ASSERT 400号 (2011年3月26日発行)

【投稿】 菅政権の醜態と原発震災が突きつけたもの
【投稿】 東日本大震災の津波で格納容器のない
         「むき出しの原子炉」が突然出現した福島原発
【投稿】 2011.3.11「東日本大震災」の日
【投稿】 在日外国人献金問題の本質

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【投稿】 菅政権の醜態と原発震災が突きつけたもの

<<「想定外」の濫用>>
 東日本大震災は、かつてない規模の犠牲者と今なお巨大な災害をもたらしている。被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
 この大震災を、政府はもちろん、大手マスメディアは一斉に「想像を絶する」「想定外の」「千年に一度の巨大地震」などと声を大にし、その大規模災害、とりわけ東京電力福島原子力発電所が引き起こした史上初ともいえる原発震災をまで、あくまでも自然災害であってやむをえなかったものとして、原発推進・拡大政策を採り続けてきた責任を葬り去ろうとしている。
 今なお不安定極まりない、最悪の事態さえもたらしかねないこの福島第一原発の核の暴走を、政府・与党やマスメディア、そして原発を容認する学者やコメンテーターはなべて、「想定をはるかに超える」巨大地震がすべての原因であるかのように見せかけ、水素爆発も炉心溶融も原子炉格納容器損傷も、それによる放射性物質の大量飛散も、住民避難や屋内退避も、農作物や牛乳汚染もすべて致し方ない、自然災害だからやむをえない、放射能汚染は、胸部X線撮影以下のレベルであるから、「人体に影響はない」「直ちに健康に影響を及ぼす数値ではない」などとしたり顔で解説し、「とにかく冷静に」「大丈夫だから騒ぐな」、原発容認派の、みのもんたにいたっては「黙って耐えろ!」とテレビ番組で怒鳴る始末である。情報隠しと嘘で塗り固めた愚民政策がいまだにまかり通っているのが実態だとも言えよう。
 またそれに便乗するかのように、東京電力の清水社長は3/19、福島第一原子力発電所1〜3号機の事故について、「我が国が経験したことのない、大規模地震に伴う津波といった自然の脅威によるものとはいえ、このような事態に至ってしまったことは痛恨の極みであります」とするコメントを発表しているが、すべてを「我が国が経験したことのない、大規模地震」に押し付けようとしている。さらに日本経団連の米倉会長にいたっては、3/16、記者団に対し、福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」などと、悪質極まりない発言をして恥じない態度である。
 『原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島』(2010年8月、ダイヤモンド社刊)の著者である広瀬隆氏は、「破局は避けられるか――福島原発事故の真相」(3/16ダイヤモンドオンライン)と題して、「想定外」の言葉を濫用する電力会社とマスメディアの異常を次のように指摘している。
 「マグニチュードが当初8.4→次に8.8→最後に9.0に修正されてきたことが、疑わしい。原発事故が進んだために、「史上最大の地震」にしなければならない人間たちが数値を引き上げたのだと思う。これは四川大地震の時に中国政府のとった態度と同じである。地震による揺れは、宮城県栗原市築館(つきだて)で2933ガルを観測し、重力加速度の3倍である。しかし2008年の岩手・宮城内陸地震では、マグニチュード7.2で、岩手県一関市内の観測地点で上下動3866ガルを記録している。今回より大きい。」
 「この東北地方三陸沖地震の実害と、原発震災を起こした原因は、津波であった。では、津波の脅威は、誰にも予測できなかったものなのか。日本の沿岸地震では、ほんの100年前ほどの1896年(明治29年)の明治三陸地震津波で、岩手県沿岸の綾里(りょうり)では38.2m、吉浜(よしはま)24.4m、田老(たろう)14.6mの津波高さが記録されている。「想定外」の言葉を安っぽく濫用するなとマスメディアに言いたい。」
 「津波そのものによる天災は、避けることができない。これは日本の宿命である。しかしこの悲惨な原発事故は人災である。それを起こした責任者は、電力会社だけではなく、これまで何もこの事態を警告をしなかったテレビと、テレビに出てデタラメを解説している専門家と呼ばれる大学教授たちである。」
 実に手厳しい指摘であるが、正鵠を射ていると言えよう。

