ASSERT 397号 (2010年12月24日発行)

【投稿】 デッドロックに乗り上げた菅政権
【投稿】 アメリカのパワー衰退とユーラシア大陸の台頭
【投稿】 軍拡進める新防衛大綱
【投稿】 アマゾン・ボイコットを!
【編集部への通信】 カール=ヘンリク・ロベール著
『[新装版]ナチュラル・ステップ』(スウェーデンにおける人と企業の環境教育)

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【投稿】 デッドロックに乗り上げた菅政権

<<「怒りを通り越してあきれ返る」>>
 12/13、仙谷官房長官は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について「県民に甘受してもらいたい」と述べた。この発言について12/15付け琉球新報・社説は「『甘受』発言 駄々っ子はどちらなのか」と題して、「あきれた無神経ぶりと言うほかない」と断罪している。
 「しかも『情と理を尽くして説得する』と述べている。駄々っ子をあやすかのような口ぶりだ。駄々っ子は沖縄側と政府と、いったいどちらなのか。」「仮に普天間飛行場を県外移設したとしても、在日米軍基地の沖縄への集中度は73・9%から72・4%に下がるにすぎない。こんなささやかな要望すら、駄々っ子扱いする政府には、怒りを通り越してあきれ返る。」「辺野古移設の理由も支離滅裂だ。仙谷氏は『一朝一夕に、明日、全ての基地を国内のほかの地に移すわけにはいかない』と説明した。沖縄側がいったいいつ、『1日で全ての基地を移せ』と要求したのか。」「『自分のところで引き受けようという議論が国民に出ていない』とも述べている。議論を提起すべき官房長官がひとごとのように論評するのでは、何をか言わんやだ。」と実に手厳しい。
 さらに、しかも県民の反発を受けるや「仙谷氏は『沖縄が総反発するような受け止めをしているとすれば、撤回もやぶさかでない』と述べた。まるで県民の受け止め方が誤りだと言わんばかりだ。なぜ県民が反発したのか、この人には永久に分からないだろう。」と、仙谷氏は完全に突き放されてしまっている。
 そしてやはり12/15付け沖縄タイムス・社説は、【甘受(かんじゅ)】「さからわずに甘んじて受けること」(広辞苑)。「やむをえないものとしてあまんじて受け入れること」(大辞泉)を引用して、これまた手厳しく論じている。
 「仙谷氏は『私の徳島県を含めて、自分のところで引き受けようというような議論は国民的にも出てないわけですね』とも発言している。よくそんなことが平気で言えるものだと思う。他府県の『ノー』には耳を貸すのに、なぜ沖縄の『ノー』には応えないのか。なぜ基地政策だけは公正な行政が実現できないのか。先月行われた県知事選で仲井真知事は『県外移設』にかじを切った。民意に従い、条件付き県内移設から転換せざるを得なかったのである。再選直後には、公約に基づき菅直人首相に日米合意を見直すよう求めている。仙谷氏の発言は民意を否定するばかりか、仲井真知事に対しては、選挙公約の破棄を公然と勧めているようなものだ。民主主義の否定、地域主権の否定である。」
 今や「菅内閣の舌禍王」とまで言われる仙谷由人官房長官であるが、このような恥知らずで傲慢な発言はいくら撤回したとしても、その本性や意図をさらけ出した取り返しのつかない事態を自ら招いているといえよう。そこには一片の誠実さも反省さえも見えないのである。

