ASSERT 408号 (2011年11月19日発行)

【投稿】 原発、増税、TPP、普天間問題、暴走する野田政権の危うさ
【投稿】 福島原発事故と自治体の役割
【投稿】 動揺するアメリカ、追随する日本
【投稿】 ウォール街占拠運動とコンセンサス
【本の紹介】『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』
【コラム】 ひとりごと--大阪秋の陣:反橋下・反独裁で統一すれば---

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【投稿】 原発、増税、TPP、普天間問題
           暴走する野田政権の危うさ


<<「一日ゆっくり考えさせて欲しい」>>
 野田首相は11/10、「一日ゆっくり考えさせて欲しい」と言い、「みなさんが国のことを思い、議論したことをしっかり自分自身で受け止めたい。まだ方向を決めたわけではない…」と、TPP参加にはいかにも逡巡しているかのようなポーズを見せながら、その発言の四、五日前には、11/13の日米首脳会談でオバマ大統領に伝える発言内容を、「どういう言葉でTPP参加を伝えるか、日本語と英語の発言内容を決めてい」たという。それにもかかわらず「まだ方向を決めたわけではない」などとごまかし、民主党内プロジェクトチームで慎重・反対意見が多数を占め、「政府は慎重に判断すべきだ」とする提言を決めたことに対するガス抜きとして、また離党届を持参して抗議する5人の議員に対する逃げ口上として、さらには11/11の国会での集中審議で、TPP参加表明に対して集中砲火を浴びるのを避け、事態をうやむやにして乗り切るための方便、その場しのぎの政治的芝居にしかすぎないものとして、「一日ゆっくり考えさせて欲しい」と言ったのであった。それでも首相は、同日の衆院予算委で「一般論で言うと、TPPだけではないが、外交交渉に入るか入らないかは国会で決まってからということではない」などと開き直り、すでに結論ありきの外交姿勢決定への布石は打っていたのである。
 さらに同じ11/10には、首相を追い詰める国会決議案「野田佳彦首相が環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で表明することへの反対決議案」に賛同する署名が衆院議員232人に達し、自民、公明、社民、新党日本の各党が超党派でこの決議案を共同で衆院に提出するという事態に直面した。決議を強行されれば可決する可能性が大であり、進退窮まる事態に追い込まれる。しかしこれは、共産党が「内容には賛同できるが、決議は全会一致を目指すべきだ」とのあきれた無内容な理由で反対したことに助けられて、衆院議院運営委員会は、民主、共産両党の反対多数で本会議に上程しないことを決定、こうしたきわどい状況を打開するためにもこの「一日ゆっくり考えさせて欲しい」という発言が必要だったのであろう。
 こうして11/11に行われた衆参両院の予算委員会での集中審議をのらりくらりと乗り切った直後の同じ日の夜の記者会見で、党内や国会での同意も得ずに、一方的に「ホノルルAPEC首脳会合において、TPP交渉参加に向け関係国との協議に入る」と表明し、すでに前回9月の日米首脳会談でTPP参加を約束していたことが見え見えな、オバマ米大統領が今や遅しと待ち構えるホノルルに向けてそそくさと旅立ったのであった。
 本人は「してやったり」、仙谷、前原、枝野、玄葉氏らTPP推進派幹部と示し合わせた高等戦術であったとほくそ笑んでいるのであろうが、手は混んでいるが、結果的には初めから意図していた一方的な態度表明によってTPP参加を既成事実化しようとするこうしたやり方、その見え透いた、拙劣で不誠実な態度、姑息な政治手法は、あらためてこの民主党政権の質の悪さ、程度の低さを露呈させたといえよう。

