縄の知事選を見据えたかのような民主党政権の対中国強硬路線は、前原外相・枝野民主党幹事長代理の危険で挑発的な路線によって繰り返し緊張が煽られ、沖縄の米軍基地や海兵隊の存在、米軍の抑止力を合理化し、辺野古新基地建設を沖縄県民に押し付ける絶好の緊張材料として利用されている。時系列で見れば、むしろ仕組まれたかのような緊張激化路線である。外相が先頭に立って相手国を「ヒステリック」などと暴言を吐き、幹事長代理が「悪しき隣人」などとわざわざ他国を傷つけ、「中国との戦略的互恵関係なんてありえない」などと自らの政権の基本政策をさえ否定し、中国との絶好・断行宣言に等しい挑発てき発言を敢えて行い、問題点を指摘されても開き直り、謝罪も取り消しもしない、このような幼稚極まりない閣僚や幹部が平然とのさばっているのである。首相は彼らに発言の撤回や注意さえできない。
 彼らは沖縄本島ばかりか、与那国島への陸上自衛隊200人の配備や、下地島空港の自衛隊基地化、宮古島への陸自配備、さらには石垣島へと沖縄の先島諸島への自衛隊配備を目論み、2020年までに沖縄の自衛隊を現在の10倍の2万人規模に拡大する計画など、とんでもない軍事力強化・対決路線を沖縄で具体化し、着手に乗り出そうとしている。北沢防衛相は11/11の衆院安全保障委員会で、与那国島を含む先島地域への陸上自衛隊配備に関して「下地島空港は、国を守る防衛省、自衛隊としては大変魅力がある。実際に活用できるか検討していきたい」と呼応している。

<<”仙菅ヤマト”が沈没する日>>
 しかしこのような前原・枝野主導の緊張激化・対決路線は破綻せざるを得ないものであり、すでに菅政権そのものの外交失策、外交不在、迷走外交として身動きさえできない状態に追い込まれている。まともに話のできない日中首脳会談、これまでの合意もすっ飛んでしまった日露首脳会談、ただただアメリカを後ろ盾にし、ごまをするAPECでの対米従属外交、こうした外交姿勢は、ことごとく政権交代の意義を自ら否定するものでしかない。政権交代の基軸を持たない菅首相は事態の進展にうろたえ、事態の悪化を防止し、取り繕う外交しかできない茫然自失の状態である。
 当然のこととして、今や内閣の支持率は急落し始め、ついに民主、自民両党の支持率の逆転現象さえ生じ始めている。菅内閣の支持率は、どの調査も危険水域の30%を割り、27%前後に落ち込み、時事通信調査では政党支持率でも民主16.2%に対し自民16.5%と逆転されてしまっている。各地の地方選挙でも民主党の連敗が続いている。
 政権交代が実現してまだわずか一年数ヶ月である。期待するほうが無理だといえばそれまでであるが、問題は、政権交代が目指したものとはあまりにもかけ離れてしまった現在の菅政権の現状にあるといえよう。
 『サンデー毎日』(11/14号)は「いったい、何のための政権交代だったのかー。未曾有の円高が進むなか、景気対策に何の手も打たない菅・仙谷政権。「国民の生活が第一」の大義は消え失せ、政権維持に汲々としているのが実態だ。末期症状の”仙菅ヤマト政権”が沈没する日は近い。」として「”仙菅ヤマト”が沈没する日」を予想し始めている。そして『週刊朝日』(11/12号)は、「仙谷・菅コンビが弄ぶニッポン最大不幸社会がやってくる」と題して特集を組み、「いま、菅政権が進める高齢者医療制度”改革”の中身を知ったら驚くだろう。・・・悪名高い『後期高齢者医療制度』のほうがマシだった!」と、菅首相の「最小不幸社会」ならぬ「最大不幸社会」政策を取り上げている。
 軸足を失った菅政権が、政権交代の意義とはまったく相反する新自由主義・小さな政府論・財政再建優先主義に陥ってしまっていいる実態こそが、菅政権凋落の真の原因であるといえよう。とすれば、民主党はこのような政権を早急に脱出し、根本的な政策転換を図るべく新たな体制を再構築すべきであろう。
(生駒 敬)