ASSERT 399号 (2011年2月26日発行)

【投稿】 袋小路に追い詰められた民主党政権
【投稿】 官僚支配と「密約」の闇
【投稿】 修正迫られるアメリカの世界戦略
【投稿】 錬金術の「大阪都構想」
【本の紹介】 日本経済論--「国際競争力」という幻想--」

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【投稿】 袋小路に追い詰められた民主党政権

<<「菅政権に正統性はない」>>
 いよいよ菅政権は重大な危機に陥り、崩壊寸前の状態に追い込まれたといえよう。
 その直接のきっかけは、2/17、民主党の16名の衆議院議員が「民主党政権交代に責任を持つ会」(通称:民主党国民の声)という会派を立ちあげ、「我々は、国民との約束を果たす議員集団であることを、改めて国民の皆様に行動で示すために、衆議院での民主党・無所属クラブとは分かれ、新たに院内会派を設立する。そして同志一同が結束して、『国民の生活が第一』の政策を実行すべく今後、行動を展開していくこととする。」として、「菅政権は国民との約束、マニフェスト(政権公約)を捨てた。菅政権に正統性はない」と厳しく批判し、2011年度予算関連法案への対応については、「マニフェストに照らして判断したい」と述べ、反対する可能性を示唆したのである。会長の渡辺浩一郎氏は、会見では「菅内閣に正当性はない」として即時退陣を強く求めている。
 この会派の【約束を果たす民主党への回帰宣言】は、

 総選挙では、予算のムダを徹底的に削り、新たな政策の財源に充てるとしたマニフェストを掲げ、政権交代を実現した。しかし、「予算の総組み替えなどを行う」と主張していたのに、ほぼ手つかずの一方で、先週、菅総理大臣は、「衆議院の任期中上げない」としていた消費税については、「来年度末までに法的な対応をしなければいけない」と発言し、増税への意欲をあらわにした。
 菅政権は国民との約束、マニフェストを捨てたのである。
 菅政権は、民主党の理念、そして「国民の生活が第一」という国民の皆様への約束をも捨て去ったのである。
 菅政権が本来の民主党の政策を捨て、本来の民主党の政治主導を捨て、本来の民主党の国民への約束を捨て去って省みないならば、それは国民が願いをかけた本来の民主党そのものを捨て去ることになる。
 そして、このことは、本来の民主党への支持の上に比例代表で当選した我々の存在意義すらも打ち消すことになる。
 我々は民主党と国民との約束の上に存在する比例代表の議員だからこそ、本来の民主党の姿とはかけ離れた今の菅政権にはもう黙ってはいられない。みすみす旧来からのしがらみにはまり込み、無原則に政策の修正を繰り返す菅政権に正当性はない。我々は今こそ「国民の生活が第一」の政策を発信し、国民の信頼を取り戻していかなければならない。

 と述べている。菅執行部にとってはまさかの衝撃的な事態の進展である。けしからん、理解できないと叫べども、16人ともなれば簡単に処分も除名もできない。この動きはさらに広がりを見せているが、たとえこの16人でも、菅執行部の方針から離脱をすれば、社民党の協力を得てやっとぎりぎりの衆院で3分の2の勢力による衆議院再可決という最後の望みも完全に絶たれてしまう。もはやこの会派が発足した2/17の時点で、菅政権は求心力どころか、政権維持そのものが不可能な事態へと追い込まれたのである。