<<発足当初からの危惧>>
 こうした野田政権の悪質な政権運営方法は、発足当初から危惧されていたものである。立ち居振る舞いはいかにも穏やか、低姿勢で、対立の調停者であるかのような姿勢をとるが、実際には、重要案件を政権交代の意義を否定し去る方向へ、旧来の自民党政権の政策・方針へとねじ曲げる、しかもその際、国内の民主的な議論や意思決定手続きを無視したままそれを実行する、そして政治における説明責任を一切果たそうとしないという悪質なやり方である。
 野田首相は首相就任直後の初会見で、まずは今後の原発については「新たに造るのは現実的に困難。寿命が来たものは更新せず、廃炉にしたい」と、いかにも「脱原発」路線を推進するかのような姿勢を表明しながら、就任挨拶に赴いた米倉・経団連会長と会談するや、TPP推進、法人税減税、消費税の大幅増税、原発の再稼動と輸出促進、そしてこれらを支える大連立等について互いにエールをかわし、「最大限の協力」を取り付けている。この時点ですでに民主党政権をよりいっそう変質させる方針は決定されていたのだとも言えよう。
 野田政権は、「脱原発」どころか、地球規模で国内外に多大な放射能災害を撒き散らした福島原発震災への深刻な反省も総括もなく、その収束さえおぼつかなく、その情報さえ開示しえないまま、被災者救済も放射能除染対策もガレキ処理対策も、復興対策さえなおざりにし、そして何よりも脱原発を求める圧倒的多数の世論の動向をまったく無視して、今や原発再稼動はもちろん、事実上、「原発の安全性を世界最高水準まで高める」、「世界一安全な原発」推進路線へと舵を切っているのである。しかし、これらは国会審議を含む一切の民主的手続きを経ていない。ただただ、政・官・財、学界、労働界を含む「原子力ムラ」の意向に忠実に従っているだけである。最も肝心なこうした路線転換についての説明責任はまったくといって良いほど果たしていない。
 そして9月の訪米時には、国連の原子力安全首脳会議に出席し、国内での合意や説明も一切ない段階で原発の再稼動と原発輸出路線を演説し、これまた国際公約としてしまっている。

<<「米政府のご用聞き」>>
 そして次にその姑息な姿勢をあらわにしたのが、消費税増税問題であった。11/3、フランス・カンヌで開かれた主要20か国・地域首脳会議(G20)でいきなり、「日本は、2010年代半ばまでに消費税率を段階的に10%まで引き上げる方針を定めた、社会保障と税の一体改革案を具体化し、これを実現するための法案を今年度内に提出する」と、消費税率を2010年代半ばまでに10%に引き上げる方針を、国内ではなく、国際会議の場で表明し、日本の消費税増税がG20サミットの共同声明に書き込まれ、国際公約としてしまったのである。
 そのわずか1週間前の、10月末の臨時国会における所信表明演説では、10%増税という具体的提案や時期、方法について、そもそも消費税の増税問題には一言も触れていなかったものである。首相はG20の同行記者団に対して、消費税増税法案の成立前には、衆院解散・総選挙を行う考えがないこと、「信を問うとするならば、法案が通ってその後に、実施をする前に問うというやり方にしたい」と述べたが、解散は法案成立後という、これまた選挙公約であった民主党マニフェストを踏みにじるものであり、閣議決定さえされておらず、まったく国内世論を無視し、国会を含む民主的手続きを無視、侮蔑する、姑息きわまりない悪質な政治手法である。
 国内で具体的議論を積み重ねれば、自らの意向が貫徹できないという恐れ、自信の無さから、国際公約という既成事実に逃げ込んだのであろうが、これほど民意と自らの党の公約をないがしろにするのは、最悪の政治姿勢と言えよう。国内の了解を得ずに、国際公約で無理やり押し切ろうとするやり方は、すでに沖縄の普天間米軍基地移設問題で破綻が明瞭であるにもかかわらず、それにしがみつく政治姿勢と同根である。
 野田内閣は、次から次へと関係閣僚を沖縄に出向かせ、これまた勝手に国際公約にしてしまった、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の日米合意に沿い、環境影響評価(アセスメント)の「評価書」を年内に提出して、既成事実を先行させる強行姿勢を明瞭にしている。10/18付けの琉球新報・社説は、「多くの県民の目には「日米同盟」のためなら手段を選ばぬ「強権国家」としか映らないだろう。失望を禁じ得ない。」と指摘し、それを伝えに来た防衛相は、「日米合意の進展を促す米国の声に唯々諾々として従い、知事に方針を伝えただけだろう。県民から見れば、米政府のご用聞きとしか映らない。」と厳しく指弾している。
 低姿勢、調停者を看板に発足した野田政権であるが、わずか三ヶ月にも満たない間に、原発、増税、TPP、普天間問題とこれだけ暴走し、なおかつ、いずれの問題においても圧倒的多数の民意を無視する、合意形成や民主的手続きから逃げまくり、政治における説明責任さえ果たそうとしない、こうした野田内閣の政治姿勢は、早晩破綻せざるを得ないし、そのツケが、今後の野田政権、民主党政権に強く重くのしかかってくることは間違いない、と言えよう。
(生駒 敬)