<<「おそるべき犯罪者たち」>>
 さらに広瀬氏は、問題の福島第一原発について次のように指摘する。
 「昨年3月25日に、1971年3月26日に運転を開始した福島第一原発1号機について、東京電力は、この原発が40年を迎えるというのに、超老朽化原発の運転続行という暴挙を発表し、60年運転も可能だと暴言を吐いて、原子力安全・保安院がそれを認めた。これは福井県の敦賀原発・美浜原発に続く、きわめて危険な判断であった。さらに昨年10月26日、営業運転開始から34年が経過した老朽化原発・福島第一原発3号機でプルトニウム燃料を使った危険なプルサーマル営業運転に入った。」
 「福島第一原発は設計用限界地震が、日本の原発で最も低い270ガルで建設された、最も耐震性のない原発である。そこで今、炉心熔融が起こったのだ。福島県内には、70キロを超える双葉断層が横たわり、マグニチュード7.9が予測される。地震発生後、原発は「止める」「冷やす」「閉じ込める」機能があるので大丈夫だと宣伝してきたが、ほかの原発も含めて、自動停止した11基の原子炉のうち、原子炉内の温度が100℃以下で、圧力も大気圧に近い状態で安定した「冷温停止」に至っているのは、地震4日目の14日現在、福島第二原発3号機と女川原発1・3号機の3基だけであり、残り8基が迷走運転中である。」
 「福島第一原発では、地震から1時間後、15時42分に全交流電源が喪失して、外部からの電気がまったく来なくなった。あとは、所内の電源が動かなければ、何もできない状態である。ところがそこに津波が襲って、15時45分にオイルタンクが流失して、さらに配電盤などの配線系統が水びたしになって、内部はどうにもならなくなった。そもそも、地震発生当初から、非常用ディーゼル発電機がまったく働かないというのだから、電源車が到着したかどうかに鍵があるのに、その最も重要なことについてさえ、報道されなかった。テレビの報道陣が、いかに原発事故について無知であるかをさらけ出した。」
 「15日昼頃には、敷地内での放射能が通常の350万倍に達した。テレビでは、コメンテーターも政府もみな、微量、微量と言い続けた。ここまでくれば、みな、おそるべき犯罪者たちである。さらに2号機では、格納容器の破損が起こり、4号機では建屋内の使用済み核燃料のプールが沸騰を始めたという。ここには、原子炉より多くの放射性物質が入っている。作業者が近づけない場所であるから処理はおそらく不能であろうと、15日の午後5時時点で、私は推測するが、この推測が間違ってくれるよう祈っている。福島第一原発の6基のうち、1基がメルトダウンすれば、そこには職員がいられなくなる。すべてを放棄して逃げ出すだろう。あとは連鎖的に事故が起こる。この発電所には、全部合わせて、事故を起こしたチェルノブイリ原発の10倍を超える放射能があると思われる。あとは、この放射能が無害であると、政府と原子力安全・保安院と電力会社とテレビの御用学者たちは言い続けるはずだ。」
 広瀬氏は最後の段落で「もし日本の国民が愚かであればそれを信じて、汚染野菜を食べることだろう。明日、すぐには死なないからだ。しかしかなりの高い確率で発癌することが分っている。子供たちを守れるのは、事実を知っているあなただけである」と訴えている。