<<「見当違いもはなはだしい」>>
 ところがあきれたことに朝日新聞2/19付け社説は「小沢氏系造反 ― 異様な行動に理はない」と題して、「政権党に属しながら、国民生活を人質に取って「倒閣」に乗り出す。政党人として到底許されない行動である。16人は「造反」の大義名分として、菅政権が国民との約束であるマニフェスト(政権公約)を「捨てた」と断じるが、見当違いもはなはだしい。」「進退さえ取りざたされるほど、首相の政権運営が行き詰まっていることは間違いない。しかし、ここでまたぶれることは最悪の選択でしかない。小沢氏の処分を早く決め、マニフェストの見直しや社会保障と税の一体改革も決然として進めなければならない。もはや「党分裂」を恐れて迷い、ためらっている段階ではない。」と、菅政権を叱咤激励しているのである。叱咤激励するのは、あくまでも菅政権が政権公約をかなぐり捨てて消費税大増税路線に突き進むことを何が何でも貫かせたいからである。
 「見当違いもはなはだしい」のは、朝日の社説の姿勢そのものである。なぜ菅政権がここまで信頼されず、政権運営さえままならない事態に至ったかの冷静で理性的な分析すらできずに、「あくまで首相を認めないというなら、会派だけから離れるという中途半端な行動ではなく、きっぱり離党すればいい。その覚悟もないのだろうか。」と挑発さえしている。これほど恣意的で、菅政権を美化・迎合し、増税路線を正当化し、しかも強引な政治的介入をさえ意図した主張は、ジャーナリストが本来もつべき批判的精神とはまったくかけ離れたものである。
 しかしこうした一部メディアの菅政権への激励にもかかわらず、事態はさらに混迷の度を深めている。予算関連法案をめぐって、仙谷由人代表代行が公明党の漆原良夫国対委員長と2/15に会談した際、協力をあくまで拒む漆原氏に対し、「それでは菅首相が退陣すれば賛成してくれるのか」と退陣に言及していたことが判明したのである。首相の側近中の側近が「首相のクビを代えてもいい。何とかならないか」と働きかけ、首相自身はそんな事態をまったく知らされず、寝耳に水の状態であったという哀れな事態の推移である。もちろん仙谷氏は、自派の前原氏を後釜にと狙っているのであろうが、右往左往する菅執行部の与党幹部はなべて内向きの手前勝手な党内派閥抗争に明け暮れ、首相支持派からさえも首相退陣で局面打開を目指す動きが出てきたのである。民主党が2/19に開いた政策担当者会議では、4月の統一地方選を控える現場の地方組織から「今の政権で本当に統一地方選を戦えるのかいま一度考えてほしい。政治的なご決断をお願いしたい」(青森県連)と菅直人首相の退陣論が浮上する事態である。

<<自ら招き寄せた失態>>
 ことここに至るすべては、民主党・菅執行部自らが招き寄せたものである。事態は、一昨年八月末の歴史的な政権交代の意義をことごとく裏切り続け、菅改造内閣で敵対してきたはずの与謝野馨氏を経済財政担当相に入閣させ、その増税路線に内閣の命運を託した菅、仙谷、前原、枝野氏らの未熟かつ無節操な路線がいよいよ破綻に瀕し、引くも進むもままならぬ自縄自縛、やけっぱちの解散か、総辞職か、それとも奇想天外な大連立か、菅氏の姿は、ただただ権力にしがみつきたい中東独裁権力の最後の姿と酷似しつつある。
 菅政権後をにらんで、菅・仙谷・与謝野氏を中心とした民主・自民の増税大連合、小沢・鳩山氏らの「小鳩新党」+国民新党や社民党との連携、あるいは小沢・原口+名古屋の河村氏や大阪の橋下氏などとのローカルパーティ連合、等々、政界再編成が取りざたされているが、いずれも海のものとも山のものともつかない不透明な状況である。
 いずれにしてももはや菅政権を支援し支える世論は皆無に等しく、直近の世論調査では内閣支持率17.8%、不支持率63.7%、民主党支持率11.9%へと急落してしまっている(2/17・時事通信調査)。この事態でもあえて衆議院を解散・総選挙に突入すれば、民主党は立ち直れぬほどの敗北を招くであろうし、それは民主党政権消滅への道でもある。大連立、中連立、小連立を模索しても、菅氏を担ぐ連立などどこからも相手にされないであろう。残された道は、総辞職しかない。しかしそれとてこれまでの路線の踏襲であるならば、一時的な延命措置にしか過ぎない。問われているのは根本的な路線転換なのである。菅民主党執行部が推し進めてきた、自公政権時代に勝るとも劣らぬその財務・外務・防衛官僚言いなりの新自由主義・対米追随・緊張激化・防衛力増強・「第三の開国」・大増税路線からの大転換を、今改めて再構築すること以外に残された道はないと言えよう。
(生駒 敬)