<<「説得すべきは米国だ」>>
 そして12/18、今度は仙谷官房長官の意をそのまま受け継いだかのような菅直人首相本人の沖縄訪問であった。
 これまた12/18付け琉球新報・社説は、「説得すべきは米国だ」と題して、「『普天間基地は県外に』という仲井真弘多知事に、菅直人首相は辺野古移設容認を迫った。会談が平行線のまま終わったのは当然だ。民意に背を向け聞く耳を持たない政治とは何だろうか。会談が行われた県庁の前には『(日米合意を)撤回せよ』と書いたプラカードを持った人が大勢集まり『帰れコール』を繰り返した。多くの県民も同じ気持ちだろう。普天間移設について菅首相は『強引に進めるつもりはない。しっかり誠意を持って話し合う』と強調したが、時間がたてば、容認に変わると思っているとしたら大間違いだ。沖縄を説得する誠意とエネルギーは、米国に向けて使うべきだ。」と、菅政権の本質的な欠陥と根本的な政策転換を厳しく求めている。
 この会談に際しても菅首相は、いかにも不用意かつ不誠実な発言を繰り出して仲井真知事の説得に乗り出し、「沖縄の皆さんにとっては辺野古はベストな選択ではないかもしれないが、実現可能性も含めるとベターの選択ではないか」「ベストは確かに県外・国外かもしれないが、過去からの経緯、あるいは国際情勢を考えた中で、ベターな選択として辺野古移転をもう一度皆さんにも考えていただけないか」と述べたのである。この「ベター」論は仲井真知事らが自公政権下で展開していた、いわば前時代の論理である。菅首相からすれば、仲井真知事に取り入ったつもりであろうが、魂胆が見えすいている。仲井真氏にとっては知事の座を確保するためには、ベター論を切り捨て、「県外移設」に舵を切らざるを得なかったし、そうしなければ県民の総意に反して、伊波洋一氏に敗北していたであろう。当然のこととして仲井真知事からは、「県内移設はバッド(駄目)の系列でしかない」「日米合意の見直しをぜひお願いしたい。『県外へ』というのが私の公約であり、政府も真正面から受けていただいて、県民の思いを実現できるようお力添えをお願いしたい」と切り返されてしまったのである。もはや菅首相には打つ手なしである。

<<たった2分の辺野古上空視察>>
 菅首相は今回の沖縄訪問で「県民に総理自身の考えを伝えたい」と述べていたが、市町村長や市民には誰一人会わなかった。説得するどころか、会いたくもなかったのであろう。そして肝心の「ベター」な移設先である辺野古には足を踏み入れることもなく、キャンプ・シュワブ(名護市辺野古)沿岸部の上空をたった2分ほどのヘリコプター視察をしただけであった。その辺野古の海岸の砂浜には、5・28日米合意を「撤回せよ!」と大書した紙をシュプレヒコールに合わせて突き上げ、抗議する住民、敷き詰められた「NO BASE!」(基地はいらない)という大きな布文字、「民意は基地建設 NO」の看板が首相を待ちうけていた。菅首相はそれらを眼下に見て、事実上逃げ帰らざるを得なかったのである。
 菅首相は「県外・国外移設と言ったのにできなかった」と述べているが、そもそも菅政権自身を含めて民主党政権は、これまで一度も普天間基地の県外・国外移設を目指して米国はもちろん、沖縄以外の地に正式要請などしていないのである。「できなかった」のではなく、する意思も意欲もなく、「しようとすらしなかった」のである。今、そのことが問われ、菅政権に限らず、今後のどのような連立政権であれ、日米合意を見直さない限り、事態は解決しないし、県内移設はもちろん、辺野古新基地建設などはどのようにあがいても不可能となっていることをこそ認識すべきなのである。
 いずれにしても菅政権は完全にデッドロックに乗り上げてしまったといえよう。急落する支持率、民主党内部の抗争もさることながら、大連立や小連立を策謀しても、相手からさえ心中することをためらわれる事態である。菅首相本人、仙石官房長官、岡田幹事長、前原外相が前に出ている限りは、民主党政権の維持、存続は不可能な事態に突き進んでいるといえよう。自民党の復権を許さないためにも、民主党執行部はこの際、総退陣し、人心一新、政権交代の初心に立ち返った路線の根本的転換に踏み切るべきであろう。
(生駒 敬)