<<首相をあざ笑う水素爆発>>
 そしてこの原発震災が有無も言わせず明らかにしたものは、度し難いほどの「原発無責任体制」と危機管理能力の無さである。政府ならびに東京電力の対応は常に後手、後手に回り、すべて後追い対策しか打ち出せないのが実態であり、危機管理能力はゼロに等しい事態である。
 その典型が、菅首相自身が地震発生翌日(3/12)早朝、緊急災害対策会議を欠席してまで陸自ヘリで福島第一原発に飛んだパフォーマンスに象徴的である。政府はこの前日の地震発生の4時間後に「原子力緊急事態宣言」を出し、「念のための避難」と同原発から3キロ以内の住民に避難を指示していたところにわざわざ押しかけ、「自ら原発に降り立つことで国民に安全であることを示すつもりだった」(官邸スタッフ)のである。菅首相自身、同日15時の与野党党首会談の席上、この目で見てきたとばかりに、東電側の説明を鵜呑みにして「原発は大丈夫」と説明したのである。ところが「原発は大丈夫」だと説明していたその同じ時刻の15時30分ごろに、その説明をあざ笑うかのように福島第一原発1号機で爆発音を伴う水素爆発が発生し、頑丈・堅固・安全を保障するはずのこの1号機の原子炉建屋の天井がもろくも吹っ飛び、鉄骨むき出しの無残な姿に変貌、数名の負傷、数十名の被曝という深刻な原発震災の恐怖の端緒が明らかになったのである。しかもこの一号炉の爆発事故についての情報は、2時間以上も経ってから伝えられるというお粗末な実態である。
 翌日にはさらに二号機も水素爆発を起こし、事態がここまで進むと、首相は会見から雲隠れし、前面にたった枝野官房長官は、根拠の無い楽観論を無責任に述べながらも、次から次へと後退を余儀なくされ、事態を打開し、展望を見出す対策・方針を語れないままに、「避難した住民は安全性が保たれる」「しっかり対応をすることで、1人の皆さんも、健康被害に陥らないよう全力を挙げていく」などと空虚な気休め発言に終始しだしたのである。放射線の観測値も「一番高い数値のところでも、1時間その場にいて、胃のX線検診3回分弱」などとし、「健康に影響を及ぼす状況は生じない」と無責任に放言しているのである。
 福島原発で実際に何が起こっているのか、政府、官邸、原子力安全・保安院、そして東電にいたるまで事実関係を問いただされると「確認しているところ」「情報を収集し、分析し、検討することが大切」とすり替え、具体的な打開策も、正確・確実な情報を伝えることもできず、ただただ不安定極まりない放射能測定濃度の低い値ばかりを切り貼りして「まだ安全だ」と宣言する無責任体制がむき出しになり、それが現在に至るまでいっこうに解消されてないのである。
 東電は、二号機の爆発後明らかになった格納容器内にあるサプレッションプール(圧力抑制室)の異常については、「格納容器の損傷」という事実があからさまになるのを避けるために、「職員の移動」というタイトルで資料を配り、なぜ職員が2号機から退避したのかと問い詰められて初めて、格納容器破損の可能性があるから、としどろもどろで説明するという、事態の悪化を何とかして覆い隠そうとする無責任・隠蔽体質のきわみをこの期に及んでも露呈しているのである。
 さらに重大な問題は、三号炉は再処理プルトニウムのMOX燃料を使用中であり、ウランの約1万倍もの中性子を放射 流出する恐れがあり、しかもこのプルトニウム漏出の決定的な証拠と考えなければならない中性子が、3/15以前に検出されていたにもかかわらず、「中性子線が検出された事実も、はじめは明かされなかった。」(3/16朝日「東電『隠蔽体質』脈々」)という現実である。
 こうした政府、官邸、原子力安全・保安院、そして東電ならびに電力業界、東芝や日立を初めとする原子力業界の無責任なもたれあいと隠蔽体質は、この際徹底的に断罪されねばならないし、原子力発電からの完全撤退を目指して、電力業界や原子力業界、それに関与する政府機関から完全に独立した規制・監督制度を構築することこそが喫緊の課題と言えよう。

<<難問ポストの“丸投げ”>>
 そして無責任のきわみが、菅政権がこの震災の危機的な状況のドサクサにまぎれて、窮地を脱し、責任を回避し、それでも政権のトップに居座れる究極の打開策として、「救国・挙国一致内閣」としての「危機管理内閣」構想の思いつきである。
 菅首相は3/19、自民党の谷垣総裁に「副総理兼震災復興担当相」として入閣するよう電話で要請したという。「谷垣禎一総裁に原発問題担当相としての入閣を要請」(読売)、「大島理森同党副総裁の震災対策担当相への起用を打診」(産経)と報じられている。難問を抱え、批判の矢面に立つポストの“丸投げ”という、卑劣で悪質な提案である。責任回避もここまでくれば、あまりにもあけすけで、菅政権のムシの良すぎさに自民党も面子上、乗れるものではない。「谷垣氏側は『入閣は大連立と同じで、責任の所在が不明確になるだけだ』として拒否した」(読売)という。
 しかしこの問題は、一方で民主党の菅直人氏と自民党の谷垣禎一氏の両者が「地震増税」の可能性を検討しているとの報道がなされ、谷垣氏の提案に菅氏が賛意を表しているとすれば、別の形での、姿を変えた大連立の可能性は大いに有り得るといえよう。裏取引と卑劣な政治手法が交錯しているのであろう。しかしそれらはいずれにしても、菅・谷垣両氏待望の消費税大増税を一気に実現し、政権交代の意義を完全に抹殺してしまう、翼賛体制としての大連立構想である。
 そんなことに菅政権がうつつを抜かすのであれば、即刻退陣させなければならないし、見限るべきであろう。今何よりも必要とされているのは、原発震災の拡大をなんとしても押さえ込み、被災者を救援し、大災害を乗り切る生活再建政策、さらにはますます現実化してきた次に来るべき地震に対応したインフラの徹底した整備、再建策、そして原発の完全撤退に向けたエネルギー政策の自然エネルギー政策への根本的転換である。増税策は危機に瀕した生活再建をよりいっそう窮地に陥れ、経済をいっそう冷え込ませる愚策でしかない。破壊された生活関連・生産関連インフラが膨大であることからしても大型の補正予算が緊急に要請されており、建設国債を発行して迅速に再建に取り組むことが今最も要請されている経済活性化政策でもある。それに加えて、国民新党の提案する無記名の無利子国債発行によって復興資金を確保する政策も早急に現実化させるべきであろう。財政再建はそのような地震災害からの復興と生活再建・経済活性化政策の中でしか展望できないことを銘記すべきであろう。
(生駒 敬)